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TSしましたが、取り忘れてますよ?  作者: kero


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第一の戦場

第一の戦場・魔王領と、ガチ軍服メイドの鉄壁のセクハラ防衛線

世界を二分する二大陣営――魔王領と神聖国による熾烈極まる親権(同人利権)プレゼン合戦。

その果てに、

新型チョーカーの翻訳バグのせいで「両方の国に順番に付き合ってあげても、

いいんだからねっ……!

パパ、ママ、先生、大好き……♡

という破壊力150オーバーのツンデレおねだりを誤って全方位に放ってしまった俺――ステラ(中身30歳元自衛官)。

その結果、第一の目的地として、邪神と始祖ママのホームグラウンドである【魔王領】へと遠征することになった。


……ハハ。学園を離れて少しは平穏が訪れるかと思ったら、

戦況はさらに泥沼化してやがるな

アララット王国から国営国賓ルートを通り、魔王領の漆黒の巨城へと向かう豪華な馬車の中。

俺は頭のミニ王冠(顔面安全解放デバイス仕込み)をカチャカチャと弄りながら、深くため息を吐いた。

この一ヶ月におよぶ国境越えの移動中も、白の王子様姿の混沌神(パパ)と始祖ママ、そして『原初の脳筋魔女』ことエルミナ先生の三人は、馬車のキャビンの中で「次回の魔王領限定・合同誌」の構想を巡って、これ以上ないほど過保護な親バカトークを炸裂させ続けていたのだ。

俺の精神は、すでに大気圏突入時の摩擦熱並みにすり潰されている。

だが、魔王領の広大な城門をくぐり、黒い大理石で敷き詰められた中央広場へと馬車が滑り込んだ瞬間、俺を迎えたのは、かつてないほど「物々しい熱気」だった。


――お出迎えにゃ!

ステラお姉ちゃんに近づく不審な魔族どもは、

ボクが鉄の規律で一瞬で更地(排除)にするにゃッ!!

馬車のドアが開いたコンマ一秒後、真っ先に飛び出していったのは、あの王宮メイド合同演習で鍛え上げられた、妹枠のロリケットシー・リリィ(戦闘力:30)だった。

彼女は今や、フリフリの可愛いメイド服ではなく、防弾繊維と特殊装甲が仕込まれた【ガチの漆黒軍服(ミリタリー戦闘メイド仕様)】に身を包み、腰に自衛隊式の手榴弾をぶら下げて目を血走らせていた。


アハハ! お姉ちゃん専用の絶対立ち入り禁止区域だよ!

一歩でも近づく悪い魔族は、ボクの触手で分子レベルまで透過して消し消ししちゃうよ!

その隣では、性別のない絶対生物ハイ・スライムも、同じくガチの軍服メイド姿に変身し、指先を不気味な黒い魔力のオーラへと変幻自在に変化させて周囲を威嚇している。


お前ら、現地の魔族たちをただの一般市民(民間人)みたいに威嚇するんじゃねえェェェェッ!!

俺がベールのない素顔(※デバイスで作動中)を引きつらせて叫んだが、軍服姿の二人の鉄壁の防衛線(セクハラ気味の密着警護)は止まらない。

魔王領に住まう屈強な上位魔族や魔獣たちが、馬車から降りてきた「神と魔王のロイヤルハーフ」である俺の超絶的な美貌を一目拝もうと大行列を作って群がっていたのだが、

リリィとスライムが「近寄るにゃ!」「下がれ!」と、大鎌や触手を容赦なく振り回して物理的に捌き回っていた。

そのおかげで、かつてのように「顔を見せたら即プロポーズ大パニック」という神経質な事態は免れているのだが、絵面的には完全に『南米の猟犬部隊に守られた、物凄く物尽くしいお姫様』のホラー映像だった。

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さらに、この魔王領の受付・案内係(パシリ)として、異次元のフットワークの軽さで動き回っている男がいた。

ステラ様ァァァッ!!

ガザリア魔導学園から、

貴方様の荷物と無限ウォッカスキットルの予備(※現在没収中)を運んで参りました、

執事候補のルシアンにございます!!

さあ、

魔王領の有象無象ども、

ステラ様の高貴なる歩みを邪魔するな!!

目を血走らせた変態王子ルシアンが、

これまた無駄に高い魔導の能力をフルに活かし、

俺の『狂気の美貌』に耐えうる数少ない男の耐性持ち(ガチM執事)として、魔族たちの間をシュバババッ!と俊敏に動き回って道を切り開いていた。


クラスとの橋渡し役としての経験が、ここ魔王領でも遺憾なく発揮されている。

ある意味でめちゃくちゃ有能なのが本当に腹立たしい。


……ハハ、ルシアン。

お前、他国の皇子のプライドを完全に犬の首輪(貞操帯)と一緒にどこかへ投げ捨ててきたな……

俺がベールのない顔で遠い目をしていると、

この魔王領の最大の『元凶』が、城のバルコニーから高らかに声を上げた。


さあさあ!

魔王領の全魔族、およびお集まりのファンの皆様、お待たせいたしました!

本日より、ステラ様の魔王領公式訪問を記念いたしまして、国営ラインをフル駆動させた『よろず先生・魔王領ゲリラ新刊即売会』を盛大に開催いたします!!


よろずぅぅぅぅぅ!!

お前、いつの間に魔王領の国営印刷ラインまで乗っ取ってやがるんだァァァッ!?

城の中庭、そして広大な謁見の間の手前の廊下。

そこは今や、高貴な魔族の政庁などではなく、大量の長机がズラリと並べられ、何千人もの魔族の令嬢や女官たちが血眼になって列を作る【完全なる国営同人誌即売会会場】へと変貌を遂げていた。

よろず先生は、混沌神からリアルタイムで受信した「馬車の中でステラちゃんがチョーカーの翻訳バグのせいで『パパ大好き♡』って赤面してツンデレた瞬間の高画質ビジョン」を最速で実写トレース。

魔王領の最高出力の印刷魔導具をフル稼働させ、新刊『邪神パパと始祖ママ公認! 魔王領ハネムーンで赤面おねだりするステラちゃんのドM執事(ルシアン)調教編(※裏は安心のガチBL)』を秒速で大増産し、

その場で数万部を爆売れさせていたのだ。


キャァァァァァッ!! 見て、今回の魔王領限定ペーパー、ステラ様のゴスロリ軍服姿の太もものガーターベルトの描写が神がかっているわ!

さすがは王宮公認の大手サークル……! 混沌神様と始祖様の合同出資のおかげで、紙質まで最高級の魔導紙だわ! 早く買わないと売り切れちゃう!!

魔族の令嬢たちが悲鳴を上げて札束や魔鉱石をよろずのブースへ叩きつけている。


……終わった。

俺の社会的抹殺は、辺境のダンジョンを越え、魔導学園を越え、ついにこの世界の半分を統べる『魔王領』の公式国家事業として、完全完璧にコンプリートされたんだ……

俺は、頭の王冠(デバイス)を抑えながら、

本日一回目となる完璧な【宇宙猫(スペースキャット)】の顔になり、脳内の全思考が完全に停止してその場に崩れ落ちそうになった。


ひゃはははは! 見てごらんよステラちゃん!

魔王領の魔族たちも、みんな君のツンデレ新刊に大喜びだよ!

よし、この素晴らしい売上を記念して、今夜は魔王領の主(魔王)も交えて、実物大ハイブリッドお人形の『魔族仕様(角としっぽ付き)』の新作開発会議を開いちゃおうじゃないか☆

プロデューサー風のスーツを着た混沌神が、大量の魔貨を数えながら大爆笑している。


ええ、大賛成よバカ邪神! 我が魔王領の全財産を投じて、

ステラの尊い人形を大陸中にさらに輸出してあげるわ!

ほら、ステラ、ママのためにさっきの

『別にアンタのためじゃないんだからねっ!』をもう一回言って頂戴!

始祖ママが、爆買いした新刊を抱きしめながら目を血走らせて詰め寄ってくる。


お前ら、他国の国営印刷ラインを私物化して変なホモ本を爆売れさせるなぁぁぁぁっ!!

あと、そのキモい新刊を今すぐ分子レベルで燃やし尽くせェェェェッ!!

俺の怒声のツッコミ

(※口から出ると『もうっ! パパもママも意地悪ばっかり……大嫌いぃっ……!///』になる)が響き渡り、

周囲の魔族たちが「ステラ様、なんて可愛いんだ……」と涙を流してひざまずく中、中身おっさんの吸血鬼魔法少女(ロベルタ仕様)の、世界の頂点を完全に同人の渦で支配した【第四部・二大国家訪問編、魔王領の洗礼回】が、これ以上ないほど賑やかに、そして最悪のカオスと共に幕を開けるのだった。

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