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TSしましたが、取り忘れてますよ?  作者: kero


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ゴブリンアイランド、熱狂のライブ!

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### 第一節 ゴブリンの街を歩く


翌朝。


俺たちは、王宮で朝食を済ませた後、王都の観光に出かけていた。


もちろん、昨日のような大げさな馬車ではない。


……と言いたいところだが、結局、護衛付きの馬車になってしまった。


「ステラ様の安全を考えれば、当然でございます!」


宰相がそう言って譲らなかったのだ。


まあ、王様の面子もあるだろうし、そこは仕方ない。


「それにしても、活気がある街だな」


馬車の窓から外を眺める。


昨日も見たが、朝の市場はさらに賑やかだった。


ゴブリンの商人たちが大声で呼び込みをしている。


「新鮮な魚だぞ!」


「南の島から届いた果物だ!」


「魔石を使った新型の調理器具だ! 今ならお買い得だぞ!」


……最後のは、ちょっと気になるな。


「宰相さん、あの魔道具は何ですか?」


「おお、あれでございますか。最近開発された魔石式の調理器具です。火加減を魔石で調整できるため、料理人たちに人気がございます」


「へえ。便利そうだな」


「ステラ様、興味がおありでしたら、後ほど工房をご案内いたしましょう」


「ぜひお願いします」


その横で、始祖ママが俺の顔を覗き込んだ。


「ステラ、何か欲しいものがあるの?」


「いや、特にないぞ」


「遠慮しなくていいのよ?」


「遠慮じゃない」


「ママが買ってあげるわ!」


「だから、そういう話じゃない!」


混沌神が笑いながら口を挟む。


「ステラちゃん、パパならこの国の魔道具工房を全部買い取ることもできるよ!」


「買い取るな!」


「ええっ?」


「普通に見学するだけでいいんだよ!」


エルミナ先生がため息をついた。


「あなたたち、ステラちゃんの買い物にまで神の力を持ち出さないの」


「はーい……」


「分かったわ……」


……本当に頼むぞ。


馬車を降り、市場を歩く。


ゴブリンたちは俺たちを見ると、最初は驚いた様子だった。


だが、すぐに気づいたらしい。


「もしかして、ステラ様では?」


「本物だ!」


「魔王領の歌姫だ!」


「うわああ! ステラ様!」


あっという間に人が集まり始めた。


宰相が慌てて護衛に指示を出す。


「皆様、どうか押し寄せないように! ステラ様は観光中でございます!」


「大丈夫だ。少しなら構わない」


俺は笑顔で手を振った。


すると、ゴブリンの子供が一人、恐る恐る近づいてきた。


「あ、あの……」


「ん?」


「ぼ、僕、ステラ様の歌を聞きました!」


「そうか。ありがとう」


「すごく格好良かったです!」


「ははっ。そう言ってもらえると嬉しいな」


子供は顔を真っ赤にして、持っていた小さな紙を差し出した。


「これ……サインをください!」


「いいぞ」


俺は紙にサインを書いた。


すると、その子の後ろにいた友達も次々にやってきた。


「僕も!」


「私も!」


「ぼくもお願いします!」


……あれ?


これ、サイン会になっていないか?


「ステラちゃん、大人気だね!」


混沌神が満面の笑みを浮かべる。


始祖ママは、子供たちの様子を見て目を潤ませていた。


「なんて可愛い子たちなの……。ステラのことをこんなに慕ってくれて……」


「ママ、泣かないで」


「だって……!」


エルミナ先生が、俺の横で苦笑する。


「子供たちに好かれるのは、いいことね」


「ああ。こういうのは嫌いじゃない」


その後も、俺たちは市場を見て回った。


ゴブリンたちの作る工芸品は、なかなか面白いものが多かった。


金属細工に木工品、魔石を使った装飾品。


特に、細かな細工を施した小さな人形には驚かされた。


「これ、全部手作りなのか?」


「はい! ゴブリン族は昔から手先が器用な者が多く、こうした細工物は得意なのです」


宰相が説明してくれる。


俺は一つ、小さな銀色の鳥の置物を手に取った。


翼の部分が細かく作られている。


「なかなかいいな」


「お気に召しましたか?」


「ああ。これを一つ買おう」


「ステラちゃん!」


始祖ママがすかさず反応する。


「ママが買ってあげるわ!」


「自分で買う!」


「ええっ!」


俺は代金を支払った。


こうして、自分で買った小さな銀の鳥をバッグにしまった。


……うん。


旅行らしくなってきた。


### 第二節 ライブ会場とゴブリンの音楽


昼過ぎ。


俺たちは、王都の中央広場へ向かった。


そこは想像していた以上に広い場所だった。


周囲には大きな建物が並び、中央には噴水がある。


祭りや式典にも使われるらしい。


「ここが今回の会場でございます」


宰相が説明した。


「普段は市場や祭りに使われておりますが、今回のライブでは周辺の道路も含めて会場として使用する予定です」


「なるほど。かなり広いな」


「はい。収容人数は、立ち見を含めて数万人を想定しております」


「それなら十分だ」


混沌神が、さっそく会場を眺め始めた。


「ふむ……音響の反響は悪くないね。だけど、もう少し調整した方がいいかな」


「パパ、勝手にいじるなよ?」


「大丈夫! 現地の魔道具技師さんと相談するから!」


「本当だな?」


「もちろん!」


エルミナ先生も頷いた。


「今回は現地の技術者に任せましょう。混沌神は助言だけにしておきなさい」


「分かったよ」


すると、ゴブリン王がやってきた。


「ステラ殿! 会場はいかがかな?」


「とても良い場所だと思います」


「そうか! それは良かった!」


王は嬉しそうに笑った。


「それと、ぜひ聞いていただきたいものがあるのだ」


「何でしょう?」


「我が国の音楽でございます!」


王が手を叩くと、広場の一角にゴブリンたちが集まった。


彼らは様々な楽器を持っている。


太鼓のような打楽器。


弦を張った楽器。


笛のような管楽器。


見慣れない形のものもあった。


「我が国には古くから伝わる音楽がありましてな。ぜひステラ殿にも聞いていただきたい」


「それは楽しみです」


演奏が始まった。


最初はゆったりとした旋律。


それに太鼓の音が加わり、次第にリズムが強くなる。


独特の音階だ。


海の波や風を表現しているのだろうか。


途中から複数の楽器が重なり、広場全体に音が広がった。


「……いい曲だな」


俺は素直に感心した。


「ありがとうございます!」


演奏を終えたゴブリンたちが、嬉しそうに頭を下げる。


「この曲は、我が国の船乗りたちが航海の際に歌っていたものです。無事に帰ってくることを願い、家族や仲間と一緒に歌うのです」


「なるほど」


「現在では祭りや祝い事でも演奏されております」


「そうか。いい文化だな」


俺は拍手を送った。


リリィも一緒になって拍手をしている。


「お姉ちゃん! 素敵な曲だったにゃ!」


「うん」


その時、混沌神が俺の肩を叩いた。


「ステラちゃん、せっかくだから一緒に演奏してみたら?」


「俺が?」


「そう! ゴブリンの音楽とステラちゃんの歌のコラボレーション!」


「……面白そうではあるな」


俺は演奏者たちを見た。


「一緒に演奏してもいいですか?」


「も、もちろんでございます!」


彼らは驚いた様子だったが、すぐに楽器を構え直した。


俺は歌う曲を考えた。


魔王領で披露した曲とは違う。


せっかくなら、この国の音楽に合わせてみたい。


演奏者たちと簡単に打ち合わせをする。


曲のテンポを確認し、リズムを合わせる。


そして――。


演奏が始まった。


最初はゴブリンたちの伝統的な旋律。


そこに俺の歌声が重なる。


言葉は異なるが、魔法による翻訳があるので問題はない。


不思議なことに、歌と楽器が自然に合わさっていった。


演奏者たちも楽しそうに音を重ねている。


最後の一音が消える。


一瞬の静寂。


そして、大きな拍手が広がった。


「おおおおお!」


「素晴らしい!」


「ステラ様!」


ゴブリン王も満面の笑みだった。


「これは素晴らしい! 我が国の音楽とステラ殿の歌が、これほど見事に調和するとは!」


「こちらこそ、楽しかったです」


「ぜひ、明日のライブでも我が国の音楽家たちと共演していただきたい!」


「いいですね。それなら、ぜひお願いします」


「おお!」


こうして、ライブにはゴブリンの伝統音楽も取り入れられることになった。


……うん。


これは、かなり楽しみになってきたぞ。


### 第三節 ゴブリンアイランド公式ライブ


そして翌日。


ゴブリンアイランド王国、王都中央広場。


広場は朝から大勢の人々で賑わっていた。


ゴブリンだけではない。


人間、エルフ、ドワーフなど、様々な種族が集まっている。


周辺の街からも人が訪れており、王都は祭りのような雰囲気になっていた。


ステージは、現地の職人たちと混沌神が協力して作り上げたものだ。


魔王領のものをそのまま持ち込むのではなく、ゴブリンアイランドの技術と文化を取り入れている。


音響魔道具も現地の技術者が操作できるよう調整されていた。


「ステラちゃん! 準備はできているよ!」


混沌神が嬉しそうに報告する。


「ありがとう。現地の技術者たちにもよろしく伝えておいてくれ」


「もちろん!」


始祖ママは、俺の衣装を確認していた。


「ステラ、今日の衣装も素敵よ!」


「そうか?」


「ええ! ママが選んだんだから!」


……それは関係ないと思うが。


今回も、俺はダークディーヴァの衣装を着ていた。


漆黒のゴシックロリータドレス。


血のように赤いリボン。


そして、マイクスタンドを兼ねた漆黒の大鎌。


もちろん、仕込み銃としての機能もある。


顔面安全装置とチョーカーの調整も済んでいる。


「お姉ちゃん、頑張ってにゃ!」


「頑張ってくださいませ!」


リリィ、ハイ・スライム、ルシアンも応援してくれている。


「おう。任せておけ」


俺は軽く手を振った。


その時、エルミナ先生が近づいてきた。


「ステラちゃん、無理はしないこと。疲れたら途中で休んでもいいのよ」


「分かっている」


「それと、あの二人は私が見ているから安心して」


俺は後ろを振り返った。


混沌神と始祖ママが、すでに泣きそうな顔で俺を見ている。


……何をするつもりだ。


「パパ、もう感動してきちゃった……」


「ママもよ……」


「まだ始まってもいないぞ!」


「だって……!」


「泣くな!」


エルミナ先生が二人を引き離した。


「ほら、開演時間よ。ステラちゃんを送り出してあげなさい」


「うん!」


「頑張ってね、ステラ!」


俺は一度深呼吸した。


そして、ステージへ向かう。


司会者の声が広場に響いた。


『ゴブリンアイランド王国の皆様! 本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます!』


『これより、我が国にお招きした特別な歌姫――ステラ様の公式歓迎ライブを開催いたします!』


大きな歓声が上がる。


『それでは、皆様! 盛大な拍手でお迎えください!』


ステージの照明が落ちた。


そして、重低音のイントロが鳴り響く。


俺は大鎌を肩に担ぎ、ステージの中央へ歩み出た。


「――ようこそ、ゴブリンアイランドの皆様!」


マイクに向かって声を響かせる。


「今日は、皆さんと一緒に楽しみたいと思います! 最後までよろしくお願いします!」


歓声が爆発した。


最初の曲は、魔王領でも披露したミリタリー系のアニソン。


重厚な音楽に合わせ、俺は自衛隊式のステップを踏む。


大鎌を振り、ターンを決め、ステージを縦横無尽に動き回る。


ゴブリンたちの反応は凄まじかった。


「おおおおお!」


「格好いいぞ!」


「ステラ様ぁぁぁ!」


子供たちはもちろん、大人たちも夢中になっている。


二曲目、三曲目と続き、会場の熱気はどんどん高まっていった。


そして、最後の曲の前。


俺は一度、マイクを下ろした。


「さて、皆さん。今日は、この国の音楽家の皆さんにも協力していただきました」


ステージの横から、ゴブリンの演奏者たちが登場する。


「この国には、素晴らしい音楽があります。昨日、俺も一緒に演奏させてもらいましたが、とても楽しかったです」


会場から拍手が起きた。


「そこで最後の曲は、ゴブリンアイランドの伝統音楽と、俺の歌を合わせた特別なものにしたいと思います!」


大歓声。


演奏者たちが楽器を構えた。


俺も大鎌をマイクスタンドに戻す。


「それでは、最後の一曲です!」


伝統的な旋律が流れ始めた。


昨日の演奏を基に、少しだけアレンジした曲だ。


ゆったりとした始まりから、次第に力強いリズムへと変わっていく。


俺の歌声が重なる。


ゴブリンの演奏者たちも、息を合わせて演奏する。


会場にいる人々が、自然と手拍子を始めた。


やがて、子供たちが歌い始める。


最初は小さな声だった。


しかし、周囲の大人たちも加わり、広場全体に歌声が広がっていく。


俺は思わず笑顔になった。


……これはいいな。


俺一人のライブではない。


この国の人たちと一緒に作り上げる音楽だ。


最後のサビに入る。


楽器の音が一斉に高まり、夜空に向かって魔法の光が打ち上がった。


漆黒と赤、そして黄金色の光が広がる。


曲が終わる。


一瞬の静寂。


次の瞬間。


「「「ステラ様ぁぁぁぁぁ!!!」」」


会場が揺れるほどの歓声が響き渡った。


ゴブリン王は、立ち上がって拍手をしている。


宰相も、目に涙を浮かべていた。


演奏者たちは互いに顔を見合わせ、嬉しそうに笑っている。


俺は大鎌を掲げ、深く頭を下げた。


「ありがとうございました!」


こうして、ゴブリンアイランドでの公式歓迎ライブは、大成功のうちに幕を閉じた。


### 第四節 次の国へ


ライブ終了後。


王宮では、再び盛大な歓迎会が開かれていた。


「ステラ殿! 本当に素晴らしい公演であった!」


ゴブリン王が、満面の笑みで俺の手を握る。


「我が国の歴史に残る一日となったぞ!」


「ありがとうございます。俺も楽しかったです」


「それだけではない! 明日から、我が国の音楽家たちが今回の演奏を研究し、新しい音楽を作りたいと言っておる!」


「それはいいですね」


「ぜひ、また訪れていただきたい!」


「機会があれば、また来ますよ」


王は何度も頷いた。


その横では、混沌神が嬉しそうに笑っている。


「ステラちゃん! 大成功だったね!」


「ああ。現地の音楽家たちとの共演は楽しかった」


「ママも感動したわ!」


「先生も、いい公演だったと思うわ」


エルミナ先生も満足そうだった。


その時、宰相が一枚の書類を持ってやってきた。


「ステラ様、こちらをお受け取りください」


「これは?」


「ゴブリンアイランド王国からの感謝状でございます。それと、今回の公演映像を国内で記録・保存する許可をいただきたいのですが」


「記録は構いません。ただし、販売や他国への配信については、事前に相談してください」


「承知いたしました!」


「それから、昨日の音響魔道具の資料も、技術者たちに渡しておいてください。今回のような文化交流に役立つなら、俺も協力します」


「ありがとうございます!」


宰相は深々と頭を下げた。


……うん。


こういう形で何かが残るなら、世界ツアーも悪くない。


その後、俺たちはゴブリン王国の名物料理を楽しみ、翌日の出発に備えることになった。


ところが。


「ステラちゃん!」


混沌神が、いつになく真剣な顔で俺を呼んだ。


「次の国はどこにしようか?」


「もう決まっているんじゃないのか?」


「うん! 八ヵ国の予定は決まっているよ!」


「なら、いちいち聞くな」


「でも、ステラちゃんが行きたいところがあったら、変更してもいいんだよ!」


始祖ママも頷く。


「そうよ。ステラの希望が一番大切なんだから」


「……そうか」


俺は少し考えた。


今回のゴブリンアイランドは、なかなか楽しかった。


食事も美味しかったし、街の人たちも親切だった。


何より、ゴブリンたちの音楽と一緒に歌えたことが嬉しかった。


「次の国も、面白いところだといいな」


「もちろん!」


「ママが保証するわ!」


エルミナ先生が苦笑した。


「保証はできないでしょう。国によって事情も文化も違うのだから」


「それもそうだね!」


「まあ、行ってみてのお楽しみだな」


俺は窓の外を眺めた。


遠くには、ゴブリンアイランドの青い海が広がっている。


世界八ヵ国を巡る旅。


最初の国は、思っていた以上に楽しい場所だった。


そして、これから訪れる国々には、どんな人たちが待っているのだろう。


……まあ、親たちの暴走がなければ、きっと楽しい旅行になるはずだ。


「ところで、ステラちゃん!」


「何だ?」


「次の国では、もっと大きな会場を用意しようと思うんだ!」


「必要ない!」


「ママは衣装を新調するわ!」


「今の衣装で十分だ!」


「私は、あなたたちが余計なことをしないように監視するわね」


「先生、頼む!」


こうして、世界八ヵ国を巡るツアーの第一歩は、大成功で終わった。


しかし、俺はまだ知らなかった。


今回のライブ映像が各国に広がり、次の訪問国では、ゴブリンアイランド以上の歓迎騒ぎが待ち受けていることを。


そして、親バカ三人と邪神たちの企画が、俺の想像をはるかに超える規模へと膨らんでいくことも。


……頼むから、普通の旅行にしてくれ。


第一訪問国・ゴブリンアイランド編、完。

この話の続きを読みたいですか?

需要が有るのか?書いていて不安です。

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