投影
防寒着、ヨシ!ヘルメット、ヨシ!、燃料は…まあまああるか…ヨシ!
戦った現場を直接この目で見てみたくなり、普段の足であるスクーターを引っ張り出して飛ばした。
イーグルとその商店街までは少し遠いけどまだ昼間だし何とかなるかな…?
まずモアイを仕留めた道路に来るとカラーコーンを並べて交通規制をかけ、現場検証をやっていた。
「まじか?あれからまだ10分経ったかどうかなのにやたら速くないか?」
思わず呟いてしまったが多分向こうには聴こえていないだろう。
丁度良いのでスクーターに乗ったまま様子を伺う事にした。
警官数名とスーツ姿の男女が何か揉めている。
目撃証言を聴いているのだろうか?
今回も見える人見えない人は居るだろうし見えない人に説明するのは難しいだろうな。
道路や歩道を見渡してみても何処にも痕跡らしいものが無いし何を言っても信じて貰えないかも知れない。
でもとりあえず被害が無さそうなので一安心だ。
道が空いていたのもあり思いのほか早く商店街に着いたのだが、既に日が傾きかけていた。
やはりここも現場検証をしたのか?電気設備の周辺にバリケード状の囲いがしてあり、目線の位置に立入禁止の札がかけられている。
ネットニュースの通り、商店街のお店等は被害も無く普段通りに営業中。
イーグルもやはりそのままだ。
ここだけは既に閉店しているので中は薄暗い。
覗き込んだ先で何かが動き、俺は思わずドアに手をやった。
ーー自動ドアが開く。
「えっ?」
数歩だけ中に入ると暗闇の中に項垂れているオーナーが見えた。
「だ、大丈夫ですか?」
思わず駆け寄る。オーナーは顔面蒼白でブツブツと何かを呟いていたが、俺の存在に気が付くと両手で顔を覆いながら答えた。
「ああ、君か…。」
そして虚ろな目で俺を見つめるオーナー。
「夢をね、夢を観たんだ。」
「真っ暗闇の中に居て、そこで叫んでいたんだよ。何もかもが思うようにいかない。私の大好きだった物が奪われていく。こんな世の中なんて壊してしまいたいって」
オーナーは一度大きな溜息をついてから続けた。
「そうしたらさ、声がね…したんだ。『壊しちゃいなよそんな世界』って」
気が付けば周囲にモンスターが居たのだそうだ。
そして一言「行け」と…。
「急に周囲が商店街の風景に変わったんだ。そうしたらやはり他のお店には迷惑かけられないなと、そう思ったらモンスター達の動きも止まった。」
「でもすぐ勝手に動き出したんだよ。それなら公共物を壊してしまえと思ったんだ。まさかあれが夢じゃ無かったなんて…。」
現場検証に来た警察にも、この夢の話をしたけれど信じて貰えなかったらしい。
他にも何か変わった事が無かったか聴かれたそうだが…。
だんだん日が陰って来たので俺はオーナーをなだめつつ帰路に着いた。
スクーターはホンダのZOOMERを想定しております。




