第八十三話「その手は離さない」
違う惑星の太陽でも、光と熱を届けてくれる。
本当に今いる世界がバーチャルでデジタルな空間なのだろうか?
朝焼けは変わらず暖かい明かりを届けてくれていて、腕の中の彼女からも確かな体温が伝わってくる。
もし、この世界が嘘の世界と言うのなら、あたしの心はここまで痛んでいないだろう。
虚構は現実になり、今、目の前に在る。
かけがえのない、生命――
「……アースぅ……アースうぅ…ッ」
仮面が外れてから彼女はまだ立ち上がれず、あたしに抱きつかれたまま、二人その場に蹲っていた。
彼女の手が弱々しくあたしの涙に濡れた頬に触れる。
「……すみません、まひるさん……また、泣かせてしまって……」
彼女の震える指があたしの涙の跡をなぞる様に、何度も優しく往復する。
「ううんッ……ううん!」
あたしは彼女の胸に顔を埋めたが、厚い鎧に遮られ彼女の鼓動を聴くことができず、また涙を零した。
「……離れて、ください」
「え……?」
アースが歯を食いしばり何とか身を起こすと、側に転がっている仮面を睨む。見ればさっきより暗いオーラが立ち上っている気がした。
「あれは……危険です。魔力とは違う……天照そのものの力が、詰め込まれています」
アースが手を伸ばし仮面を掴んで、あたしからまた後ずさった。
「でも! 何とかなるんでしょ!? だってッ……会えたんだもん?」
どうしてあたしから離れるの?
アース、もっと近くに来て?
ずっと一緒にいよ?
あたしの想いとは裏腹に、また二歩、三歩とあたしから距離を空けていくアース……。
思考が纏まらない頭であたしは必死にアースを引き留めようと考える。
「そんな仮面なんか捨てて、一緒に戻ろう! すぐそこにみんな来てるんだよ!?」
あたしのその言葉にアースは少し悲しそうに微笑むと仮面を腕に抱えながら、やはり後ずさりしていく。
「……暴走、し始めています。これ程のエネルギーの塊が解き放たれたら、どうなるか……」
「だからって、アースが持ってることないでしょう!? ここなんて元々更地なんだし、どうなったって――」
あたしはそこまで言って、自分の言葉にハッとして口を噤んだ。
そんなあたしを見て、アースがフッと微笑む。
「この仮面の力はこの世界の魔力をもってしても抑えきれません。もう一度装着し、私の体の中で暴走させます……!」
何を言ってるのアースは!?
そんなのあたしたちの力で、なんとだって!
仮面から放出されだしてる純粋なエネルギー。それと同じ圧迫感のある気配をこの《箱庭》と言う領域全体からひしひしと感じる。
声は聞こえなくなったが、きっと今も観てる――
アースが苦しいだろうに穏やかな顔を作って、あたしに微笑み掛けてくれている。
「元々、仮面なしでは動けなかった身……こんな形でまた、会い……泣かせてしまう親不孝を、赦してください」
どうして、そんな……顔ができるの?
あたしは、できない……できないよッ!
絶対に諦めてやるもんかッ!!
「……っ、あ……」
声にならなかった。胸の奥が、きしむ。
何かが壊れそうで、壊れてしまえば楽なのに、それでも壊れないまま、熱だけが溜まっていく。
「うわああああぁあああーーー!!!」
あたしは、吠えた――
涙は溢れ、口から唾を飛ばし、魂から、吠えた。
「絶対にッ! もう絶対ッ!」
もつれる足も気にせずアースに駆け寄る。驚いてまた離れようとしたってもう遅い!
がっちり掴んでやった。あたしのアースが、もうどこにも行かないように――
「いやだぁ! いやだあッ!! うあぁあーーー……ッ!!」
涙と鼻水に汚れた顔であたしはアースからどうにかして仮面を取り戻そうと引っ張るが、アースも弱っている割りに中々離してくれない。
「バカ! 馬鹿アース! こんなものに負けるなッ!! あたしがどうとでもしてあげるから! 諦めるなあッ!!」
アースも必死にあたしに仮面を渡すまいと抵抗する。
「聞き分けてくださいッ! こうして会えただけでも奇跡なんです! 私のことはもうッ!!」
「そんなことできるわけないでしょッ!? どうしてそんなことが言えるのよッ! あたしたち家族でしょうッ!!」
「だからです! このままではみんなを巻きこんでしまう!! だから、逃げてと言ってるんです! まひるさんッ!!」
――バチンっ!
あたしの平手がアースの頬を力強く張った。
痛い。とてつもなく、心が――
だけど、今はッ!
「ふーッ! ふーッ! ふーッ!」
「…………ッ」
アースは自分があたしに打たれたことが信じられないような顔をして、ゆっくりと視線を合わせる。
「一緒にいるって言ってんのッ!! この分からず屋! どうしてこう頑固なの――」
――バチンっ!
音が、遅れて世界に戻ってきた。
返す刀でアースの平手があたしの頬を打ったのだ――
……アースが、ぶった……?
涙でボロボロの顔でアースは歯を食いしばっていた。
「……どっちが分からず屋ですかッ!!」
声が、震えていた。
「感情に流されず現実を見なさいッ! そんなことではこれから先――」
「くうぅーーーッ!!!」
あたしはアースの胴体にタックルしてそのまま力強く両腕をがっちり背中まで回す。
「アースはッ! アースは生きたくないのッ!? みんな一緒に生きたくないのッ!!?」
「ふーッ! ふーッ! ふーッ!」
普段綺麗なアースの顔も、既に見るに堪えないほど涙と色々なものでぐしゃぐしゃだった。
アースの喉が鳴った。何度も、言葉を飲み込むように肩が揺れて――
「生きたいに決まってるでしょうッ!! まひると生きたいに決まってるッ!!」
その掠れた叫びは遠く離れた異界の地で、二人だけが聴いた魂からの叫びだった。
時が止まってしまったかのように、さっきまでの喧騒がピタリと止み、髪が吹く風をようやく感じさせた。
「……言えたじゃない……それで、いいのよ……」
膝から崩れ落ちるアースをそのまま肩の上から抱きしめた。
「……私はみんなと……まひると、生きたぃ……ッぅぁああぁあぁぁーーー……ッ」
あたしの腕の中で彼女は小さい少女のように泣き崩れた。あたしはその白いぱさつく髪を愛おしく撫でた。
「……うん。生きよう……」
あたしはあの声が聞こえなくなった宙を睨みつけ、今度こそ心からの宣戦布告をする。
「……大丈夫」
声が震えないよう、奥歯を噛みしめる。
「――護る。ううん……護るしか、ないの。家族って……そういうものよ」
『超次元電神ダイタニア』
第八十三話「その手は離さない」
闇色のオーラを纏う仮面に、無遠慮な陽射しが降り注ぐ。
それでも黒は、光を拒むようにそこに在り続けていた。
「アース、もうちょっとだけ辛抱してね?」
あたしは彼女の背に回していた腕をそっと解き、張って赤くなっている頬に手を添えた。
「……どうするつもりですか?」
アースもゆっくりと、震えながらあたしの熱い頬に手を伸ばしてくる。
彼女の瞳が不安一色に染まっている。あたしは彼女の頬を擦りながら目一杯の笑顔を向けた。
「……痛かったね……」
アースはまた泣き出しそうな顔になって、震える手であたしの熱い頬に触れた。
「……はい、とても……ッ」
彼女は言葉に詰まりながらも、同じように優しく擦ってくれた。
お互い、それ以上は言わない。
本当に痛いところは、この手の温もりが埋めてくれていたから――
「……あの、まひるさん――」
アースが何か言おうと恐る恐る声をかけてきたが、あたしはそれを聞き逃せるほど人間できちゃいない。
「まーひーる!」
「えっ?」
何のことか分からないと言った顔でアースがキョトンとする。
「まひるさんじゃなくて、まーひーる!」
――この呼び方を、どれだけ待ってたと思ってるのよ。
「あっ……」
アースはようやくあたしが言わんとしてる事に気づいたようで、バツの悪そうな顔になって下を向く。
「さっきは、その……勢いで、つい……」
申し訳なさそうにアースが小さくなる。あたしはその姿を見て軽く苦笑し、ため息をついた。
「嬉しかったんだよ。まひるって、ようやく“さん付け”じゃなく呼んでくれて……」
「え……」
アースがビー玉のような蒼い瞳を大きく見開いてあたしの顔に向き直る。
「だから、ね?」
アースはまだ少しもじもじしていたが、少しはにかみながら頷いてくれた。
「……はいっ!」
いつも美人だとは思っていたけど、この時のアースの向けてくれた顔は少女のように可愛かった。
「そう言えばアース、さっき何か言いかけてた?」
「あ、はい。仮面の処理についてなのですが、私にも分からない所が多く……」
あたしは地面に落ちている仮面に視線を向ける。今も何やら怪しげな黒い靄が掛かって見える。
このままだとヤバいのよね? アースはこの辺一帯消し飛ぶほどのエネルギーって言ってたけど、どうしたら……
空高くまで運んで投げ捨てる?
レーザーで焼き切る?
勇者力で……何か別の形に変える?
――違う。
どれも“外に押し付ける”だけだ。
もし失敗したら、アースを……みんなを巻き込む。その想像が、喉の奥をひりつかせた。
仮面にかかる黒い靄がどんどん大きくなってきている。見てるだけで人を不安にさせる靄だ。早くどうにかしないと――
あたしは隣りの心配そうな顔を見て、自分の顔が強張っていることに気づき、さっと笑顔を作る。少し苦笑いになってる気がしないでもないけど。
さあて……――
まひるが銀騎士――アースと追走を繰り広げている頃、天照の力によって拘束された皆が抵抗し、体を動かしている中、静かに足掻く者がいた。
男は目を瞑り、演算式を構想、構築していく。
天照の“謎の力”によって空気中に拘束されている現状だが、それが魔法でも手品でもないことを、その男は誰よりも知っていた。
(あいつは所詮データの集積体だ)
そう言い切ることで、風待は自分を落ち着かせた。感情に呑まれれば、計算が狂う。
(使う技もデータ。なら……解析できるはずだ!)
彼の頭の中で数多の数式がトライアンドエラーを起こし、点が線へと繋がっていく。
集中を重ねた暗算で、視界の端が白く滲む。それでも彼は、計算を止めなかった。
時間にして、ほんの数分。
だが風待の感覚では、思考を何十回も焼き切られるほどの長さだった。
「ふうッ……よし!」
風待が汗まみれの顔でゆっくりと目を開くと、自身の胴を締め付ける空気の枷が消滅し、その身が解放された。
自由になった彼は手を数回握り、足首を回して体の感覚を確かめる。
「風待氏!? 拘束がッ!」
それに気づいたマリンが真っ先に驚きの声を上げた。
「《解錠》のスキルプログラムを改造してみた。ま、制作者特権みたいなもんだよ」
そう言うと風待は遥か遠くに見えるまひると銀騎士に視線を向ける。
「このまま加勢に行く。済まないが皆はもうしばらくここで待っていてくれ」
風待が前傾姿勢になり今にも駆け出そうとした矢先、すぐ隣りから声が掛かった。
「風待! 私も行きます。私の枷も解いてください!」
風待が声のした方に顔を向けると、真剣な顔つきのシルフィが見つめていた。
「このスキル、頭の中で全部処理する必要があるから時間かかるんだよ。気持ちだけ貰っていく」
また視線を前に戻そうとした彼の背中にシルフィの凛とした声が飛ぶ。
「……あなた、また一人で行くつもりでしょう?」
低く、しかし逃がさない声だった。
「それ、前にも見ました。 地底湖の時と同じです」
「……」
一瞬の静寂に、尚もシルフィが逃さないと言うかのように続ける。
「損はさせません、私も連れて行くのです!」
その声に、迷いはなかった。恐れを飲み込んだ者だけが出せる、強さの色だった。
風待は大きなため息を吐きながら彼女の方に向き直った。そして、そのまま片手をシルフィにかざし、目を瞑って集中する。
その間、周りの皆も声を出さずただ風待を見守った。自分も連れていって欲しいと、口から零れそうになるのを必死に堪えながら――
一二分すると、シルフィの体が自由になり、風待が疲弊した顔の汗を拭った。
「ふう……。お前もつくづく頑固だよな?」
「お前ではなく、シルフィです」
キッと睨む彼女の顔を見て、風待はつい小さく噴き出した。
「そうだったな、シルフィ」
「……分かれば、いいのです」
ディーネが目を凝らし遠くの二人を観て言う。
「……相川さんちのまひるちゃん、何やらあの仮面の騎士と揉めてるようだよ、シルフィ?」
ディーネが流し目でシルフィをニヤッと見やる。
皆の視線が彼女と風待に集まった。シルフィは目を細めてまひるを見ようとしたが距離がありすぎて視認することは出来なかった。改めてディーネの視聴覚に感心する。
「ディーネは引き続き二人を観察、ノーミーはこちらに被害が及ぶような場合、防御を最優先に!」
そのシルフィの命にディーネとノーミーが顔を見合わせて笑い合う。
「ふふっ、了解ですわ!」
「らしくなってきたじゃないの。それでこそ、あたしらのリーダーだ……行ってきなッ!」
背中に仲間の檄を浴びながらシルフィは迷いなき声色で応えた。
「はいッ!」
あたしは気合を入れ直し、仮面のすぐ側までまっすぐに歩いていった。
頭に浮かんだ策を実行しようと仮面に片手をかざしたその時――
「おーい! 相川さーん!」
遠くで誰かの呼ぶ声が聴こえた。振り向くと風待さんとシルフィが息を切らしてこちらに走ってくるのが見えた。
「風待さん! それにシルフィも!」
あたしは仮面から手をそらし、二人の方に向き直った。
地面に蹲ったままのアースを見て風待さんが「勝負あったのか?」と問う。
あたしは苦笑してアースの顔を見ると彼女も苦笑で返した。
「彼女、アースでした」
「えッ!? あー……ああッ!」
風待さんはあたしの言葉に驚きアースの顔をまじまじと見て確信に至ると更に驚いた。
「……アース君、よく無事で……」
風待さんの顔がゆっくりほころぶ後ろで、シルフィの顔もぎこちなくほころんでいた。
あたしは事を急ぐべく直ぐ様本題に移る。
「それがですね! まだ気が抜けないんです!」
二人にアースの様態、仮面の不穏な脅威を矢継ぎ早に説明した。
二人は黙ってあたしの話を聴いてくれていたが、その顔は神妙で、事の重大さを噛み締めているようだった。
「それで、相川さんのその策か……。俺が思うに、上手く行けば時間稼ぎにはなるだろう」
「上手く行って時間稼ぎですかあ〜……」
折角話したあたしの策はそこまでのものらしい。ちょっとがっくり来て空を仰ぐ。
「……だが、さっきみたいに俺が天照のプログラムを解除してる猶予があるとも思えない。一度それで時間を稼いで、その間に俺が解除を試みる!」
あたしたち四人は顔を見合わせて力強く頷いた。
シルフィがアースに肩を貸してくれて、仮面から距離を取らせてくれている。
あたしと風待さんはと言えば、これから仮面にぶつける水属性最強スキルの詠唱に集中していた。
仮面にかざした右手から既にほんのり冷気を感じる。
「発動準備、整いました!」
「二人の最強スキル同時撃ちなら、成功する確率も上がるってもんだ」
あたしの隣で風待さんも同じように仮面にゆっくり右手の狙いを定める。
深呼吸し、上手くいくよう世界に祈る。その祈りに応えが返ってこないかのように、辺りには静寂とあたしの心音だけが取り残された。
「行くぞ!」
「はい!」
二人の声が重なる。
「「《絶対零度》ッ!!」」
突如、二人の右手からダイヤモンドダストが固体化でもしたかのような冷気が仮面に発射された。
仮面の表面はすぐさま白く凍てつき始め、その下の地面までも白くひび割れていく。
水属性魔法の最強攻撃スキルと言うだけあって発動時間も長い。生身で使うには腰を落とし、しっかり足を踏ん張らないとすぐに仰け反ってしまいそうになる。
「ぐぐぐ……ッ!」
「踏ん張れ! 相川さん!」
横からあたしよりはまだ余裕が感じられる風待さんが声をかけてくれる。
「……は、い……ッ!」
それだけ絞り出すのがやっとだった。
「原子まで止めに行くとは、思い切ったね」
「そ……で、すか……?」
「天照のエネルギーがプログラムされたものでも、そうでなくても――」
風待さんの言葉は、後半ほとんど耳に入ってこなかった。今はただ、この冷気が止まってくれることだけを祈っていた。
でも、何だかさっきまでの黒い靄は姿を潜めた気がする。
そろそろスキル効果時間が終わる――
「ふうッ!」
手のひらからの放出が終わると、あたしは額の汗を拭い、大きく息を吐いた。吐いた息が白い。
見れば仮面は雪に埋もれたように真っ白に凍てつき、放出する靄も収まっていた。
あたしは風待さんに振り向くと、彼も笑顔を向けてくれた。アースとシルフィに向くと彼女たちも安心したような笑顔を返してくれる。
「……や、やった!」
あたしは喜びのあまり両手を握りその場で小さくガッツポーズをとった。
これであとは、アースの回復にようやく全力で当たれる!
「アース! 今そっちに行――」
その時、世界に嘲笑われた気がした。
あたしの背後から、物凄い存在感のある悪寒が背筋を凍りつかせた。
風待さんも気づいたようで、あたしと二人、ゆっくりと振り返る。
その視線の先には――
あの凍りついた、仮面があった。
「まだ何か――」
「相川さんッ!!」
言い終わるより先に、あたしは風待さんによって突き飛ばされた。
それと同時に仮面から凍てつく冷気が逆流し、周囲の大気を凍らせ始めた。
近くにいた風待さんが冷気に足を取られる。彼の右脚は地面に固定され、その場で身動きが取れなくなってしまった。仮面からの冷気は尚も空間を凍りつかせて行く。
「風待さんッ!!」
あたしは彼に向かい駆け出そうとした。が――
「来るなッ! こいつ、空間ごと凍らせて……ッ!?」
冷気に掴まれた足首は既に膝下まで凍りついて来ている。
「まひるさん! 風待ッ!」
シルフィが異常を察して悲鳴のような声で呼びかけてくる。あたしはそれに応えられず、ただ目の前で凍っていく風待さんを呆然と眺めていた。
どうしよう!?
あたしの言ったことで風待さんが……
助けなくちゃ!
でも、どうやって!?
こんな時に何も名案が思いつかない自分に心底嫌気がさした。
考えども希望の策は浮かばず、焦れば焦るほど絶望だけがより深く心に刻まれていく。
「どうやらッ、無理矢理天照の力を止めようとしたせいで、逆に増幅させちまったらしい……ッ!」
風待さんがそう言いながら、尚も冷気を吐き出し続けている足元の仮面を拾い上げた。
なんでそんな事をするの?
彼は寒いだろうに、温かい笑顔をこちらに向ける。
「仮面を……俺が引き受ければ、少なくとも、行き先は一つに――」
「やめてくださいッ!」
あたしの声に風待さんは一瞬だけ目を細めた。
何を言っているの、さっきから風待さんは――
そんなの、できるわけないじゃない……。
これじゃ、アースと風待さんが入れ替わっただけじゃないッ!
「そ――」
あたしが口を開こうとした時、後ろから怒声が浴びせられた。
「何を馬鹿なこと言っているのです! 何を、馬鹿な……ッ!」
少し振り向き、声のした方を見る。
そこにはアースを地に下ろし、こちらに駆け出す、必死のシルフィの姿があった。
【次回予告】
[まひる]
アースの平手……
痛かったな……
でも、それ以上に
嬉しかったんだよ?
次回!『超次元電神ダイタニア』!
第八十四話「仮面の向こう側」
まーひーる! だよッ?
――――achievement[ケンカ]
※アースがまひると友達になった。




