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旅立ち

そして、毒虫迷宮への旅立ちが、今まさに幕を開けようとしている。

「こんにちは。」


私が二文字を口にした瞬間、魔猿の仮面の下の呼吸がわずかに止まった。


目の前の少女の瞳は驚くほど澄んで輝き、その透き通った眼差しが私をしっかりと捉えている。昨日、魔猿の巣窟で彼女を救ったのが私だと、百パーセント確信しているのは明らかだ。


しくじった。


兜を外すべきではなかった。いや——そもそもこの店に来るべきではなかった。


だが一度足を踏み入れた以上、状況を制するしかない。


「あの……エンチャントをお望みですか?」彼女の声には無理な冷静さが滲むが、指先は無意識に袖の裾を強く握り締めていた。


知らないふりをするのか。


面白い。


私はマントの一角をめくり、紫晶龍盤をゆっくりと彼女の前の木のテーブルに置いた。長剣は深い菫色の光沢を放ち、金色の紋様が龍の如く刀身を這い、店内の微かな魔法の明かりの下、冷たい光輪をたゆたわせている。


「あっ!」彼女がついに声を上げ、少し声を張り上げた。「昨日の魔猿事件で私を救ってくれた方ですか?黒い泥で魔猿の攻撃を防ぎ、動きが異常に速かった……!」


ちくしょう。


三秒のカウントダウンが始まる。


私の脳は高速で回転する。彼女もプレイヤーだ。正体が露見すれば、天冠位の称号がもたらす厄介事によって私は自由を失い、今後プレイヤーの集落に姿を見せることさえままならなくなる。だが素直に否定すれば、かえって怪しまれる……


「そうだ、俺だ。」私は正直に認め、譲歩の余地のない真剣な口調で続けた。「だが、俺の素顔を公にしないでくれ。お互いのためだ。」


「でも今も覆面をしていますよ?」彼女は好奇心から手を伸ばし、仮面の粗い毛並みに触れようとしたが、途中で思いとどまった。「魔猿の形をしていますけど——もしかして昨日の魔猿の素材で作ったのですか?」


「魔猿の前足の皮で鞣したものだ。」私は少し身をかわして視線を逸らし、意図的に口調を冷やす。「靭性と隠蔽性に優れている。話はここまでにしよう、エンチャントを始めろ。」


「待ってください!」


彼女は慌てて一歩前に出て行く手を阻み、悪戯っぽい口調で言った。「秘密にしてほしいなら——」


私の手は瞬時に仮面上部の毛の奥に隠した短剣に伸びた。


冷たい金属の感触が私の殺意を一気に高める。最悪の手段だ——もし彼女が脅しに出るようなら、口封じするしかない。


短剣が半分ほど寒光を放った瞬間、彼女の続く言葉が耳に届いた。


「覆面を外してください!」


「え?」


私は一瞬呆然とし、短剣を収めた。


目の前の少女はうるうるとした瞳で私を見つめ、悪意は一切なく、純粋な好奇心と、わずかに隠れた期待だけが宿っていた。


「俺は普通の顔だ。」私は言い逃れようとする。「人混みに紛れればすぐ忘れられるような。見ないほうがいい。」


鼓動がなぜか速くなる。


天冠位の称号を得てから、人前で素顔をさらすことはなく、仮面の庇護に慣れきっていた。


「別にいいじゃないですか。」彼女はそっと首を振り、口角に淡い笑みを浮かべた。「命の恩人の本当の姿を覚えておきたいだけです。魔猿の覆面を恩人だと思い続けるわけにはいきません。それとも……頭蓋骨の顔をしているのですか?」


彼女の強い要請に、私は断る術がなかった。


深く息を吸い、ゆっくりと手を上げて仮面の留め具を外す。


仮面が外れると、ひんやりとした空気が頬をなでる。私は思わず視線を逸らし、耳の付け根が勝手に熱を帯びた。


不思議な感覚だ。


徐敏芊と接する時の穏やかな気分とは違う——この少女の前では、なぜか照れがこみ上げ、心の奥で何かが芽吹き始めるような。


「ほら、いいでしょ?」早口で言うと、私はすぐに仮面をかぶり直そうとした。


「待って!」


彼女の声には驚きが滲む。「一生忘れられないかもしれません。」


「いやいや、大げさだよ。」私は気まずさを覚える。


「いえいえ、あなたが謙虚すぎます!」彼女は慌てて手を振り、頬を赤らめ、声を小さくした。「ネットで超変わったVRゲーム実況者をフォローしているのですが、三連覇している方なのです。公式の宣伝に呼ばれても、いつも何かで顔を隠していて——特撮ヘルメットだったり、お面だったり、時には紙袋に穴を開けただけだったり、とても面白い方でした。」


彼女は一瞬間を置き、さらに声を潜めた。「あなたもその方みたいに、覆面を外すのが嫌いな方だと思っていました……でも、あなたのお顔、好きです。」


「あ……死にたい……」


私は顔を覆い、後悔に打ちひしがれる。


気まぐれで仮面を外すんじゃなかった。


だがふと考えると、彼女の性格は意外と憎めないと思った。


「意外とおしゃべりが得意なんだな。」私は言った。「俺は君もインドア派だと思っていた。」


「違いますよ!」彼女は慌てて手を振り、瞳を輝かせる。「好きな話題や趣味のことなら饒舌になるだけで、実は重度のオタクなんです——あなたと同類だと思います!」


「えっ!!!」


私は驚き、彼女を見つめた。


こんな場所で同類に出会えるなんて。


---


その後の半時間、二人は止まらずに語り合った。


ネットの変な実況者からマイナーゲームの攻略法、笑えるネット民の失敗談まで——話が尽きない。


夕暮れが店の窓から差し込み、床に長い影を落とした時、私は慌てて本題を思い出した。


エンチャントがまだだ。


「そうだ、エンチャントに来たんだよな?」彼女は頭を叩き、「すぐに連れて行きます!」


彼女に案内され、裏庭へと向かう。


玉石の敷かれた小道を抜けると、広々とした石造りの部屋が現れた。扉を開けた瞬間、私は眼前の光景に息を呑んだ。


床一面には細密な魔法紋様が刻まれ、巨大な六芒星魔法陣を形成している。紋様の隙間には細やかな魔晶が埋め込まれ、淡い青い光を放つ。魔法陣の真ん中には黒曜石で作られたエンチャント台が置かれ、天鏡のように滑らかな台面には、ルビーやサファイアなどの貴重な宝石が嵌め込まれ、魔法の明かりの下、煌びやかな光彩を放っていた。


「私はエンチャンターです。」彼女は誇らしげに顎を上げる。「この専用エンチャント室のために、一ヶ月間クエストをこなしました。この台は物件付属のもの——千年の黒曜石と百種の魔晶で作られているそうです。」


私は頷き、心の中で決意を固めた。


「紫晶龍盤の魔力刻印を完全に通じさせたい。」


言葉を発した瞬間、彼女の笑顔が凍りついた。


瞳は複雑な色を帯び、眉を少しひそめ、何かを思い巡らしているようだ。


「どうした?」私は彼女の異変に気づいた。


「何でもありません。」彼女はゆっくりと口を開き、重々しい口調で言った。「ただ、このエンチャントは難易度が極めて高いのです。魔力刻印を完全に開通させるには、膨大な魔力の支えと長時間の繊細な起動作業が必要で、少しのミスで武器が廃棄される可能性があります。」


話を聞き、私はむしろ確信を得た。


私の魔力知覚力は常人をはるかに超え、生まれ持った才能だ。さらにクローズドβテストで積んだ経験があれば——手助けできるかもしれない。


「なら俺が手伝う。」私は彼女を見て、確固たる口調で言った。「魔力刻印を直接感じ取れる力があるようだ。」


余計な説明はせず、手を伸ばして紫晶龍盤の刀身に軽く触れる。


瞬く間に、微かな魔力の波動が刀身から伝わってくる。


刀の内部に縦横無尽に張り巡らされた魔力刻印が、まるで眠れる龍たちのように鮮明に「見える」。この知覚力は生まれつきで、魔力の流れを呼吸のように自在に操れる。


先ほどの治癒魔法も、他人が一度使うのを見ただけで完全に再現できた。


徐敏芊の必殺技は専用武器がなければ発動できないが、その原理は俺の黒い泥と似ている——魔法の基本は魔法陣で、イメージと魔力の二重の支えが必要。この二つを俺は自在に使いこなしている。


豊かな想像力も大事だが、魔力の制御はむしろ才能によるものだ。


体内の魔力がスムーズに流れるには、複雑な魔力ネットワークが不可欠だ。人によってネットワークが単純すぎると魔力の流れが滞る。一方、魔力の総量は血液と密接に関係し——魔素は血液の中に宿る。このゲームの回復薬が赤や紫なのも当然だ。紫こそ魔素の色なのだ。


彼女は半信半疑で私を見つめ、最終的に頷き、紫晶龍盤を慎重にエンチャント台に置いた。


私は深く息を吸い、体内の魔力を刀身にゆっくりと注ぐ。


魔力が流れ込むと、刀身の金色の紋様が輝き、沈黙していた魔力刻印が次第に覚醒し、微かな唸り声を上げた。彼女はそれを見て、すぐにエンチャントペンを取り、専用の魔力インクに浸し、刀身に素早くルーンを描き始めた。


それぞれのルーンが異なる属性を宿している。


彼女の動作は精密で熟練しており、一筆一筆に適切な魔力が宿っている。ルーンが描かれるたび、光の筋となって刀身に溶け込む。


---


魔力刻印開通の作業は想像以上に長引いた。


私は絶え間なく魔力を放出し、刻印内の滞った魔力をスムーズに流れさせながら、彼女のルーン描写に合わせて魔力の強さと方向を調整し続ける。


時は刻一刻と過ぎていく。


部屋の中には魔力が流れる唸りと、エンチャントペンが刀身をなぞるカサカサとした音だけが響く。


汗が頬を伝い落ち、床の魔法紋様に滴ると瞬時に蒸発した。


十五分後、最後のルーンが刀身に溶け込んだ瞬間、紫晶龍盤がまばゆい紫光を放ち、やがて静まる。刀身の光沢はより穏やかで透き通るようになり、魔力の波動も滑らかで強大になった。


「はぁ——やっと終わりました。」


彼女はペンを置き、長く息を吐いた。額には細やかな汗が浮かび、顔色も少し蒼白になっている。「お疲れさまでした。魔力は残っていますか?」


「少し残っている。」私は手を引き、体内の魔力が大半消費された疲労を覚えながら言った。「だが、紫晶龍盤の魔力刻印には不純物がほとんどないことが分かった。」


「これは非常に稀なことです!」彼女は驚き、目を大きく開けて刀身をそっと撫でた。「普通、武器製造の過程で魔力刻印は傷ついたり不純物が混ざったりし、修復と開通に膨大な時間がかかります。でもこの紫晶龍盤の刻印はこれほど純粋——さすが伝説級の黒武です。」


---


エンチャント代を支払い、ふと彼女の両手を見て、私は一瞬呆然とした。


彼女の十本の指には指輪がはめられていた——大きな宝石が嵌め込まれた豪華なものから、魔法紋様が刻まれた実用的なものまで。どれも桁違いの価値を持ち、彼女が裕福な家柄であることがうかがえる。


「それでは失礼する。」私は紫晶龍盤を収め、立ち去ろうとした。「次の迷宮のある国へ向かうつもりだ。」


「あの……」


彼女が唐突に声を上げ、不安と期待に満ちた瞳で私を見つめた。「私を連れて行ってくれませんか?」


私は足を止めた。


なぜ?


脳が高速で回転し、警戒心が高まる。


彼女は何を狙っているのか。単に迷宮探検を共にしたいのか、私に救われた恩義からなのか、それとも先ほど素顔を見せたことで好意を抱いたのか。


「私もプレイヤーですよ。」彼女は慌てて早口で説明する。「お金も家もあり、ゆったりとした生活を送ることもできます。でも旅と迷宮探検にずっと憧れていました。あなたはとても強い——一緒に行ってもいいですか?」


彼女は哀れっぽい子猫のような視線を向ける。


彼女の姿を見て、私は疑念に包まれた。


知り合って間もないのに同行を申し出る——何か裏があるのか。それとも思春期の少女の一時的な好意なのか。


そんな考えは捨てよう。余計な面倒事に巻き込まれたくない。


「どうして返事をしてくれないの?」私がなかなか答えないのを見て、彼女の瞳には落胆が宿る。


「別に。」私は素直に言った。「慎重に考えているだけだ。」


「好きです。」


彼女の声は大きくはなかったが、雷鳴のように私の耳に響いた。


「えっ……待て!」私はわざと聞き逃したふりをする。「誰のことが好きだ?」


彼女の気持ちは分かっていたが、どう返事をすればいいか分からず、逃げてしまった。


彼女の顔は瞬時に真っ赤になり、耳まで紅潮する。深く息を吸い、大きな決意を固めたように顔を上げ、確固たる瞳で私を見つめ、大きな声で叫んだ。


「私!佐天千代!あなたのことが好きです!!!」


陽光が窓から差し込み、彼女の黒く艶やかな髪に柔らかな光を降り注ぐ。漆黒の双瞳は澄んで確固たる輝きを放ち、左目の下の小さなほくろが陽光の下で鮮やかに浮かぶ。


認めざるを得ない。彼女は確かに私の好みのタイプだ。


だが、好きという感情は外見だけで軽々しく決めるものではない。お互いをよく知り合う時間が必要で、本当に相性が合うか確かめなければならない。


「俺も君に好意を抱いている。」私は彼女の真剣な表情を見て、素直に言った。「だが、唐突な告白は、もっと長く付き合い、お互いをよく知ってから改めてしよう。」


佐天千代の表情は驚き、照れ、落胆、期待とめまぐるしく変わり、最終的に穏やかな笑みに落ち着いた。


「はい!賛成です!」彼女は力強く頷き、瞳に再び光が宿った。「あなたのことをよく知りますし、私のことも知ってもらいます!」


「俺が黒濯塵だと、最初から知っていたんだろ?」私は唐突に問いかけた。


彼女の言動の端々に違和感があった——私のことを知りすぎている。


佐天千代は一瞬呆然とし、すぐに悪戯っぽい笑みを浮かべた。「そうです!昨日の魔猿の巣窟で、あなたの気配と戦い方を覚えました。その後、プレイスタイルから、謎のVRゲーム実況者——天木様だと見抜きました。」


「天木でいい。」私は笑い、心の疑念が晴れる。「一箇所行こう。同行する友達がいる。」


---


私たちは雷葛の店へと向かった。


店主の雷葛はカウンターで帳簿をつけていた。私が入ると、すぐに帳簿を置いて笑った。「天木、来たか。旅立つ準備はできたか?」


「うん、冠陽市へ行く。」私は頷く。「クローズドβテストで見つけた迷宮——毒虫迷宮がある。希少な素材や魔法の巻物が眠っているという。」


「冠陽市か、遠いな。」雷葛は顎を撫でる。「よし、一日整理して、明日早朝に共に出発しよう。この店は息子の雷葛・トゥーンに任せる——彼も独り立ちする時だ。」


「徐敏芊を迎えに行かなければ。」私は言った。「それと、先ほどの城の修繕を建築業者に頼んでくれ。費用は俺が払う。」


「明日には出発するのに、今から修繕するのか?」雷葛は驚いた。


「うん、城の中に俺が必要なものがある。」私は頷き、城の状況を詳しく話した。「地下室は書斎の隠し扉の奥だ。そこの古文書から転送陣の魔法構造を習得した。魔鉱石の粉で転送陣を描けば、転送ポイントを固定でき、俺の転送石と連動する。その他の細かい用事はこの紙に書いておいた。」


私は細かく記載された紙を雷葛に渡し、城の修繕の注意点と転送陣の詳細を伝えた。


雷葛は紙を読み、頷いた。「任せろ。君の計画通りに手配する。ところで、隣の美しい少女は?」


「ただの普通の女友達だ。今のところは。」私は素直に答えた。


佐天千代はその言葉を聞き、満足げな笑みを浮かべ、こっそり私にピースサインを出した。


「お前、女の子にモテるな。」雷葛はからかうように笑った。


私は兜を外し、軽くあざける表情を浮かべ、身に着けていた鎧も脱いだ。


「これからはガル・スノーとして旅に出る。」私は言った。「黒濯塵という名は指名手配されているからな。」


商人風の服装に着替える——黒いシルクシャツに濃い色の長ズボン、腰には魔晶の嵌まったベルトを締め、地味でありながら品位を失わないスタイルに整える。


その後、雷葛と共に建築会社へ向かい、城の修繕を確定させ、急いで徐敏芊を迎えに行った。


---


雷葛の家で全員が集まった時、空気は一瞬微妙になった。


徐敏芊は佐天千代を見て、瞳に警戒の色が走る。佐天千代も負けじと見返す——空気に火花が散っているようだ。


「あなたは誰?」徐敏芊が先に口を開き、敵意を含んだ口調で問う。


彼女は赤い戦闘服を身にまとい、腰に専用武器を携え、瞳は刃のように鋭い。


「今のところ、天木様の普通の女友達であり、普通のエンチャンターです。」佐天千代は穏やかに笑いながらも、わずかな挑発を滲ませる。


「はぁ?!」徐敏芊は得意げに顎を上げる。「私と天木は命がけの仲だ!二回も助けてもらったんだから!」


「本当ですか?」佐天千代は眉を上げ、不服そうに言う。「でも天木様は、危険極まりない魔猿の巣窟で私の命を救ってくれましたよ。」


「二回!二回も助けてもらったの!」徐敏芊は声を大きくし、興奮して頬を赤らめる。


二人が口論になりそうになるのを見て、私は慌てて黒い泥兵を数体召喚し、二人を引き離した。


「もう、けんかしないで。」私は困り顔で言った。「もう夜だ。城は修繕が終わったので、そちらで休もう。明日早朝に出発だ。」


率直に言うと、このゲームの建築業界は発達している。


土系と木系の魔法のおかげで、建築業者たちは数時間で城を修繕し——寝室、台所、書斎などが完備され、新しい家具まで揃って、すぐに住める状態になっていた。


「ところで天木様。」佐天千代が唐突に好奇心から問う。「称号が『博識家』になっていますが、伝説の『天冠位』ではないのですか?」


「天木様ではなく、天木でいい。」私は笑って説明する。「称号は変更できるんだ。GMは外せないと言ったが、変更は禁止されていない。天冠位を『博識家』に変えただけ——目立たないようにするためだ。」


「さすが天木!」佐天千代は瞳を輝かせ、徐敏芊に挑発的に視線を送る。


その表情は、悪いことをして満足した子猫のようだ。


徐敏芊は怒りで顔を黒くし、佐天千代を睨んだ後、委屈そうに私を見つめる。


彼女が怒る理由は分かっているので、私は慌ててなだめる。「二人とも俺の大事な仲間だ。これからは仲良くして、いがみ合わないでくれ。」


佐天千代と徐敏芊はその言葉を聞き、頬を赤らめ、うつむいて黙った。


二人は十七歳の少女で、繊細で感受性の豊かな年頃だ。私は適切な距離を保ち、どちらも冷遇せず、贔屓せず接しなければならない。


---


私は二人を連れて城へと向かう。


月光が城の石壁に降り注ぎ、淡い銀色の光沢を放つ。この城に住んで一週間も経っていないのに、不思議な帰属感が湧いてくる。


明夕城はポーランドの首都として、夜は極めて静か——時折響く馬蹄音と虫の声が、都市に生気を与えている。


私のユニコーンは城の門前で待機していた。


真っ白な体に、額の一角の角が淡い金色を放つ。私の姿を見ると、興奮して蹄を蹴り、早く活躍したいと躍動しているようだ。


部屋を割り振った後、私は一人地下室へ向かった。


空気は少し湿っており、淡い埃のにおいが漂う。魔鉱石の粉を取り出し、古文書の記載通りに、床に複雑な転送陣を描く。


描き終わると、広間の彫像の下の隠し通路のことが思い浮かび、好奇心が湧く。


あの通路はどこへ通じているのだろう。


ペルシャ帝国はすでに滅亡したが、すべてが母と何らかの関係を持っているように思える。


母さん。


今、お元気ですか。


父さんと俺は、ずっと会いたいと思っています。


もう一度、会いたい。


---


一方、雲の上に隠れた神秘的な大広間では、十三人の様々な色のローブをまとった魔術師が集まり、会議を開いていた。


大広間の内装は豪華で古風で、壁には巨大な魔晶が嵌め込まれ、幽玄な光を放ち、それぞれの厳しい表情を照らし出している。


主席には深紅の宝石ローブをまとった魔術師が座っている。フードで顔は隠され、深紅のルビーのような瞳だけが覗き、強大で威厳に満ちた気配を放っている。


左には紫ローブの魔術師が座り、陰気でずる賢い瞳には計算が滲む。右には黒金ローブの魔術師がおり、全身に地獄から来た使者のような冷たい殺気が漂っている。


十三人の中には、白ローブの魔術師も一人いた。ずっとうつむき、口角にかすかな笑みを浮かべ、不思議な雰囲気を漂わせている。


「蟻の迷宮が攻略されたことで、世界中に迷宮が次々と出現し始めた。」紅ローブの魔術師の低く威厳に満ちた声が大広間に響き渡る。「現在確認されている迷宮の一つは明夕城の東方の国に存在し、その他は各国の隠れた場所に点在している。諸君にはプレイヤーに紛れてこれらの迷宮の位置を探し出すか、単独で行動し、迷宮の秘密を探査してもらう。」


「承知いたしました!」


残り十二人の魔術師が一斉に応え、整った声に畏怖が滲む。


「次に、重要な問題を議論する。」紅ローブの魔術師は視線を全員に向け、口調をさらに重くする。「第一特異点——黒濯塵について、諸君はどう思う?」


「彼は強い!」


紫ローブの魔術師が先に口を開き、信じられない驚きを滲ませる。「初期サンプル検査で彼のデータを見た時、衝撃を受けた。他のクローズドβテスターと比べ、あいつは人間とは思えない!人間のゲーム適応値が『完璧』でも言い表せないほどの異常さを見せた。」


一瞬間を置き、口調をさらに切実にする。「彼の実力は想像以上だ。早く殺さなけれ�ならない!次の段階まで成長されたら、我々に手の施しようがなくなる!」


「では、何か策はあるのか?」紅ローブの魔術師は淡々と問う。


「私に行かせてください!」


黒金ローブの魔術師が唐突に立ち上がり、全身の殺気が一気に噴き出す。「地図によると、彼はこの一日で多くの準備を整え、冠陽市の毒虫迷宮へ向かうつもりのようだ。私が彼の動向を探り——もし異変がある、または我々の計画の邪魔になると判断したら、即座に殲滅する!」


紅ローブの魔術師は一瞬熟考し、頷く。「許可する。闇耀のユリウス、行け。彼の異変を感知したらすぐに連絡せよ。必要なら禁忌魔法を使用しても構わない。」


「承知いたしました。」


ユリウスはわずかに身を屈める。言葉が落ちると同時に、その姿は黒い影となり、瞬時に大広間から消え去る——まるで最初から存在しなかったかのように。


白ローブの魔術師は顔を上げ、ユリウスが消えた方向を見つめ、口角の笑みを強める。


「自ら死にに行く愚か者。お前ごときが、天木に勝てるわけがない。」


声は小さいが、軽蔑と確信に満ち、まるでユリウスの末路を予見しているかのようだ。


大広間の他の魔術師は、白ローブの魔術師の異変に気づかず、迷宮と黒濯塵について議論を続け、それぞれの顔に重々しさと計算が浮かんでいる。


黒濯塵を標的とした陰謀が、静かに進行していた。


そして、毒虫迷宮への旅立ちが、今まさに幕を開けようとしている。

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