38.超悪い子軍団と暴走乙女
丁京都フリーヶ丘。
住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地として知られるこの街には──
今日も恐ろしい(?)悪の組織が存在していた。
そして、新たなる恋の予感が誕生していた。ただし、まともな恋ではありません。
新キャラ登場です。お楽しみください。
フリーヶ丘の悪の組織の活動。
私には関係ないと思っていたけど、ある日、突然巻き込まれた。
そして──
「大丈夫?!怪我してない?!」
助けてくれた悪の組織の少年に、私は一目で恋に落ちた。
「榛名、大丈夫?ずっと携帯弄ってるけど……」
「私は彼について詳しく知らないといけないんです」
「ああ、前言っていたフリーヶ丘の悪の組織の人?でもさあ、住む世界が違うよ」
私は小鳥遊榛名。私立の白百合学園に通う高校生だ。
──数日前、友人とフリーヶ丘に遊びに行った際、悪の組織の悪事に巻き込まれ、悪の組織の少年に助けられた。
「ブエル様……」
私の携帯にはブエル様の写真が映っている。どうやら昔はアイドル活動も悪事の一環として行なっていたらしく、その頃のブロマイドが高額で売られているので、全部購入した。
「榛名、いくらなんでも悪の組織に恋するのヤバいって!あいつらセラ博士に改造されてるって噂だよ!」
「いいんです、彼の優しさは、変わらないものだから」
「ダメだこりゃ」
天使セラの呪縛から解き放たなければ。
そう、私は令嬢。ならばできることと言ったら──
「えーっと、私も驚いているんだけど、パトロンが現れたわ」
アレプトが通帳を全員の前に差し出す。
そこには現実離れした額の入金履歴が残っていた。
「あとこの入金主からの手紙が一通届いてるの。……ブエル、開けなさい。あんた宛だから」
「俺ぇ?……えーっと、なになに?『拝啓ブエル様。貴方様に助けられてから、私の心は早鐘を打ち続けます。貴方様のことを考えるだけで、胸の中からなにかが溢れそうになります。どうかお怪我をなさらず。貴方の白百合より。』……なにこれ?」
「あんた、何かした?」
「ええ?いつも通りのことしかしてないけど……正直怖いよ。オティスの間違いじゃないの?」
「私はここしばらく人助けをしていない。それはないだろう」
「じゃあグシオン……」
「じゃあってなんですかじゃあって!僕は最近は男性しか助けてないので。女性は助けていませんよ」
「うーん……あ、もしかして」
「心当たり、あるの?」
「うん、上品な制服を着た女の子を庇ったんだよ。だからもしかしたらその子かも……?」
腕を組みながら必死にブエルは思い出す。
「確かに言われてみればお嬢様っぽかったかも……?いやでもまさか。オティスならともかく俺が好きなんて何かの間違いじゃない?」
「オティスは性格が地雷だからないわね。大方吊り橋効果でしょう。正直この金額がポンポンくるのは内部監査があった時に槍玉に挙げられる可能性が高いわ。なんとかしなさい」
「とは言ってもどうするのさ」
「簡単よ。きっとこいつはあんたに接近するためにまたフリーヶ丘に来るわ。だから、予告をするのよ」
アレプトはツブヤクワーの超悪い子軍団のアカウントを開き、何かを打ち込む。
「『超悪い子軍団感謝祭』──駅前を乗っ取るわよ!」
ツブヤクワーの情報によれば今日のはずだけど。私は周りを見渡す。
フリーヶ丘の駅前ロータリーは、悪の組織の襲撃予告など気にせず普段の活気を見せている。
時間はそろそろのはずだが──
『フリーヶ丘の住民たち!震えなさい、超悪い子軍団、参上よ!』
そう女の子の声が聞こえた瞬間、辺りが暗くなる。
駅前のロータリーには、超悪い子軍団、四人が立っていた。
「ブエル様……!」
思わず感嘆の声をあげてしまう。そして気がつくと、私の足はそちらへ向かっていた。
「かかったわね」
アレプトがこちらへ駆け寄ってくる女子生徒を見て言う。
そもそも超悪い子軍団は日常的に街を破壊しているため、フリーヶ丘の住民からの評判は専ら悪いのだ。
わざわざ近寄ってくるのはトライ=アペンド時代のファンくらいだろう。
しかし、だ。プロデューサーをしていたアレプトは全員のファンの顔を覚えていた。駆け寄ってくる少女はファンの中にいなかった。
「あの子が白百合?……確かに前に助けた子だ」
「いい?……情は捨てなさい。あんたは超悪い子軍団の一員なんだから」
「……うん」
少女はブエルの正面に止まり、手を取る。
「ブエル様……!お会いしたかったです。助けてくれた御恩を返したくて、ずっとずっと……!私は小鳥遊榛名と言います。私を貴方様の恋人にしてください!」
「……無理だよ」
ブエルは静かに答える。
「……え?」
「俺たちは本気で世界征服するためにやってんの。君を助けたのだって市民に怪我を負わせたら罰金が生じるからだよ。そもそもほぼ初対面の人間と付き合うなんてリスク、背負うわけないでしょ。俺のことは諦めて、別の幸せ見つけなよ」
「そんな、私はただ貴方様のことが……!」
「吊り橋効果だよ。とにかく迷惑だから送金とか今後一切やめてくれるかな。俺が君を特別だと思うことは、ないと思う」
きっぱりとブエルは言う。榛名の肩が震える。ブエルは若干言いすぎたかな、と思った瞬間──
「わかりました、私、悪の女幹部になります」
「……え?」
「そうすれば貴方様に釣り合う女になれますでしょう。そうと決まったら結成しなきゃ!ブエル様、伴侶の席、開けておいてくださいね♡」
そう言い榛名は風のように立ち去る。
「……俺って、女運最悪なのかな」
「私みたいないい上司捕まえておいてよく言うわね。……にしても小鳥遊榛名。……危険人物ね。マークしておきましょう」
閑古鳥が鳴いているロータリーでアレプトは言う。
別方位で、色々動こうとしていた。
「はあ……塩対応のブエル様も素敵だったわ……公私混同しないの、最高。……悪の組織面談も申し込んだし、完璧だわ!待っててねブエル様、貴方様の伴侶に相応しい悪の女幹部に、榛名はなります。うふふふふ……」
その声は夜に溶けていった。
悪の女幹部、爆誕。
そんな理由で生まれてたまるかって感じですが、生まれるのが悪ままです。
榛名は今後、何をやらかすのか。正直、作者にも分かりません。
楽しみにしてください。




