董卓顔の俺氏。異世界転生特典を得る
「俺が異世界転生者だとして――、何かあるのか?」
「いえ何も? この世界に来てくれてありがとう。楽しんでくれているならそれでいいわ。私も頑張ったかいがあるというものよ」
「――なんだか魔王ベル。貴方が異世界転生者をこの世界に呼んだように聞こえるが」
「えぇ、私よ――」魔王ベルは頷いた。
「な、なんだと――」俺は驚愕に目を見開く。
「それは本当なの? 元の世界に帰ったりすることはできたりするの?」
急にソフィアの背後にいたアリスが魔王ベルに問いただす。
アリスにとっては元の世界に戻れることは『優先すべきこと』なのだろう。
魔王ベルは急なアリスの反応に目を丸くしながらも答える。
「帰れるわよ。でも転生条件は『死にかけること』だから。戻った瞬間に即死するけど、それで良い?」
「それは――」魔王ベルの答えにアリスは黙り込んだ。身に覚えがあるらしい。
俺も有名料理店から出た瞬間、いきなり轢かれてひき肉のように死んだという記憶がある。
元の世界に戻ることは難しそうだ。
「しかし、なぜ魔王がそんなことができるんだ?」
「それは――。私が昔、南部で人間界に攻めていたことは知っているでしょう?」
「あぁ、知っている。俺は北部で前線を張っていた」
「そのとき、神様が降りてきたのよ。この世界の主神たる赤巾さまね」
ん? なぜ魔王のもとに神が降りてくるのかはさっぱり分からん。
「これ以上人殺したら人類滅びちゃうからやめてねって――」
なるほど――そいうことか。
だが、それなら一思いに神様が魔王ベルを殺せばよかったのじゃないだろうか。
一応、主神なんだからそのくらいできるだろう。
主神も魔人を殺すのは忍びないかったのか――
「そこで私は『それじゃぁ、人の世界に侵略する以外の娯楽をくださーい』って赤巾さまに頼んだのよ」
おい、侵略の理由は娯楽なのかよ。
「赤巾さまは面白がって、異世界の本屋の書籍を立ち読みする権利をくれたわ」
立ち読みなのかよ。
そこは本屋の存続のためにも買ってあげようよ。
「そこで――、私は本を読んでいるうちに『乙女ノベル』という世界を知ったの」
おい、なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ――
「そこには魔術師が弟子にした女の子を拉致監禁したり、淫魔の娘が男の子を好きになったり、なんでもありの世界が広がっていたわ――。特に私が興味があったのは異世界転生ものね。いま一番売れているらしいわ」
この魔王、すっかり日本の文化に染まっているじゃねぇか。
「そこで私はこの世界でも異世界転生を楽しもうって、すっかり意気投合して友達になった赤巾さまにお話したら、『じゃぁ勇者召喚系は次元に穴が開くから、婚約破棄系にしましょう』ってなって――」
おい、主神よ! そこでそこで魔王と友達になってるんだよ。
同好の士なのか? そこでなぜ婚約破棄を選ぶんだよ。
まさか非リア充として、腐の道を進んでいるんじゃないだろうな。
「まさか、魔王ベルって腐なのか……。まさか主神も……」
「腐ですって……。腐、腐、腐……」
魔王ベルの雰囲気が変わる。地雷を踏んだらしい。
あ――
これは完全に腐ってやがる。
俺は話を変えることにした。
「えーっと。あのぉー。それは置いておいて、俺ら近くでモンスターとか狩りたいんだがいいのだろうか?」
「いいわよ。魔王ベルが許可します。というか、配下のモンスターが狩ったモンスターの素材とかならあげるから、しばらくお茶でも飲んでいきなさいよ」
だが回り込まれてしまった。
こんな形でモンスターの素材を受け取っていいのだろうか。
――金になるなら良いか。
俺は細かいことは気にしない男だった。
「やったぁ~。ベルおば――ベルさまありがとうぉ!」
ソフィアも喜んでいるようだしいいだろう。
とにかく、まずは早めに家を買わないとな。
「あ、『ざまぁ』展開がお望みなら魔力付与もしてチートなスキルとか与えるけどどう? 面白い世界を私に見せてよ」
それは願ってもないことだが、俺が婚約破棄されたのはもう10数年も前のことなんだよな……
一方でアリスの方は「はい」と頷いている。
これでアリスが異世界転生者ということもばれてしまうだろうが、たいしたことではないか――




