49.一班甚と補習
丁京都フリーヶ丘。
住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地として知られるこの街には──
今日も恐ろしい(?)悪の組織が存在していた。
そして、夏の補習が行われようとしていた。
夏回です。
「夏だ! 海だ! 補習だー!」
「うるせえ一班、ヤケになってんのか」
ブエルこと一班甚は、夏休みだというのに補習を受けていた。理由は簡単。赤点を取ったからだ。
このことがアレプトが知った時は大激怒された。
「あんたねえ、そんな頭脳で世界征服できると思ってんの?! 古典くらいわかりなさい!」
俺ってば理系なのに。そんなことを思いながら一班は席に着く。しかも最悪なことに処女機構のウェルキエルこと獅子力輝石も一緒だ。……一緒?
「は? お前正義の味方なのに補習受けてんの?」
「世界救うのに頭脳なんて必要ないからな!」
「ちなみにこいつ、全教科赤点だぞ」
クラスメイトの補足が入る。こ、こんな女に自分たちはいつも負けていたというのか……! そんな衝撃が入る。
「せ、正義の味方ってバカでもできるのかよ……!」
「うるせえな、正義の味方ってだけで内申めーっちゃもらえるんだぜ」
一班は思い出す。処女機構は知らないが、……他の街の正義の味方は手に職をつけていることを。
「……お前さ、大学行けてもその後の就職先、どうすんの?」
「あ? セラ博士がなんとかして……くれ……」
獅子力は黙り込んでしまった。そして真剣な顔をする。
「そういえばハマち……就職で悩んでたな……。正義の味方って無給だし……」
「……お前もしかして」
「あたし、詰んでね?」
真っ青な顔で獅子力は言う。一班は無言になってしまった。いくら馬鹿だと思っていたとはいえ、ここまで将来のことを考えてなかったとは。
「……っ、ハイソティーズのハイソイエロー先輩!」
スマホを取り出し何かを送る獅子力。そして恐らく返信であろう音が聞こえたのち、絶望した顔をする。
「ハイソイエロー先輩……フリーターだって……」
「……ハイソティーズって金持ちだからじゃない?」
「いや、ハイソイエロー先輩は双子玉川まで自転車で20分かけて通勤してんだよ!」
そこまでして正義の味方したいんだ。そうツッコミたいのをこらえる。
「この時期、大変そうだね」
そう答えることしかできなかった。
「おーい、席に着けー」
先生が入ってくる。真っ青な獅子力を横目に席に座ることしかできなかった。
「……一班、あのさ、相談あるんだけど」
補習後。獅子力が話しかけてくる。相変わらず顔は青いままだ。
「え? うん、何?」
「あたし悪の組織になろうと思うんだ」
ずっこける。
「なんでだよ! 正義の味方であることがお前の誇りじゃなかったのかよ!」
「いや……よく考えたら悪の組織って正義の味方とやってること一緒じゃん」
一緒じゃねえよ。そうツッコミたいのをよそに獅子力は続ける。
「それに悪堕ちヒロインっていうのも人気なんだろ! だからあたしは悪の組織に鞍替えする!」
「むむ、許せない理屈ですね! 弁護します! ブ……甚様♡」
突如、声が聞こえる。そこには榛名がいた。
「なんでお前いるんだよ! 話がややこしくなるからやめろよ!」
「誰だお前、一班の彼女か?」
「将来的にはそうです♡」
「ちげーよ、ただのストーカー」
ボケが渋滞を起こしている。正直帰りたい。というか補習が終わったので普通に帰りたい。
「現役悪の組織幹部、小鳥遊榛名です♡以後お見知りおきを♡」
「なあ、悪の組織に入れてくれ!」
一班はその場からこっそり立ち去る。なるようになれ。
「えー、じゃあまずいくら出せますか?」
「え?」
一班がいなくなったことに気づかないまま二人は話を続ける。
「うちの『タワマンシャンパンタワー同盟』は金こそ全て! って組織なんです。で、いくら出せます?」
「……」
獅子力は財布を取り出す。そこには三百円程度しか入ってなかった。
「……悪の組織って儲かるんじゃねえの?」
「え? まず投資額が必要ですからその程度の金額じゃ無理ですよ」
「そんなぁ……」
獅子力は崩れ落ちる。
「では甚様、放課後デートと……あれ、いない」
一班を探すためにその場を後にする榛名。
「正義の味方ってままならねえなあ……」
まさに真理。
「次の補習始めるぞー」
先生が入ってくる。この世界はままならないものである。
学力もまなならない。
なんて無情な世界なんでしょうか。
正義の味方もままならないものです。
次回もお楽しみに!




