33話 月菜、ハピバっ!⑤
「じゃあ、まずは私からね」
トップバッターとして名乗りを上げたのはミアだ。
綺麗にラッピングされた四角いパッケージを、丁寧に月菜へと手渡す。
「はい、おめでとう月菜。学校生活でもきっと役に立つと思うわ」
「わぁ、ありがとうございます、ミアさん! 開けてもいいですか?」
月菜が嬉しそうにリボンを解くと、中から出てきたのは海外製のちょっとお洒落な多機能文房具のセットだった。
「すごくオシャレ! 大切に使いますね!」
「ええ、勉強が捗るといいわね」
ミアの言葉に、月菜は少し苦笑いを浮かべた。
……まぁ、月菜は勉強があんま好きじゃないからな。実用性を重んじるのミアらしい、なんとも背筋の伸びるチョイスだった。
今度はユウゲンが「フハハハ!」と大げさに腕を組んで前に出た。
「ならば次は我の番だな! 受け取るが良い、月菜!」
そう言ってドサリと机に置かれたのは……何やら禍々しい装飾が施された、重厚な革製の小箱。
「……えっと、ユウゲンさん、これは?」
「我が魔力を込めた特製の魔除けのブレスレットだ! これさえあれば、いかなる悪霊や不運もお前を害することはできん!」
「あはは……ありがとうございます! すっごく強そう!」
中から出てきたのは、ちょっと中二病全開だけどデザイン的には普通に格好いいストーンブレスレットだった。月菜が苦笑しつつも腕につけると、ユウゲンは「うむ、よく似合っておるぞ」と満足気に頷いている。
「では次は私の番ですね」
そう言って、日文研のメンバーが動き出した。
田中さんが、ルンルンとした様子で可愛らしい紙袋を差し出す。
「月菜さん、お誕生日おめでとうございます! これは私からですよ」
「ありがとうございます、由香里さん!」
月菜がワクワクしながら袋を覗き込むと、そこにはお洒落なデザインのエプロンが入っていた。
「……月菜さん、料理を頑張っているのでこれでモチベーションアップですよ!」
田中さんは満面の笑みで言った。
「ありがとう! わぁ、嬉しいなぁ」
そういえば日文研で料理の練習をしているみたいだけど、本当に上手くなったのか?
ぜひとも今度その成果を拝ませてもらいたいものだ。
「そういえば、朝にあたしが渡したプレゼントはどうしたのかな?」
ここで星菜ちゃんがニヤニヤとした不穏な笑みを浮かべた。
「もう、お家なんだから、今度こそ遠慮なく開けてよ!」
「せ、星菜ちゃんっ?! そそ、そんなの出来ないよ!!」
月菜は分かりやすく目を泳がせていた。
それを見た星菜ちゃんは、さらに目をキラリと光らせる。
「おほん、朝あたしが月菜ちゃんにあげたプレゼントは――ムフフな大人の下着でーす♪」
「ひゃ、ひゃああああっ!? 星菜ちゃん?!! 皆が居る前でそんなこと言っちゃダメぇっ!!」
月菜は一瞬で顔を真っ赤にした。その叫び声に、リビングが一瞬だけドッと沸く。
すると、すかさず部屋の隅からあいつが身を乗り出してきた。
「ちょっと、ちょっと月菜ちゃん!? 是非ともその下着を拝見させてくれっ!!!! あわよくば履いている姿を拝ませておくれっ!!!!」
「おい、やめろボケっ!!」
俺の拳がジョージの脳天に軽く炸裂する。
「タクロー……俺が1限後に言ったセクシー下着作戦を、まさか星菜ちゃんが先回りして実行してるとはな……。やっぱり女の子には鉄板のプレゼントなんだよ!」
「だから違うって言ってんだろ。あとお前は発言禁止な」
ジョージのバカ発言にツッコミを入れつつ、俺がやれやれと肩をすくめていると、月菜が真っ赤な顔のまま、うるうるとした瞳でこちらをチラチラと盗み見てきた。
「ち、違うのお兄ちゃん! これは星菜ちゃんが勝手に選んだだけで……! でも、その、変、かな……?」
「変っていうか……まあ、その、お前にはまだちょっと早いんじゃないか?」
「うぅ……やっぱり子ども扱いされてる……」
月菜が分かりやすくシュンと眉を下げて拗ねてしまう。
そこで俺は、あらかじめ用意しておいた自分のプレゼントの袋を、そっと月菜の前に差し出した。
「ほら、これは俺からだ。……子ども扱いしたつもりはねーよ」
「えっ……お兄ちゃんから?」
月菜が驚いたように顔を上げ、手渡された大きめの袋を開ける。中から出てきたのは、月菜が少し前に「可愛い」とボソッと言っていた、お気に入りのキャラクターの大きなぬいぐるみだった。
「あ……! これ、私が前気になってやつ……!」
「お前が欲しがってたろ。……あと、それだけじゃ寂しいかと思って、これも」
俺はぬいぐるみの後ろに隠していた、もう一つの小さな箱を差し出した。
月菜が不思議そうにそれを開けると、中にはシンプルだけど少し大人っぽいデザインの、綺麗なヘアピンが入っていた。
「子どもっぽいぬいぐるみだけじゃあれだしな。一応、大人の階段を一歩上った記念だ」
俺が少し照れくさくて目をそらしながら言うと、月菜は宝物を見るかのようにそれを見つめ、それから一気に顔を輝かせた。
「お兄ちゃん……! ありがとう、すっごく、すっごく嬉しい!」
さっきの恥ずかしさなんてどこかへ飛んでいったように、月菜はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめながら、満面のひまわりみたいな笑顔を俺に向けてくれた。
「ほら、これで全員分終わっただろ。せっかくの料理が冷める前に、乾杯するぞ!」
「いや、俺は終わってないぞ?」
ショージの事は無視して、みんなが「賛成!」と一斉にグラスを掲げる。
因みにショージのプレゼントはバスボムセットと意外とまともであった。




