自衛官の逆襲
## 原作者の逆襲と、よろず先生の完全な精神的再起不能
フフ……ハハハハハ……!
よろず、お前の地獄は、インク樽の朗読プッシュアップだけじゃ終わらないからな……?
大聖堂の広場で、全校生徒と各国の王族たちの目の前で自分の書いた黒歴史を大声で音読させられ、半泣きでインク樽を持ち上げているよろずを、
俺――ステラ(中身30歳元自衛官)は、ベールのない素顔でドス黒い笑みを浮かべながら見下ろしていた。
中身が元自衛官の俺だ。一度乱れた部隊の規律を正すには、単なる肉体刑だけでは生ぬるい。
相手が最もダメージを負う『精神的・戦術的特効薬』を叩き込んでこそ、真の規律矯正というものだ。
よ、よろず先生……。
お前が一番プライドを持っていて、なおかつお前にとって最大の苦痛となるお仕置き(作戦)を、今ここで通達してあげるわ
俺は首の新型チョーカーを弄りながら、よろずの目の前にしゃがみ込んだ。
例の翻訳バグのせいで、
俺の冷酷な宣告は、
これ以上ないほど「超絶可愛いツンデレヒロイン」のセリフへと強制変換されてリビング……ならぬ広場に響き渡る。
――も、もうっ!
アンタが勝手に私の体(下半身バズーカ)をオカズにして、
変なホモ本(ガチBL)ばっかり大量生産するから……
だから、
今度はアンタに、
私が考えた【最高に真っ当でピュアな、普通の男女の王道ラブロマンス同人誌】を、一字一句間違えずに執筆してもらうんだからねっ!!
売れる売れないなんて関係ないわ!
アンタのその腐った脳みそ(BL脳)に、真っ当な男女のピュアな恋愛の尊さを、
骨の髄まで強制的に叩き込んであげるんだからッ!!
勘違いしないでよね、
アンタが完璧な王道小説を書き上げるまで、私は絶対に、永久に解放してあげないんだからねッ……!!///
(※顔を真っ赤にして涙目で上目遣いでよろずの鼻先に羽根ペンを突きつける)
ひゃいぃぃぃっ!?
む、無理です、無理ですわステラ様ァァァッ!!
よろず先生の顔から、インク樽の重さで青ざめていた時以上の、ガチの絶望の悲鳴が上がった。
私に……この同人界のカリスマ大手BL作家であるこの私に、
男と男の美しい絡みを一切排除した、
一般向けの普通の男女のラブロマンスを書けだなんて……!
それは作家としての私のソウル(魂)への最大の凌辱!
尊厳破壊!
脳が拒絶反応を起こして、
一行もペンが進みませんわぁぁぁっ!!
知るかァァァッ!!
――リリィ! スライム!
お前たち、そこへ直立不動で並べ!
「「はいにゃっ(だよ)!!」」
ついさっき時速50キロの猛スピードほふく前進(100キロダンベル付き)を完遂し、泥まみれで俺の足元に平伏していた、妹枠のリリィ(戦闘力:30)と性別のないスライムの二人が、恐怖で猫耳と液体ボディをピンと直立させて返事をした。
誰が本当の主人かを肉体に刻み込まれた二人は、すでに俺の忠実な前衛戦闘メイド(部下)と化していた。
お前たち二人に、
本日より新たな『重要任務』を命じる。
これよりよろずを宿舎の執筆部屋へ監禁し、
彼女が【一文字でも男同士のホモ描写や意味深な絡み】を書かないか、
24時間体制でガチの軍服姿のまま監視を続けろ!
規律を破ろうとしたら、即座にさっきの手榴弾と触手で『肉体的指導』を執行して構わん!
了解にゃっ!
ボクの驚異的な俊敏性で、よろず先輩のペンの先をミリ単位で監視して、ホモの『ホ』の字も見逃さないにゃ!
ボクも、よろず先輩が『ウケ』とか『攻め』とか呟いた瞬間に、触手で原稿用紙ごとホモの概念を中抜き(消滅)しちゃうよ!
素晴らしい働きだ、
二人とも!
――そして、よろず
俺はガタガタ震えるよろずの胸ぐらを黒傘でクイッと持ち上げた。
出来上がった真っ当な原稿は、この俺が『自衛隊の検閲官』として、俺の気が済むまで何度も何度も、1ページずつ厳しくチェックし、真っ当な男女のキュンキュンするラブロマンスになるまで、何百回でも最初から全て書き直させてやるからな……!
あああああ……!
あああああああ……ッッッ(精神の完全なる死亡)!!!
よろず先生の魂が、口からエメラルドグリーンの煙となって完全に天に召された。
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数日後。
学園の専用宿舎の地下の、薄暗い執筆部屋(監禁室)。
……うう、男の子が女の子の手を握って、普通に照れている……?
おかしいわ、
なぜここで男の子の顔が赤くなるのよ……?
ここは普通、隣の邪神様の逞しい大胸筋に押し付けられて、
下半身のバズーカを――(ピピッ!)
よろず先輩!
今、脳内で邪神様のホモ妄想をしたにゃ!
規律違反にゃっ!
プッシュアップ20回追加にゃ!!
ひ、ひえぇぇぇっ!
リリィちゃん、
ボクもう男の子同士の絡みの書き方が、分からなくなって……
部屋の隅では、ガチの漆黒軍服を着たリリィとスライムが、冷酷な鬼教官の目でよろずのペンの先を監視し、
よろずが少しでも腐女子の顔をした瞬間にホイッスルを鳴らしてお仕置きを執行していた。
そして、徹夜で涙を流しながら書き直され、提出された『真っ当な王道ラブロマンス小説』の原稿用紙の山。
それを、俺はベッドの上でカーテンの切れ端を頭に巻き、ベールのない素顔で、赤ペンを片手に1枚ずつ冷酷にチェック(検閲)していった。
よろず。
ここの4ページのシーン、男主人公がヒロインの髪に触れる瞬間の描写、
魔力の流れが不自然だ。
もっとこう、
普通の自衛隊の広報ポスターに載ってるような、爽やかでピュアな初恋の甘酸っぱさを前面に出せ。全ページやり直しだ
ステラ様ァァァッ!!
もうお許しください!
普通の男女のピュアな恋愛なんて、私の脳内のデータベースには一文字も存在しないのです!
これ以上ホモを排除されたら、
私の作家としてのアイデンティティが、
精神が、完全にドロドロに溶け去ってしまいますぅぅぅっ!!
よろず先生は、大聖堂の地面……ではなく部屋の床に額を擦り付け、
涙と鼻水をダラダラと流して半狂乱で号泣し、
ステラ(俺)に対する【絶対の恐怖】をその魂の遺伝子レベルにまでガッツリと刻み込まれるのだった。
かくして、かつて王宮を同人利権で牛耳り、
世界中に俺の恥ずかしい薄い本をバラ撒きやがった稀代のカリスマ天才作家・よろず先生は、原作者(俺)の放った「真っ当なラブロマンス執筆刑」という最大級の精神的兵糧攻めの前に、
白目を剥いて完全に廃人と化し、
しばらくの間、二度とペンを握ることができないほど【完全な精神的再起不能(完全シャットダウン)】に陥るのだった。
ひゃはははは!
傑作!
あのよろずちゃんが、ホモを奪われてただの普通の小説を書かされて泡を吹いて倒れるなんてさ!
ステラちゃん、本当にお仕置きの天才だねぇ!
ええ、本当に素晴らしいわ!
でも、よろず先生が再起不能になっちゃうと、次回の私たちの合同誌のラインが出せないわね。
よし、バカ邪神。私たちが神の力でよろず先生の脳をちょっと弄くって、強制的に復活させてあげましょうか?
いいねぇ、それ☆
お前ら、気絶してる原作者をネクロマンシー(神の力)で強制労働させるなぁぁぁぁっ!!
中身は30歳の元陸上自衛官。
裏切り者のメイドたちをガチ軍服の部下へと叩き直し、最大の天敵であったよろず先生を真っ当なラノベ執筆によって完全攻略(精神的勝利)した俺は、ようやく手に入れた平穏な室内の空気の中で、残されたウォッカを一口(今日二杯目!)ゴクリと煽り、これからの魔導学園での真の実力試験に向けて、ベールの下の真っ赤な瞳を不敵に、そして最高に上機嫌に輝かせるのだった。




