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妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優
12月

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37話 エストファミリア⑤







―――――





 場所は変わり、ここは紫苑学園。


 時刻はすでに午後七時を回っていており、すっかり人気のなくなった校舎は静まり返り、昼間の賑やかさが嘘のようだ。


 正門からではなく、タクローたちは裏門から学園へ入っていく。


「え……学園?」


 月菜が目を丸くした。


「ここがお兄ちゃんたちのアジトなの?」


「ああ」


 タクローは何でもないように答える。


「正確には、ここじゃないけどな」


 先頭を歩くユウゲンが得意げに笑う。


「案内しよう。我らエストファミリアの本拠地へ」


 向かった先は、見慣れた部室棟


 そして――。


「オカ研……?」


 月菜は目を瞬かせる。


 それもそのはず、目の前にあるのはオカルト研究部の部室だった。


「え? ここ?」


「そうだ」


 ショージがドアを開ける。


「ようこそ、秘密基地へ!」


「いや、普通の部室だけど……」


 古びた机。


 ソファ。


 ホワイトボード。


 ショージの漫画。


 ユウゲンの怪しい書籍やインテリア等。


 どうみても、いつものオカ研の部室だった。


「やっぱり冗談……」


「まぁ待て」


 ユウゲンは本棚の前へ歩いていく。


 そして、一冊の古びたオカルト雑誌を引き抜いた。


 ガコン。


 鈍い音が響く。


「え?」


 本棚がゆっくり横へ滑っていく。


 その奥から現れたのは、地下へ続く鉄製の階段だった。


「う、嘘ぉ……!」


 月菜が思わず声を上げる。


「な、何これ!? 映画じゃん!」


「ふっふっふ」


 ショージが胸を張る。


「男なら一度は秘密基地に憧れるだろ?」


「いや、規模がおかしいよ!」


「ちなみに工事費はユウゲン持ち」


「アズマの財力と技術力を甘く見るな」


 ユウゲンが得意げに腕を組む。


「理事長に話をして地下施設を改修しただけだ」


「だけ、で済ませる話じゃないからね?」


 月菜のツッコミももっともだった。


「ほら、喋ってないで降りるぞ」


 タクローが先に階段を降りていく。


 ミアはエヴァを支え、陽菜も肩を借りながら続く。


 月菜も恐る恐る後を追った。


 階段は思った以上に深い。


 一階分。


 二階分。


 三階分。


 どこまで降りるのだろうと思った頃。


 ようやく視界が開けた。


「…………」


 言葉を失う。


 地下とは思えないほど広い空間だった。


 天井は高く、白い照明が規則正しく並んでいる。


 壁一面には大型モニター。


 日本各地の地図。


 世界地図。


 用途不明の機械。


 武器庫らしき金属製ラックには、日本刀や槍、銃器まで整然と並べられていた。


 中央には大きな円卓。


 その奥には巨大な紋章。


 剣と盾を組み合わせたような紋章の下に刻まれている。


 ――【EST FAMILIA】


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


 月菜の絶叫が地下基地へ響き渡った。


「な、なにこれぇぇぇぇ!?」


「秘密基地だ」


「秘密基地ってレベルじゃないよ!!」


「うむ。正義を名乗る自警団にはこれぐらいは必要であろう」


「言い切らないで!!」


 ショージがニヤニヤ笑う。


「いい反応だなぁ。初めて来た奴はみんなそうなる」


「なるよ!」


 そして、月菜は兄を指差した。


「お兄ちゃん!!」


「ん?」


「説明して!!」


「長くなるぞ?」


「いいから!」


 月菜の頭は完全に限界だった。


 エストファミリアにタクローがミシマだった事。

 加えて学校の地下に秘密基地。


 今日一日で常識が何度壊れたのか、自分でも分からない。


 タクローは苦笑しながら椅子を引く。


「まぁ、座れよ」


「……」


「まずは飯にするか」


「そこなの!?」


「腹減ってると頭回らないだろ」


 スーパーの袋から、シチューの材料を取り出し始めるタクロー。


 その様子を見て、ミアが小さく笑った。


「確かに。もう夕食どきだもんね」


 陽菜も思わず口元を緩める。


「……お腹が空いた」


 エヴァも苦笑した。


「確かにそうですね。いただきましょう」


 月菜だけは、まだ呆然と立ち尽くしていた。


「……もう誰か、今日一日を最初から説明してぇぇぇぇ!!」


 地下基地には、月菜の悲鳴にも似た叫びだけが、いつまでも響き渡っていた。





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