1.超悪い子軍団、参上
丁京都フリーヶ丘。
住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地として知られるこの街には──
恐ろしい(?)悪の組織が存在していた。
理不尽 × 不条理 × ハイテンション!
世界征服を夢見るけれど、
ままならない四人の悪の組織コメディ、ここに開幕!
【追記】
3/3 全体的に改稿しました。改めてお楽しみいただけると幸いです。
丁京都フリーが丘──住みたい街として毎年上位にランクインし、スイーツの街として再開発されている街。
しかしこの街には──
「ねえ、違うんだけど」
世界征服を目論む悪の組織が存在していた!
「今日はモンブランの気分って言ったじゃん! なんでプッチンプリンなの?!」
髪を二つに結び、名門中学の制服を着た少女、アレプトは癇癪を起こしながら三人の男へ叫ぶ。
「アレプト様は今日はプッチンプリンの気分のはず……!」
そう言うのはグシオン、この悪の組織「超悪い子軍団」の頭脳担当。本名は本子 都出太である。
「え、じゃあ俺それもらっていい?」
そう少年漫画雑誌から顔を上げるのは斥候のブエル。本名は一班 甚である。
「……それは私のものだ」
静かに淡々と告げるのは近接戦闘員のオティスだ。本名は等館 輝郎である。
好き勝手言う団員たちに、アレプトの怒りは頂点に達する。
「ふざけないで……」
そういい、壁に貼られている一枚のポスターに掌を叩きつける。
「そんなんだから今月の「悪いこと」の成果がゼロなのよ! もう二十八日よ!」
アレプトは悪の組織「超悪い子軍団」のリーダーである。本名は天使 あかり。
「どうしてくれるのよ! このままじゃ世界征服どころかこのフリーが丘すら征服できないじゃない!!!」
超悪い子軍団の目標は世界征服である。というか、この世界に存在する悪の組織の目的は基本世界征服である。
「今年分の悪の組織登録はすでに通っているんですけどね……」
悪の組織登録とは、ヌーベル平和賞を取った天才博士が政府に提唱し、採用されたシステムである。悪の組織は各自治体にこれを提出しないと合法的に活動できない。他にも細かいルールがあるのだが、尺の都合上割愛する。そのうち出る。
「それなら月一の町内清掃を放棄するのを今月の悪いことにしちゃえば?」
ブエルが言う。
「もう今月の清掃は参加しちゃったわよ!それに義務だから放棄したら活動停止よ!もう、一体どうするのよ!」
「ご安心を、アレプト様」
グシオンが眼鏡をくいっと上げながら手元の端末を見る。
「僕の計算では九十九%の確率で明日──あの男が動くはずです」
と話す。一方でその話を聞いたブエルが「そういえば」と思い出したように言う。
「今日来る途中、あいつ駅前で悪の組織撲滅キャンペーンやってたよ」
「そんなバカな?! 僕の計算では九十九%の確率で明日だと出てたのに?!」
ショックを受けるグシオンを横目にアレプトはやれやれ、と肩をすくめながら言う。
「ふん、あの男らしいわね。いいわ、のってあげる。あとついでにモンブラン買いに行くわよ」
そう言い、壁にかけてあるコートと帽子を手に取るときりっと顔を上げ、叫ぶ。
「ブエル! グシオン! オティス!」
三人もコートを羽織り、ポーズを取る。そしてアレプトは言う。
「超悪い子軍団、出撃よ!」
そうして四人はフリーが丘の駅前の広場で演説をしている一人の男に狙いをつける。
「というわけで我々は悪の組織を撲滅するべく──」
などと群衆を前に話す男を影で見ながらアレプトは言う。
「ふん、やっぱりのうのうといるわね。今日こそその首とってやるわ! いきなさい! ブエル!」
「オッケー!」
と、襲撃許可を得たブエルは短刀を手に男へと襲い掛かる。
「というわけで」
と言いながら男はその辺にいた一般人の頭を掴み、ブエルへその顔を向けさせる。すると一般人の目からはビームが出た。
「こうして目からビームが出るようになりました」
「目がー!」
「ギャーーーーーーーーーーーー!」
「ブエルーーーーーーーーーーーーー!!!」
淡々と説明する男! 悲鳴を上げる一般人とブエル! その様子を見て悲鳴を上げるアレプト。それを見たグシオンは爆弾を取り出す。
「アレプト様、ここは僕が!」
そうして構え、男へと投げつける。
「そう! 僕の計算によれば九十九%の確率であの男を殺せる!」
男へ向かう爆弾! すると男は目からビームを出した一般人の腕を掴むとグシオンへ向ける。
「それで、これをこうするとですね、ロケットランチャーが出ます」
「俺の腕ーーーーーーーーーー!」
「ウワーーーーーーーーーーー!!」
「グシオンーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
再び起きる惨事!腕が吹き飛ぶ一般人!爆風に巻き込まれるグシオン!悲鳴を上げるアレプト!
それを見たオティスは慌てずに日本刀を構える。
「仕方ない、ここは私が。お命頂戴!」
そう言いながら男へと切りかかる。しかし男は臆せず続ける。
「そういえばおまけでこういう機能もつけてるんですよ」
一般人をオティスのいる方向へ向け、背中をトン、と押すついでにいつの間にか持っていたリモコンのボタンも押す。
「自爆機能!」
「グアアアアアアアアアアアアアアア!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「オティスーーーーーーーーーーーーーー!!!」
爆散する一般人! 巻き込まれたオティス! 悲鳴を上げ続けるアレプト!
阿鼻叫喚と化した広間で男は淡々と告げる。
「というわけで『対悪の組織用機能』の紹介を終わりますね」
なんでのうのうとしているのか困惑している民衆を横目に、アレプトは怒りに震える。
「あの男……みんなを! 許せない!」
そういうとこぶしを構え、男に殴り掛かる。
「私だってできるんだから! 死ねええええええ!!!!」
「あ」
男が一言発した瞬間、アレプトの体は空へと投げ出される。
「床にお星さまになる装置、置いてたの忘れてた! でもこうして実演できてよかったですね。うっかりうっかり」
「おぼえてなさいよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」
うっかりしてた、という素振りの男。そうしてアレプトは宙へと解き放たれた。
「あの男、よくもあんなことを!!!!!!!」
体を包帯でぐるぐる巻きにしながらアレプトはリビングでわめく。
「あーあ、なんであんな幸運なのかな、あいつ」
「おかしい……! 僕の計算では九十九%の確率であの男を爆殺できていたのに……!」
「刀が曇った……」
ブエル、グシオン、オティスも解せない、という顔をしている。もちろん三人とも包帯でぐるぐる巻きにされている。
「本当許せない許せない許せない!」
アレプトは怒りに任せ机を殴りつける。脳裏に昔の出来事がよみがえる。
「セラはすごいわね」
見てもらえなかったあの日のことを。
「お母さん、お父さん、あのね、テストで八十点取ったの……」
両親は、自分を見ない。いつも兄しか見ていなかった。
「セラはすごいわね、ヌーベル平和賞受賞なんて……天才だわ」
「特許の数もセラが一位だ! すごいな~!」
「そんなことないよ」
「……」
「ああ、でも……」
「ああ、そうだな……」
「「この子には人の心がないからな……」」
そう両親が呟いたのを聞いた気がした。
「……レプト様? アレプト様?」
オティスがかけてきた声でアレプトは我に帰る。
「な、なに?」
「今日はもう寝ましょう、まだ今月は三日あります」
「明日はさ~、投函ポストに入れられている勧誘のチラシ奪っていくやつやらない?」
「アレプト様、僕の計算によれば九十九%の確率で明日は晴れです」
あんなにコテンパンにやられたのに、彼らはまだ諦めていない。
「……そうね!」
そう、自分には彼らがいる。
計算はあたらないし、プリン如きで喧嘩一歩手前までいくし、くだらないことで盛り上がれる、何よりも大切な仲間。
このままならない世界で生きていくために。ダメなままでもいいということを知らしめるのだ。
悪の組織は、ままならないということを。
「それで私のモンブランは?」
「「「……あ」」」
「買い忘れてるんじゃないわよ!」
「人間、そう上手く変われるでしょうか。私は、そうは思いませんけどね」
一人の男が椅子に腰掛けながらモニターを眺める。
そう、昼間襲われていたこの男こそ、アレプトの実の兄、「天使 セラ」であった。ヌーバード大卒の天才博士である。人の心がない。
ちなみに、次の日は大雨だった。
「大雨じゃないのよ!」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
「悪の組織はままならない!」の記念すべき第1話でした。
この作品はノリと勢いと愛すべきバカたちで突っ走ります。
世界征服なんて夢のまた夢? いえいえ、彼らは本気です。
アレプトたちは果たしてフリーヶ丘を、そして世界を征服できるのか──!?
次回もぜひお楽しみください!




