不穏
予想出来なかった訳では無いのだが、今少し焦っている。
モアイを放って置けないと思った俺は、もしかしたらと昨夜の様にコントローラーを握り、あの青年(そろそろ名前を付けないとな)の姿になれた。
そこまでは良かったけれど、いざ戦ってみるとモアイに全く歯が立たないのだ。
いや戦うというか反応すらされておらず、悔しい事に俺の存在すら気付かれていない可能性もある。
モアイというのはあるシューティングゲームに登場する名物キャラで、基本的に口の中を攻撃すれば撃破が出来る。
でもこのモアイは跳ね回るだけで全く口を開けないのだ。
口を開ける=光輪を吐いて攻撃という事なので戦う意志が無いのかも知れない。
おまけに車を避けている様にも見える。
モアイの進行方向に先回りしてやや離れた所から様子を観察してみた。
ーーこいつ、散歩のつもりなのか?
今日は正月休みが開けたばかりの祝日なので幸い車もそう多くないのだけれど、3m程もある灰色の巨体がこのまま消えずに跳ね回っていたらいすれ事故が起こるだろう。
現に何台かの車は脇に停めてモアイの動向を見守っている様な状態なのだ…。
とにかく一刻も早くこのモアイを何とかしなければならないのだが、でもその為には何とかして口をこじ開ける必要がある。
じゃあ力尽くでいけるのか?
ーー殴っても蹴ってもまるで効かない相手にそれは難しそうだ。
何か貫通出来る必殺技で無理矢理倒せないか?
ーー元のゲームでは口を閉じている時に一切の攻撃が効かない。
貫通するレーザーすら無効なので恐らく口が開いている事が重要なのだろう。
その時、上空を通過したヘリコプターにモアイが反応した。
元々シューティングゲームのキャラだから飛ぶ物に反応するのだろうか?
そして口が半開きになったのを俺は見逃さなかった。
「今だ!波動拳!!」
気の塊がモアイの口元を粉砕した…が、何故か昨夜程の威力が無い。
「!?!?!?…っつ!じゃあこれならどうだ!?」
異空間から巨大なロボットの腕が現れ今度こそ確実にモアイの口を捉えた。
「必殺ブロディアパンチ!!」
ボコンボコンという音を立ててモアイはドット化して消え去った。
「…ふぅ」
青年の姿は消え、意識が部屋の中に居る体に集約される。
そして俺の中で一つの疑問が生じた。
今のモアイからは全く攻撃性を感じなかったのだが、昨夜のモンスター達は明らかに敵意を示した。
ーーこの違いは何だろう?もしかして、こいつらは誰かの、何かしらの意思を持って動いていたんじゃないのか?
ふとイーグルのあの商店街の被害が心配になりスマホでネットニュースを検索してみる。
【◯◯県】深夜の商店街で騒動
☓☓日未明、◯◯市△△商店街にて警官隊が出動する騒動があった…。
記事によればあの電気設備の箱が変形した程度で他に被害は無かったらしい。
…え?商店街のお店の被害が無かったのは良かったけど、それだけ?
何かかえって不穏な気がしてならなかった。




