48.オティスと李
丁京都フリーヶ丘。
住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地として知られるこの街には──
今日も恐ろしい(?)悪の組織が存在していた。
そして、オティスは李と対面していた。
オティス回です。
オティスは李と対面していた。
「ガキ、早く要件を話せ、私の時間はお前たちと違って価値のあるものなんだ」
苛ついたように李は話す。
(なにから話したものか……)
お察しの通り、オティスはそこまで口が上手いほうではない。しかも敵対していないといえども、別組織の悪の組織の首領が相手である。下手なことを言えば開戦は待ったなし、だ。
姿勢を改めて正し、オティスは口を開く。
「では単刀直入に聞くが、私は貴殿の強さの秘訣を知りたい」
「強さだと? お前の前で剣を振るったことはないだろう」
「見ればわかる」
その瞬間。刃が交わる音が響く。
李は小刀を瞬時に抜きオティスの左の首筋へ当てていた。オティスは左の袖口に仕込んでおいた小刀でそれを防いだのだ。
「驚いた。あの小娘の元に置いておくには勿体ないな」
「いくら貴殿でもアレプト様を悪く言う事は許さない。……しかし、だ。手加減したのだろう」
「まあその気になればお前の首くらい簡単に刎ねられるが、それをやったら普通に捕まるからな」
刀を仕舞いながら李は言う。悪の組織間の対立とはいえ殺人は違法だ。
「それで強さの秘訣? だったか。そんなもの、日常を過ごしていれば自然につく。以上だ」
「それだけでは足りない。もっとあるはずだ」
普段出さない必死な声をオティスは出す。決して仲間の前では出すことはない情けない声だった。
「……逆に問おう。何故お前は強さを求める」
「私は自分の強さに慢心していた。しかし、今のままではアレプト様どころか自分自身すら守れない。だから強くなりたい」
「慢心、か。例の上模毛の件か?」
ぴくり、とオティスの眉が上がる。そして観念したかのような顔で話す。
「……その通りだ。私は絵心の部下を倒すだけで精一杯だった。本来ならアレプト様に選ばれるのは私であるはずだった。……だが、実際に選ばれたのはグシオンだ。……私の覚悟が足りないばかりに」
事実、オティスはグシオンに嫉妬していた。力のない、彼に。あの時何故自分が選ばれなかったのか。力が足りないから。事実勝てはしたが、バロックの実力は互角だった。
強くならなければ。その気持ちでオティスは日々を過ごしていた。そこで出会ったのが、李だった。
「ふん、ガキの嫉妬か。そんなものに付き合わせるな。俺に言わせてもらえばその気の迷いこそ弱さだ」
「ああ、その通りだ。この弱さが私の弱点だ」
「素直なガキは好きだよ。その素直さに免じて一つ、アドバイスをやろう。──お前、料理はするか?」
「……当番では、やっている」
「そこまでっていうことか。いいか? 強さとは、料理と一緒だ。手間をかければかけるほど、理想に近づく。ああ、勿論この手間はレシピ通りにやることが前提だぞ」
オティスの脳裏にアレプトの菓子が一瞬過ぎる。
「地道にコツコツ積み重ねること。手順を違えないこと。違うものを入れないこと。これが俺の強さだ。わかったらさっさとデザートを食って帰れ」
そう言うと李は部屋を出る。そこに残されたのは杏仁豆腐とオティスだけだった。
「しばらく料理当番を任せてほしい?」
「はい、少々思うところがありまして」
杏仁豆腐を食べて帰ったオティスはアレプトに打診する。
「構わないけど……なにかあった?」
「いえ、特に」
普段と変わらない様子でオティスは答える。そんなオティスを見てアレプトは言う。
「じゃあ他の当番は私たちで回すとして……本当になにかあったら言いなさいよ?」
「ええ、勿論です」
強さとは、料理と一緒。その言葉をオティスは脳裏で繰り返す。
違えないこと、積み重ねること。その修行の一環として料理を選んだ。
(これで私は、強くなれるだろうか)
そう思いながら。オティスは目を瞑った。
真の強さとは。
それを問う回でした。
オティスは強さを手に入れられるのか。
次回もお楽しみに!




