第四十八話 銀の竜殺し VS 三英雄
「模擬戦ではこの木剣を使ってもらう」
ギルドマスターが訓練場にあった訓練用の木剣を京也とシンヤに渡す。
「この木剣のほかに何かルールはあるんですか?」
「いや、後は自由に戦ってくれ。怪我をしてもこの上級ポーションで治せるから心配ない。ああ、死んだら回復魔法でも生き返らないから、相手を死なせたら駄目な」
「わかりました」
京也は渡された木剣を見ている。
(これ、思いっきり振るったら木剣の方が折れるよな)
渡された木剣は初心者用の物で、京也の力には耐えられそうになかった。
(攻撃する時は、こいつに魔力を流して強化してみるか。それとこの攻撃は打撃攻撃だよな)
普通、剣の攻撃は斬撃に分類されるが、この木剣は刃がないので打撃攻撃だろうと京也は推測する。
(後は相手が打撃無効のスキルか装備品を持ってるかだが)
レジェンドワールドには物理攻撃は打撃、斬撃、射撃と三種類存在し、それぞれに無効化するスキルや装備品が存在していた。京也はゲーム内でそれらをすべて習得、取得していたが、相手がそれらを持っているかは、わからなかった。
(能力鑑定のスキルがあればいいんだけどな。まあ、ないものを考えてもしかたがない。とりあえず戦ってみよう)
京也とシンヤは、木剣を構えて対峙する。
「よし、では模擬戦、開始!」
ギルドマスターの合図で戦いが始まる。
「うりゃあー!」
シンヤは何のスキルも使わず、力任せに木剣を振るい京也に攻撃する。
「ほっ、はっ」
その攻撃を京也は余裕でかわす。京也の速さはシンヤのそれをを遥かに上
回ってるので当然の結果だった。
「くっ、何で当たらない!」
シンヤは力任せに何度も攻撃するが、京也はすべて余裕を持ってかわしていた。
「何やってるんだ! スキルを使え!」
不甲斐ない戦いをしているシンヤを見てゴウがそうアドバイスする。
「そ、そうか。よし」
シンヤは落ち着きを取り戻し精神を集中させる。
(スキルか。これは警戒しないといけないな)
京也も精神を集中させて相手の動きを観察するように見ている。
「光竜剣!」
シンヤは木剣に光をまとわせ高速で斬撃を放つ。
「ふん!」
京也はその高速の斬撃を魔力をまとわせた木剣で簡単に切り払った。
「なっ、俺の技が……」
シンヤは絶対の自信があった技を簡単に防がれ動揺していたが、まだ心は折れてなかった。
「そ、そうだ! 俺にはあれがあった!」
シンヤはレジェンドワールドをプレイしていた時と同じように戦えばいいと考える。
「パワーブースト!」
シンヤは能力強化スキルであるパワーブーストで自分の攻撃を上げる。
「からの光竜剣!」
シンヤは再び高速の光の斬撃を放つ。その威力はパワーブーストを使ったことにより、先ほどとは比べ物にならないほど強く鋭い攻撃だった。
「ほっ!」
だが京也はその攻撃も簡単に切り払う。
「なっ、何で俺のスキルが効かないんだ……」
「加速!」
「えっ?」
京也も能力強化スキルの加速を発動する。そして一瞬でシンヤの視界から消えて背後に周り、シンヤのわき腹を狙って魔力をまとわせた木剣を振るう。
「ガハッ!」
京也の木剣の一振りがわき腹に命中し、シンヤは数メートル吹き飛ばされ地面に倒れた。
(打撃無効は持ってなかったか。それにレベル上げと能力強化が足りない感じだな)
京也はシンヤと戦ってそれがわかった。
「そんな……シンヤが簡単に負けるなんて……」
一方的に負けたシンヤの模擬戦を見てエリが動揺している。
「い、痛てぇ……」
「派手にやられたな。ほら、飲め」
倒れて起き上がれないシンヤに、ギルドマスターが上級ポーションを飲ませる。
「これでいいだろう。よし、次の試合だ」
「俺がやる」
訓練場に立てかけてある木剣を手に取ったゴウが京也の前に出る。
(この男は戦士タイプだろう。なら魔力勝負なら勝てるはず)
「よし、では模擬戦開始!」
「はあああああ!」
試合開始と共にゴウは全身から魔力を放出して魔法発動の準備をする。
(隙だらけだな。今、加速で接近して攻撃すればすぐ終わるだろう。いや、こいつは打撃無効を持ってて俺を誘ってるのかもしれない)
ゴウがあまりに隙だらけだったので、京也は深読みしてゴウの様子をうかがっている。
「ラストジャッジメント!」
ゴウはレジェンドワールドで最強の光魔法ラストジャッジメントを発動した。京也の頭上から巨大な光の柱が降り注ぎ、彼を飲み込む。
「あれは光系の最上級魔法!」
ラストジャッジメントはアンナも使えるので、彼女はゴウが使った魔法が何なのかすぐにわかった。
「よし! 勝った……いや、ちょっとやりすぎたか」
京也が光の柱に飲み込まれたのを見ていたゴウが勝利を確信する。だが、ラストジャッジメントの光が消えた時、その場に球状の魔法障壁に守られた無傷の京也が立っていた。
「バ、バカな! 最強の魔法が!」
京也はゴウが魔法を発動する瞬間、全身の回りに魔法障壁を展開して身を守ったのである。
「サンダーボルト!」
ゴウが動揺してる隙を狙って京也は雷系下級魔法を放つ。京也の手から放たれた雷がゴウに命中する。
「ギャアアアアア!」
ゴウは全身が感電し、地面に倒れ気絶した。
「おい、大丈夫か! ほら、上級ポーションだ」
気絶したゴウにギルドマスターが上級ポーションを全身にふりまく。
「う、う、う……」
「気が付いたか、ほら飲め!」
ギルドマスターは新しい上級ポーションを取り出しゴウに飲ませる。
「よし、これでいい」
ゴウが上級ポーションを飲み干したのを見て、ギルドマスターが一息つく。
「さて、次は……」
ギルドマスターはエリの方を見る。
「えっ、私!?」
エリはシンヤとゴウが一方的に負けたのを見て、すでに戦意を失っていた。
「わ、私は止めときます!」
「そうか。それが賢明だな」
エリは倒れているゴウのそばに行く。
「ゴウ君、大丈夫なの」
「だ、大丈夫なわけ、ないだろ。死ぬところ、だったんだぞ」
ゴウの怪我は上級ポーションで回復していたが、感電した時の恐怖で震えている。
「怪我は治ってるようね。それと」
エリはシンヤの倒れているところへ行く。
「くっ!」
シンヤはわき腹を木剣で殴られ骨が折れていたが、上級ポーションのおかげですでに骨折は治っていた。だがその時の痛みを思い出し震えている。
「シンヤ君、顔色が悪いみたいだけど」
「もう嫌だ。ダメージを受けることが、こんなにきついとは思ってなかった」
シンヤは全身に汗をかき、震えながら話している。
次回 エリス将軍からの緊急指名依頼 に続く




