33話 月菜、ハピバっ!④
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「……来ちゃった♡」
放課後。月菜の誕生日パーティーの準備をするため、そそくさと帰宅した俺だったが、無情にも我が家のインターホンが鳴り響いた。
液晶モニター越しに映っていた段階で、その男の顔はハッキリと確認していた。
確認していたが……まさか本当に来やがるとは。
「来ちゃった♡……じゃねーよ!! あれだけ『来るな』って言ったのになんで玄関の前に立ってんだよ、お前は!?」
ドアを開けるなり怒鳴りつける俺に、ジョージは人差し指を頬に当てて首を傾げるという、実に不愉快なポーズを決めてみせた。
「あれ? 『来るな』は『早く来て』っていう高度なフリじゃなかったのか?」
「だからフリじゃねーよ!!」
「あー……ごめん、タクロー。私一人じゃ、この暴走する二人を止められなかったわ」
申し訳なさそうに手を合わせて謝罪してくるミアの隣には、なぜか腕を組んでふんぞり返っているユウゲンまでいた。
「フハハハ! 我がいないところで楽しそうな催しを執り行おうなどと、不届き極まるぞタクロー! 我も混ぜるが良い!」
「ハウスっ! お前ら二人とも、今すぐ自分の家に帰りやがれ!!」
俺が玄関先で不法侵入予備軍どもを追い返そうと奮闘していた、その時だった。
「あれっ? ミアさん? それにジョージさんとユウゲンさんも……?」
「――っ!?」
時、すでに遅し。
背後から響いた鈴を転がすような声に、俺の背中に冷たい汗が流れる。
本日の主役である月菜が、ついに帰宅してしまったのだ。しかも、一人ではない。
「あーっ! タクロー先輩だ! こんばんわです♪」
「……お邪魔、します」
月菜の後ろには、元気いっぱいに手を振る星菜ちゃんと、少し気まずそうにぺこりと頭を下げる陽菜ちゃん。そして田中さん率いる日文研のメンバーが揃っていた。
「……何故に日文研の皆さんが揃いも揃ってうちにお見えに?」
俺が引きつった笑みを浮かべて問いかけると、由香里さんはルンルンとした様子で声を弾ませた。
「月菜さんが今日お誕生日と聞きまして、最初はお祝いをしようと思ったのです。けれど、どうやら京田家で誕生日パーティーを行うと小耳に挟みまして! せっかくだから合流させてもらおうと思いまして、押しかけてしまいました!」
「……急な訪問になってしまって、本当にすみません」
目を輝かせる由香里さんの隣で陽菜ちゃんはこれ以上ないほど申し訳なさそうな表情を浮かべている。
どうやら星菜ちゃんあたりに引っ張られて断りきれずにここまで来てしまったらしい。
さすがにこれだけの人数を狭い我が家に上げるのは……と、俺が断る口実を探そうとした瞬間。
月菜が俺の服の裾をキュッと掴み、下からうるうるとした瞳で見つめてきた。
「お兄ちゃん……ダメ、かな? みんなでお祝いしてくれたら、私、すっごく嬉しいんだけど……」
「うっ……」
我が妹ながら、自分がどうおねだりすれば兄が折れるかを完全に理解している凶悪な可愛さだ。本日の主役がそこまで言うなら、兄として拒否権などあるはずがない。
「……はぁ。主役がそういうなら仕方ない。ほら、みんな入れよ」
「ホントっ!? やったぁ! お兄ちゃん大好き!」
満面の笑みを浮かべてリビングへと駆けていく月菜。
……家はあまり片付けていないんだがな、と思いつつも諦めて溜息をつく。
「おっ、なら俺たちも参加で大丈夫だな!?」
どさくさに紛れて上がろうとするジョージの胸倉を、俺はガシッと掴んで固定した。
「いや、お前だけは今すぐ回れ右して帰れ」
「なんでだよ! 差別だろこれ!」
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「うわぁ、お兄ちゃん、これ全部一人で作ったの!?」
リビングに入った瞬間、机の上に並べられた料理の数々を見て、月菜が歓声をあげた。
昨日から仕込んでおいたローストビーフに、月菜の好物を詰め込んだ特製のオードブル。
大人数で食べるには少し量が足りないかもしれないが、パーティーの形としては十分すぎる見栄えのはずだ。
「凄いじゃない、タクロー。あなた本当に男子高校生? どこかのシェフの間違いじゃないかしら」
「これは宴にふさわしいな! 褒めて遣わすぞタクロー!」
「わー、美味しそう! タクロー先輩、これつまみ食いしていいですか!?」
ミアが感心したように頷き、ユウゲンが偉そうに席につき、星菜ちゃんが早くもローストビーフに手を伸ばそうとして陽菜ちゃんにパシッと手を叩かれている。由香里さんも「素晴らしいですね!」と嬉しそうに料理を眺めていた。
ジョージ? あいつは部屋の隅で大人しく座らせてある。
「じゃあ、ご飯食べる前にプレゼントを先に渡そうかな」
ミアがそう促すと、リビングのソファに座った月菜を囲むように、みんなが自然と集まってきた。




