44.悪の組織と監査員
丁京都フリーヶ丘。
住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地として知られるこの街には──
今日も恐ろしい(?)悪の組織が存在していた。
そして、ブエルの心を射止めるべく、榛名も暗躍していた。
榛名回です。
「そそぐさん」
「はい、なんでしょう」
「ブエル様の過去の活動を、見せていただけないでしょうか?」
フリーヶ丘のとあるカフェ。榛名と清水はお茶をしていた。
「いえ、それは機密に触れるので無理です」
「そうですか……では話を変えましょう。私は武蔵大杉の悪の組織の女幹部になりました。情報を出しなさい」
榛名は指で銃を作り清水の額へ当てる。その目はブエルに向けるものとは違う、冷酷な目だった。
「まあ、一週間で幹部ですか。すごい出世ですね」
「お金を限界まで積んだので。世の中金が正義なんです」
「悪の組織ですけどね」
「それで、あるんですか、ないんですか」
「そうですねえ……」
脅されていると言うのに清水はマイペースに思考する。
「ブエルさんは今年入団なので、去年のデータがないんですよ」
「ブエル様が……それであのカリスマ力……!」
腕を下げ、うっとりとする榛名。
「ブエルさんですが、これといった活動はないですね。ああ、でもアイドル活動を行った際はそれなりの人気はあったようです」
「ブエル様は一番星ですから……!」
「まあオティスさんがトップクラスで人気だったようですよ」
「世の中は分かってない……!ブエル様の笑顔の破壊力を……!あんな人をゴミを見る目で見てくる男が人気なんて理解できません……!」
「いや、それは貴方が不法侵入を繰り返しているからでは?苦情が上がってきているんですよ」
パソコンで書類を作成しながら清水は答える。
「超悪い子軍団も、いずれは我が組織──『タワマンシャンパンタワー同盟』の一部にするつもりですからね」
「ずっと気になっていたんですけど悪の組織って命名ダサいですよね。なんか縛りでもあるんですか?」
「貴方が監査員じゃなかったらぶっ飛ばしてましたよ」
タイピング音が場を支配する。
「ああ、でも一つだけ情報、ありますよ」
「なんですか?!」
「ブエルさんは金目当てで超悪い子軍団に入団したということです。つまり彼は金に困っているということです」
「なるほど……わかりました。私、決めました!」
榛名は思い切り立ち上がる。
「いい条件でこちらで雇えばいいんです!」
「ということでこちらの条件、いかがでしょうか?」
ブエルは押しかけてきた榛名を躱すことができず、無理やり話し合いの席に座らされていた。
「えっとなになに……給料月二百万円(手取り)、タワマン上層階確約、榛名お手製手作り料理毎食三食……?」
「はい、それでうちの組織に異動してくれないでしょうか?」
「ちょっとあんた、なに勝手に引き抜きしようとしてんのよ!」
アレプトの怒声が響く。しかし──
「あのさ、お金で全て動くと思ったら間違いだよ」
「……え?」
「君はさ、何のために悪の組織をやってるの?」
「私は……ブエル様に近づきたくて……」
「それだよ、人のため。それって正義の味方の理論なんだよ」
「私たち悪の組織は本気で世界を手に入れるために活動してんのよ。恋愛脳でそれをぶち壊してくるなんて舐めてるの?愛で全てを解決できたら正義の味方も悪の組織も存在しないのよ」
「そんな……私……」
「俺は超悪い子軍団から離脱はしない。アレプト様の信念に共感してるから。いい加減諦めてくれない?」
「……わかりました」
顔を伏せ、榛名は言う。
「──私、処女機構に入団します!」
「「ハァ?!」」
「敵同士──惹かれてはいけないラブロマンス……!なんでこっちを先に思い付かなかったんでしょう!」
「引いてはいるけどね」
「そうとなったら悪の組織は辞めて正義の味方になります!禁断の恋、しましょう!」
そう言い榛名は出ていく。
「……本当に何、あいつ……」
「安心しなさい、あんな不純な動機を持った人間、あいつが許可すると思えないわ」
「……そうなの?」
「ええ、あいつは人間で実験することは好きだけど、それを破壊する奴は許せない人間だから」
「セラ様はあなたの入団を拒否するとのことです!おかえりください!」
「そんな、話だけでも──」
「却下でーす、これ以上敷地に入ったらビームでーす」
ホログラムの少女、アイちゃんは言う。
「せめて悪の組織で実績上げてからきてください。以上です」
「そんな……くっ、諦めません、私は、絶対的な力を手に入れます、そのためなら……!」
そんな呟きが、街に響いた。
お金で買えないものがある。そんな回でした。
0話で「金が動機」と答えたブエルも成長したものです。
榛名は一体、今後どうするのか。
次回もお楽しみに!




