50.超悪い子軍団と体操
丁京都フリーヶ丘。
住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地として知られるこの街には──
今日も恐ろしい(?)悪の組織が存在していた。
そして、悪い子くん体操が始まろうとしていた。
グシオン回です。
「悪い子くん体操、はじまるよー!」
「何よ急に」
急に叫び出したグシオンに冷ややかな視線を向ける三人。
グシオンは眼鏡を光らせながら答える。
「悪い子くんをフリーヶ丘の新たなマスコットキャラにしようと思いまして。そのためにはまず子供たちを洗脳しようと」
「あんたねえ、三十七話も前にフレーバー的に出てきたマスコットキャラを読者が覚えてるわけないでしょ」
悪い子くんは猫とうさぎと犬を足して三で割ったら二余ったような物体である。詳しくは第一部十三話を参照いただきたい。
「ふむ……」
「おや、珍しいですねオティス。あなたが興味を持つなんて」
「いや、気持ち悪いと思っただけだ」
真顔でオティスは言い放つ。実際、悪い子くんは可愛いというには微妙な部類だ。
「失礼ですね!悪い子くんは正義の科学者の生物実験を受けたところを悪の組織に拾ってもらい忠義を尽くしているというキャラなんですよ!」
「あのさ、前も思ったけどグシオンって天使セラへの劣等感すごいよね」
ブエルは禁断の扉を開いてしまった。グシオンのセラへの劣等感という扉を。
「だって天才はこの世で一人で十分ですからね」
「あいつは天才は天才だけど天災でしょ」
「アニメ化した時に困る言葉遊びやめて!」
はあ、とアレプトはため息を吐く。
「それで?提示したからにはいい洗脳方法なんでしょうね?」
「はい!もちろんです!」
ごほん、と咳払いをするグシオン。
「悪い子くん体操、はじまるよ〜!」
陽気な音楽が流れ始める。歌詞は「悪い子悪い子悪い子くん」と言った子供向けの童謡である。
「まず最初に決めポーズをします」
そう言いなんとも言い難い決めポーズをするグシオン。
「続いて正義の味方を一刀両断するポーズです」
後ろでは「悪い子ってなんなんだ〜?」と歌が流れる。
「その次にっ、街をっ、破壊するポーズですっ」
だんだん息切れを始めるグシオン。三人は冷ややかな目で見ている。
「そして決めポーズっ」
フラフラになりながらまた絶妙にダサいポーズを取るグシオン。
「うん、却下ね」
「どうしてですかあ」
崩れ落ちるグシオン。オティスは興味をなくしたのか台所へ向かった。
「踊りのキレが悪い」
「それは僕がっ、運動音痴だからですっ」
(そういう問題かなあ)
ブエルはジュースを飲みながら考える。
「とにかくっ、これはヒット間違いなしですっ!止めないでください、もうすでに動画はアップロード済みです!」
息切れをしながらグシオンは言う。
「まあネットのおもちゃにされないといいわね」
アレプトはそう言った。
翌日。
「大変だよアレプト様!」
「どうしたのブエル、今ガトーショコラのいい映え角度を探してるのよ」
「いいからこれ見て!」
不服そうなアレプトにブエルは自身のスマホ画面を見せる。
そこには、tek tokで大バズしている悪い子くん体操の姿があった。
「アレプト様、『悪い子くん体操』の音源の使用料がめちゃくちゃ入ってきてます!」
グシオンも乱入してくる。
そう、悪い子くん体操は社会的ブームを巻き起こそうとしていた。
微妙に可愛くない見た目が女子中高生を中心に大バズ。超悪い子軍団の公式通販でひっそり売られていた悪い子くん人形(等身大)は入れ食い状態で売れていく。
「素晴らしいわグシオン、あんた何気なく商才あったのね!」
「ええ、天使セラとの違いはここです!」
「でもさあ、悪い子くんは人気になったけど超悪い子軍団は有名になってないよね」
ブエルがバズの様子を見ながら呟く。
「……あ」
「なによ!売名行為になってないじゃない!資金が潤沢になっただけじゃない!」
「馬鹿な……僕の計算ではこれで加入希望者がガッポガポ出てくるはず……!」
「そんなに雇えないわよ!」
ちなみに、今年のゆるキャラグランプリは悪い子くんだったのは別の話。
悪い子くんはどんな見た目なのか。
私にもわかりません。
ただあまり可愛くないということだけ。
次回もお楽しみに!




