帰宅
両掌にほんの少しジンジンという痺れを残しながら俺の意識が元の体へと戻っていく。
青年から見た景色が消えると漸く分かれていたものが元に戻った実感がする。
恐らく数秒間、まるでゲーム機をシャットダウンさせるみたいだ。
それにしても現実で対人戦をするとは思いもしなかった。
あの“おさげの男”には、ちゃんと人の意識があって会話も出来たし、技も使えた。
そしてその技で今回初めて大きなダメージを喰らってしまった。
気になって座りながら身体を確認しても特に怪我もしてはいない。
掌ももう問題は無さそうだ。
恐らくあの痛みや痺れは一時的なものなのだろう。
でもーーー嫌だ。
超必殺技の重い連撃でも、痛みとしては軽く叩かれた程度にしか伝わらなかったと思う。
なので我慢は出来る。出来るのだけど多少なりとも痛いのはやはり避けたいのだ。
「どうしたものか…。」
嫌だけど多分ゲームキャラの実体化を何とか出来るのは俺だけなんだ。
とりあえず喉も渇いたし一旦コーヒーでも飲んで落ち着くか。
立ち上がろうとした俺は強い目眩に襲われ、全身から力が抜けるとその場へ崩れ込んでしまった。
辺り一面真っ暗な中に一点の光が見える。
「ここは…?」
夢の中なのだろうか?何だろうと光を見つめていると、みるみる広がり全身を包み込まれてしまった。
眩い光に瞑った目を恐る恐る開けるとそこは見覚えのある場所だった。
床に積まれた本、机の上のモデルガン、カーテンは日差しが優しく透けていて、椅子に座る人物を照らしていた。
「兄貴!?」
「よぉ、大変だったみたいだな。」
そこは実家の兄の部屋。しかも数年前まだ皆で暮らしていた頃のままだった。




