35.アレプトと深夜の会話
丁京都フリーヶ丘。
住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地として知られるこの街には──
今日も恐ろしい(?)悪の組織が存在していた。
そして、深夜。
アレプトに、ブエルはふとした疑問を投げかける。
デカ井町線はままならない編、最終話です。
その答えを、ぜひ見届けてください。
深夜。
ブエルがふと目を覚まし、水を飲みにキッチンへ向かうと居間でアレプトが一人、タブレットに向かって何かを打ち込んでいるのを見つけた。
「アレプト様、なにしてるの?」
「あら、ブエル。こんな時間に起きたの?報告書よ」
「ちょっと起きちゃって。……報告書?」
「ええ、……絵心に関する所感を書けっていう政府からの命令よ」
「……アレプト様は、どう思った?」
「センスゼロ、自己中心的、暴力。世界を統べる価値なし。カリスマ性はゼロ。狂気に飲まれた人だけが賛同できる悪」
ブエルは思わず黙ってしまう。確かに、あれと同じカテゴライズで悪の組織なんて言えないと思ったからだ。
「……アレプト様はさ、どういう悪の組織にしたいの?」
「……え?」
「超悪い子軍団はさ、どこを目指しているのかなって」
「そりゃあもちろん世界征服━━」
「世界征服してさ、なにがしたいの?」
アレプトは黙る。真剣な顔つきになる。
「アレプト様はさ、なんだかんだで人を惹きつける天才だと思うよ。天使セラとは違うタイプの。でもさ、アレプト様、世界征服する、とは言ってるけど、その最終目標が見えないんだよ。征服して、なにがしたいの?」
「私、は……」
言葉を落とす。
「私はただ、あいつにわからせたかっただけなのよ。世界だとか、天才だとか、そういうのじゃない。人の心ってやつを」
「うん」
「ままならないやつらが平然と生きていける世界がほしいの。悪とか正義とか関係なく、ままならない世界を」
「……アレプト様は優しいよね」
「何よいきなり、当然じゃない」
「じゃなきゃ、俺たちのことなんて見捨ててるでしょ」
「そうよ、あんたたち、いつも迷惑かけるんだから」
「そんな俺たちが正々堂々と生きていける世界を作ってくれるんでしょ?」
沈黙。
アレプトの方を見ると、暗くてよくわからないが、顔がほんの少し赤くなっているのが見えた。
「え?アレプト様、照れて━━」
「黙りなさい」
コホン、と咳払いをするとアレプトは言う。
「私たちが目指すのは、誰もが笑顔でスイーツを食べれる世界よ。正義も悪もなにもない、スイーツが絶対的な世界━━」
「ええ?そんな世界なの?」
「当たり前よ。だって私たちは━━スイーツの街の、悪の組織なんだから」
そう言うとアレプトはニヤリ、と笑う。
「さあ用事が終わったなら早く寝なさい」
「アレプト様も寝なよ」
「うるさいわね、この書類明日の7時〆切なのよ」
「本当に計画性がない……」
「なにか言った?!」
「なんにも!」
この世界はままならない。そんなこと、ずっと昔から知っていた。
だからこそ、ままならなくても生きていける、そんな世界が欲しかった。
正義の味方も、悪の組織だっていなくても世界は回る。
それでも自分たちは世界征服を夢見る。
だって━━ままならない世界が大好きだから。
ままならない世界を、肯定したい。
ようやく、この物語の核を言葉にできた気がします。
彼らはこれからも、悪事を働いていきます。
この世界が好きだから。
次回は閑話休題として小話を挟んだ後、新章へ突入予定です。
引き続き、お楽しみください。




