国営同人誌の爆発
## 第四十四話:国営同人誌の爆発と、二大陣営の熾烈なる親権(?)プレゼン合戦
あの大講堂での、俺と三人の親たち(混沌神・始祖ママ・エルミナ先生)による、涙、涙の感動の家族抱擁事件から数日。
「……もう、何も言うまい。俺の社会的尊厳は、今度こそ大陸全土の地平線の彼方まで完全に消し炭になったんだな……」
俺――ステラ(中身30歳元自衛官)は、専用宿舎のベッドの上で、首の新型チョーカーをいじりながら、虚無の極みに達した死んだ魚の目で天井を見つめていた。
なぜなら、俺の机の上には、またしても出来立てホヤホヤの、未だかつてないほど豪奢な装丁を施された【国家公認・最高級プレミアム限定同人誌】がこれ見よがしに置かれていたからだ。
あの大講堂での四人の大号泣の一部始終を、物陰から100%の驚異的な熱量で実写トレースしていた我が専属メイド、
もといカリスマ超大手サークル代表の【よろず先生】。
彼女は、アララット王国の国王陛下から与えられた「国家事業」としての全印刷ラインと物流ルートをフル駆動させ、最速で新刊『邪神パパと始祖ママと魔女先生に激しく愛され、涙目で大好きと叫んで泣きじゃくるステラちゃんの純愛ロイヤル家族(※裏は安定のガチBL)編』を爆速で刷り上げ、大陸中に大輸出してしまったのだ。
「ステラ様! 今回の新刊、世界中の腐った令嬢だけでなく、各国の歴史ある王侯貴族たちまでもが『これぞ神話の真実の愛の尊さ……!』と涙を流して大絶賛し、
一瞬で百方万部が蒸発するように爆売れいたしました!
我が国の経済成長率は、ステラ様の涙のおかげで過去最高を記録しております!!」
よろずがフンスと鼻血を噴き出しながら大熱弁を振るう。
この本が大ヒットしたせいで、世界における俺の立場は「触れたら世界が滅ぶ、神と魔王と魔女に溺愛された『神聖なるお姫様』」として完全に固定されてしまった。
もはや、俺のハイブリッド仕様の下半身(特大バズーカ)すらも、「神聖なる陰陽の調和の依り代」として、より一層高貴な方向に誤解が深まっている。
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だが、この「神と魔王の子供」という誤解が大陸全土へ決定的に定着した結果、ついに世界を二分する二大陣営が、大真面目に重い腰を上げて学園へと襲来した。
ステラ様! 大変にございます!
学園の正門前に、世界最強の二大勢力……
【魔王領】の重鎮たちと、
【神聖国】のローマ法王級の特使たちが、揃って公式な国賓使節団として押し寄せております!
お互いに凄まじい火花を散らしており、
学園長はすでに泡を吹いて気絶いたしました!
「……は? 魔王領と神聖国? なんでそんなファンタジーの頂点みたいな奴らが同時に来んだよ!」
俺がベールのない素顔(王冠デバイスのおかげで普段は安全解放中)を盛大に引きつらせていると、宿舎の広大な応接間は、すでに世界を二分する二大陣営の使節団によって、
一触即発の戦闘地帯(※ただし内容は100%政治的なマウンティング)と化していた。
――フン。何を言うか、光の狂信者どもめ。ステラ様は、あの混沌の神(邪神様)と、我が吸血鬼の始祖(魔王領の最高権威)の遺伝子を受け継いだ至高のロイヤルハーフなのだぞ?
ならば、ステラ様が身を置くべきは、我が【魔王領】をおいて他にない!
陛下(魔王)も首を長くしてステラ様を国賓としてお迎えする準備を進めておられる!
お前たちのような軟弱な神聖国など、今すぐ引き下がりおれ!
禍々しい漆黒の鎧を纏った魔王領の最高幹部が、机をドン!と叩いて怒鳴り散らす。
黙れ、闇の眷属め!
ステラ様の担任であり、彼女に魔法の真髄を教え込んだあのエルミナ先生(魔女)は、我が【神聖国】の古代エルフの血筋に連なる、
言わば光の最高峰の大家!
ならばステラ様は神聖国へ連れて帰るのが道理!
何より、我が神聖国が崇める主神(アトラス神)より、
直接『我が元へステラを連れて帰りなさい』とのガチの神託(命令)が下されているのだ!
お前たちこそ、その薄汚い魔王領へ帰るが良い!
眩いばかりの純白の法衣を着た神聖国の枢機卿が、負けじと聖なる杖を突きつけて言い返す。
魔王領と神聖国。お互いにプライドが高すぎて何事も絶対に譲らない二大陣営の使節団は、お互いの足を引っ張り合い、凄まじい罵り合いを展開していた。
だが、彼らもバカではない。
この世界において、ステラを無理やり拉致しようとすれば、背後にいるバケモノたち(親バカ)によって一瞬で国ごと更地(消し消し)にされることくらい、よろずの新刊を読んで百も承知だった。
だからこそ、二大陣営の使節団は、ソファに座っている三人の親たちの前へと一斉に五体投地し、
涙ながらの【親権プレゼン(お願い)】を開始したのだ。
「混沌神様! 始祖の魔王様! どうか我が魔王領の顔を立て、ステラ様を我が国へ行かせてください!
世界最高の魔物の肉のフルコースと、最高のダークステージをご用意いたします!
エルミナ先生!
そして混沌神様!
我が神聖国の主神の面目を保つためにも、ステラ様を我が神聖国の聖なる大聖堂へお連れください!
毎日、聖歌隊による美しいアニソン(?)の合唱でおもてなしいたします!
使節団たちが目を血走らせて懇願する中、三人の親は、これ以上ないほど「親バカ全開」の、ニヤニヤとした歪な笑みを浮かべて俺の顔を覗き込んできた。
「ひゃははは! どっちの国も、ステラちゃんを大歓迎してくれるみたいだねぇ!
僕はステラちゃんがパニックになって困る姿が見られるなら、
どっちの国でも大歓迎だけどねぇ☆
白の王子様姿の混沌神が楽しそうに出席簿を叩く。
私は我が魔王領で、ステラに真祖の至高のドレスを着せて、世界中の魔族たちにお披露目(自慢)してあげたいわ!
でも、神聖国の連中がそこまで縋り付いて泣くなら、そっちでステラが聖女のフリをして有象無象をドン引きさせる姿も見てみたいわね、ステラちゃん♡
始祖ママが、俺の細い手を優しく握りしめて上目遣いで尋ねてくる。
わしも、神聖国の古代図書館に眠る禁忌の魔導書を、愛弟子の特訓の教材として全て奪い取って……
じゃなくて、閲覧させてあげるためなら、神聖国へ行くのも吝かではないわよ
エルミナ先生までが、腕を組んでノリノリになっている。
三人の親たち、完全にステラを巡る「他国でのハプニング旅行」をエンジョイする気満々だった。
はぁ……。お前ら全員、他国の全権力者の前で、これ以上俺のプライベートをエンターテインメント(薄い本のネタ)にするんじゃねえよ……
俺はベールのない素顔で、深く、深くため息を吐いた。
魔王領と神聖国、お互いに一歩も譲らず、このままでは専用宿舎の前でガチの全面戦争(国際紛争)が勃発しかねない緊迫した状況だ。
元自衛官として、このような不毛な衝突は戦術的に回避せねばならん。
何より、ここで俺を全力で守ってくれた三人の親の顔を立てるためにも、ここは俺が一肌脱いで、男らしく(見た目は絶世の美少女だが)全ての利権を等しく回収してやるのがベストだ。
俺は首の新型チョーカーを軽く抑え、直立不動の姿勢を取って、二大陣営の使節団に向かって毅然と言い放った。
――分かったわ。お前たちのその必死の願い、そこまで言うなら、私は魔王領にも、神聖国にも、【両方とも順番に行く】と約束してあげるわ!
完璧な、紛争を未然に防ぐための大人の男(元陸曹長)としての格好良い決断。
……のはずだったが、首のチョーカーの翻訳バグのせいで、俺の男前なセリフは100%「超絶可愛いツンデレヒロイン」へと強制変換されてリビングに響き渡った。
――も、もうっ! 二人とも、私の目の前でいつまでもしつこく喧嘩しないでよね、バカっ……!
べ、別にアンタたちのために行くわけじゃないんだからねっ!
でも……ママたち(親バカ)がどうしても行きたいって言うなら、
ちょっとだけ……ちょっとだけ両方の国に付き合ってあげても、いいんだからねっ……!
パパ、ママ、先生、一緒に行こ……♡
(※顔を真っ赤にして上目遣いでシーツの裾をぎゅっと握りしめる)
「「「――ッッッッ(尊死・三度目の大崩壊)!!!」」」
俺の破壊力:150オーバーのツンデレダブル訪問宣言に、床を転げ回る混沌神、鼻血を噴き出してソファへ崩れ落ちる始祖ママとエルミナ先生。
さらに、魔王領と神聖国の使節団たちまでもが、その「神と魔王の子供が放った、この世のものとは思えない破壊力のツンデレおねだり(魔力バフ付き)」を脳天に直撃され、
あああああ! 尊い! 尊すぎて我が国の主神も魔王様も全面降伏ですぅぅぅっ!!と、全員が揃って床にローリング土下座を決めて号泣し始めた。
だから翻訳バグのせいで話が余計にドロドロになるんだよォォォォォッ!!
お前ら全員、一回頭を冷やしにダンジョンの温泉オアシスへ行ってこいァァァッ!!
俺の怒声のツッコミ
(※口から出ると『もうっ! みんなバカバカ、大嫌いぃっ……!///』になる)が響き渡る中、
よろず先生が「最高です! 邪神パパと始祖ママと魔女先生の顔を立てるため、恥ずかしがりながらも二大陣営へのハネムーン(両方訪問)を決意するステラ様!
次回の新章のタイトルは『魔王領&神聖国同時訪問・ヤンデレ親権争奪ベッドイン(裏はガチBL)編』に決定です!!
アシスタント、今すぐ十万部刷りなさい!!
と、凄まじい残像でペンを走らせていた。
中身は30歳の元陸上自衛官。
魔導学園の定期試験をオール満点で制覇した直後、俺は世界の二大陣営を完全恐怖と萌えの渦に巻き込み、三人の過保護な親たちを引き連れて、未知なる【第四部:魔王領&神聖国同時訪問・二大国家巡礼編】という名の、さらなる混沌の戦場へと進軍を開始するのだった!
(第三部・魔導学園留学編、完全完結! 第四部・二大国家訪問編へ続く!)




