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悪の組織はままならない!【第三部開始】  作者: 白洲晶
フリーヶ丘はままならない編
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0.一班甚と入団面接

丁京都フリーヶ丘。

住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地。


──そして、悪の組織が存在する街。


これは、超悪い子軍団に

一人の新人が加わるまでの物語。


お楽しみください。

「ねえ、昨日もまた悪の組織が街を破壊したんだって」

「そうなの?いくら一日で治るからとはいえやりすぎじゃない?」

「でも連日やってるってことはノルマ達成できてないんじゃない?」

街中の女子高生たちの会話を横目に、俺はある雑居ビルの前に立っていた。

地図によれば、ここが法で活動を認められている悪の組織──『超悪い子軍団』のアジトらしい。

気を引き締める。そして一歩を踏み出した。



「じゃあ面接を始めます」

目の前の少女、超悪い子軍団のリーダー、アレプトが声を上げる。

緊張しながら、俺は座っていた。


俺の名前は一班(いっぱん)甚(じん)。春から高校生になる。

丁京都の高校に合格できたはいいけど、金がなかった。だから金になるバイトが欲しかった。

だからこそ、俺は、金のために悪に手を染めることに決意したのだ。

──だって住み込みOK、三食付き、兼業OK、ノルマはあるけど軽いなんてあまりにも夢みたいな条件じゃないか!

「まず弊組織への加入希望とのことだけど、悪の組織について知識はある?」

「実はないんですよね」

「そう、じゃあ説明してあげるわ。この世界の悪の組織は『地域を統治する能力』を見るために存在しているの。一種のカリスマ性、それを見るための制度でもあるわ。実際に他の地域では悪の組織のリーダーから政治家になった人間もいるの」

そういえばそんなニュースを見た気がする。アレプトは続けて言う。

「悪の組織に許されている権利、それは街の破壊よ。それもただの街の破壊。歴史的建造物の破壊や人へ危害を加えることは禁止されているわ。なんでかわかる?」

「えっと……カリスマ性を見るためだから、価値のあるものを壊すのはルール違反、とか……征服した後に価値になるものを残しておくため、ですか?」

そう答えると、アレプトは二コリと笑った後言う。

「その通りよ。街は復興できるけど歴史や人は修復できない。だからそのような行為は禁止」

「でも、たまに迷惑系悪の組織とかがニュースになっているじゃないですか?」

ネットで見かけるニュースを例に出すとアレプトは関心した顔をする。

「あら、意外とわかってるじゃない。あれは『やりすぎた』例よ。交通の阻害とかね。地道な嫌がらせとかはOKよ。ポストに入っている迷惑なチラシを抜くとかね」

「なるほど、意外と理に適ってるんだ……」

「そうよ、嫌になるくらいにね」

アレプトは一瞬顔をゆがめるが、すぐに笑顔に戻り続ける。

「それで、悪の組織のメンバーはそのリーダーを支えるための土台よ。土台がなければどれほど立派な柱も立たないわ。あんたはその土台になる覚悟、ある?」

「……あります、だって俺、お金欲しいもん」

場が凍る。本音が出てしまった。

「……アレプト様、この者、金目当てです」

アレプトの隣に黙って座っていた男が声を上げる。

「まあ、あんな条件で出してるんだもの。金目当てで来る輩がいるとは思ってたけど……びっくりするくらい素直ね」

「す、すみません。つい本音が……」

これはやらかしてしまったな、と猛省する。これは、落ちた──

「でもこのくらい素直なほうが使いやすいわね。いい?ここからは本音で話しなさい。志望理由を話しなさい」

「金です!高校に通いながら働ける職場が欲しかったんです!」

「……あんた、家族は?」

「ああ、特に期待されてないんで」

アレプトが複雑そうな顔をする。

「特技は?」

「えっと……高速あやとり?大体のものは作れます」

「自慢できること」

「ADVゲームの選択肢は正しいのを選べます」

「好きな憲法は?」

「え?憲法とかわからないんだけど……」

はあ、とアレプトは息を吐く。

「……あんた、今黒髪だけど、髪染めれる?」

「え?校則で禁止されてなかったから染めれると思いますけど……」

「ああ、もう採用よ採用!一つだけ条件!髪を金髪にしなさい!いいわね?!」

「え?!いいんですか?!ありがとうございます!」

そんなこんなでとんとん拍子に採用が決まった。やった、早く引っ越す準備しなきゃ!

「いいから、お礼は働いてしなさい!」

「はい、わかりました!」

そんなこんなで、俺は悪の道へと足を踏み入れたのだった。



「アレプト様、何を基準に彼を採用したのですか?」

甚が帰った後、オティスがアレプトに尋ねる。

「簡単よ、私の勘。彼がいればアイツに人の心を理解させれるってね」

「……あれが、そう簡単に人の心を理解できるでしょうか?私にはそう思いませんが」

オティスは言う。その通り、一班甚は何も持たない、いたって普通の善良な少年だった。

「だからよ。何も持っていない。だからこそ、足掻いた時になにかを残せる……そんな存在を探していたの。一班甚、あいつは何もないのが長所になる。そう、思ったの」

「そうですか、いえ、アレプト様の決めたことに異論はありません」

「そう、それでいいのよ。いずれわかるわ」

「へえ、新メンバーが入ったんですね。どのポジションに就かせるんですか?」

メガネをかけた男が言う。

「僕の計算では九十九パーセントの確率で諜報ですかね」

「いいえ、斥候にするわ。死んでも再募集すればいいだけだし」

「相変わらず辛辣ですね〜」

「まあお前の発明があれば余程のことがない限り死なないだろ」

「そうですね」

ニヤリ、と三人は笑う。

「超悪い子軍団、リニューアルよ!全員覚悟決めなさい!」

「それで、初シフトはどうします?」

「週二にしましょう」


こうして一班甚は、悪の道へ。


次回から、超悪い子軍団の活動が始まります。


お楽しみに。

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