魔法少女ダークバージョン
「ステラ様! 僕は貴方様の永遠の忠犬(執事候補)として、この学園へ転入して参りましたぁぁぁ!」
放課後の殲滅演習(A級3組……ならぬSクラス全員ワンパンKO)から数日後。
教室のドアを豪快に開けて入ってきたのは、あのガザリア帝国の第一皇子、【変態王子・ルシアン】だった。
相変わらず目の血走ったルシアンだが、悔しいことに頭脳と魔導の能力だけは無駄に高く、なんと俺――ステラ(中身30歳元自衛官)と同じ【特別Sクラス】に実力で転入してきたのだ。
だが、ここで予想外の事態が起きる。
偶然俺が書類のサインのために俺がベールを少し持ち上げた瞬間、ルシアンは俺の『狂気の美貌(素顔)』を至近距離でまともに凝視してしまったのだ。
ひ、ひぃぃ……! 息を呑むほどの超絶美少女……!
だけど、薄い本の通りに下半身には立派なバズーカが……!
ああ、僕の脳が、魂が、別の意味で完全に覚醒していくぅぅぅっ!!
ルシアンは鼻血を噴き出しながらも、神の加護と実力派の精神力(変態の執念)によって、奇跡的に魅了の狂気へ陥るのをパスし、俺の素顔を見ても大丈夫な数少ない男の耐性持ちであることが判明した。
それ以来、ルシアンは「この世界の有象無象に、ステラ様の超絶的な美しさとハイブリッドな気高さを知ってもらうのが僕の使命!」と勝手に燃え上がり、クラスの有象無象たちとの「橋渡し役(パシリ兼執事候補)」として、異常なフットワークの軽さで俺の周囲を立ち回るようになったのだった。本当にタチの悪いガチ勢が身近に増えてしまった。
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さらに、あの公開決闘の後から、俺の学園生活はますます異常なものへと加速していた。
「お姉ちゃん、今日のノートはボクが代わりに取るにゃ!」
「ステラお姉様、お喉が渇きましたか? 私が今すぐ特性のリキッドドリンクに変身してお口に飛び込みましょうか?」
お世話係の変変自在のスライムと、今回の遠征でお姉ちゃん命のガチ勢になったアリスの妹・リリィ(妹枠)の二人が、教室だろうが廊下だろうが場所を弁えず、甲斐甲斐しく(セクハラ気味に)俺に付き従うようになったのだ。
だが、あの全校生徒の前での公開決闘の後、ステラ本人に直接挑むのは無理だと悟った、他クラスの調子に乗った上級生グループがいた。彼らは綿密に計画を練り、ステラが用事などで一人になる瞬間ではなく、別の標的を狙うことにした。
おい、あの特権階級のベール女の周りにいる、あの弱そうなメイド(スライム)と、小柄な獣人の子供を捕まえろ! 隙だらけだぞ! ステラに人質として脅してやる!
俺が一時的に離れた隙を狙い、上級生グループは物陰で待ち伏せし、一斉に武器を構えてスライムとリリィの二人を包囲して襲いかかった。……のだが。
「――作戦名『害虫駆除』、これより突入するにゃっ!!」
「アハハ! お姉ちゃんを困らせようとする悪い奴らは、ボクの触手で骨ごとバキバキにしちゃうよ!」
ことごとく、一瞬にして最凶の戦闘モードへ移行したリリィとスライムによって、秒速で返り討ち(お肉の塊に変形)にされた。
そりゃそうだ。スライムは物理・魔法無効の絶対生物(邪神の絶対隷属セキュリティ付き)だし、妹枠のリリィは神の加護と始祖の祝福で【戦闘力:30】の実力派へとスペックが爆上がりしているのだから。
メイドや妹たちの実力が学園中に知れ渡るにつれ、全校生徒は完全に恐怖のどん底に叩き落とされ、ますますステラを侮る者、いや、一歩近寄る者すら誰もいなくなったのだった。
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そんなある日、専用宿舎のリビングにて、あの『親バカ同盟』のトップである始祖のお母様(始祖ママ)が、目をキラキラと輝かせながら俺の両手を握りしめてきた。
ステラ! ママ、お願いがあるの! あの放課後に見た、黒ゴスロリ大鎌仕様の
【魔法少女ダークバージョン】が尊すぎて、毎日生きていくのが辛いのよ!
だから今すぐ、あの衣装に着替えて『プライベートモデル撮影会』を開催させて頂戴!!
「ええっ!? 嫌ですよ、なんで俺がそんな恥ずかしい格好で――」
「頼むわステラちゃん☆ 僕も高画質なビジョンを確保しておきたいんだ♪」
白の王子様姿の混沌神までノリノリで参戦し、俺の拒否権など一瞬でパッシブ無効化。
結局、宿舎の特設スタジオにて、俺の素顔に完璧な耐性を持つ者だけ(エルミナ先生、アリス、リリィ、スライム、そして執事候補として招かれた変態王子ルシアン
を集めた、極秘の『ステラ様ダーク撮影会』が開催されるハメになった。
「わたしはっ、せかいいち可愛い魔法少女ですっ……☆(10回目)」
カチャリ、と
音がして、
俺はあの黒リボンにまみれた漆黒のゴスロリドレス(ダークバージョン)へと変身させられた。
手には死神の大鎌。観客席のルシアンは「あああ! 尊い! 尊すぎて天に召されるぅぅぅ!」と床に五体投地してのたうち回っている。
最初は恥ずかしがっていた俺だったが、あまりの親たちの注文の多さと、ルシアンの「もっとステラ様の気高き声を聴きたい!」というキモい煽りに、ついに脳のヒューズがぶっ飛んで、やけくそ(パニック)のスイッチが入ってしまった。
「あああ、もう知るか! どうせ耐性持ちしかいないんだろ! だったら自衛隊の駐屯地祭りの余興で鍛えた、全力の『歌って踊るステージ』を叩き込んでやるァァァッ!!」
俺は大鎌をマイクスタンド代わりにぶん回すと、魔法少女の【魔法少女適正:極大】の魔力を全開にし、ダークなピンクのハートエフェクトを中庭いっぱいに撒き散らしながら、爆音の魔力音波に乗せてアニソン(前世のミリタリー系アニメの曲)を全力で歌い、キレッキレの自衛隊式ステップで踊り狂った。
漆黒のハートの爆炎が背後で激しく炸裂し、ピンクの閃光が乱舞する。
ゴスロリメイド服のフリルを激しく翻しながら、俺は力200のゴリラ馬力と、魔法少女の【速:60】の神速のキレを融合させ、まるで戦場を縦横無尽に駆ける南米の猟犬のごとき圧倒的な馬力と可憐さで、床を踏み鳴らし、大鎌をエレガントに振り回してステップを刻んだ。
魔力によって増幅された歌声は、空間そのものを震わせ、聴く者の魂に直接爆音で響き渡る。
「マジカル・ダーク・デストロイ!! チェストォォォォォッ!!」
サビの瞬間に、俺が一段の踊り(鋭いターン)を加えながら大鎌を大きく一閃すると、ステージ全体から無駄にド派手でゴージャスな、漆黒のハート型究極魔法の残光がキラキラときらめき、スタジオの空間を眩いラメの光で埋め尽くした。
その、異次元のクオリティを誇るダークステージが終わり、俺がハァハァと息を切らしながら大鎌を引いた時。
その場に招待されていた観客たちの間で、凄まじい衝撃が走っていた。
「素晴らしいわ、ステラちゃん……! ただの歌と踊りの中に、これほどまでに洗練された魔力の循環と、戦士としての完璧な体幹のブレのなさを融合させるなんて……。
教育者としても、魔女としても、今までに見たことがない完璧な『戦記の舞台』だわ! 合格、文句なしの100点よ!」
観客席のエルフのお婆さん(全盛期ツルペタ姿)のエルミナ先生が、いつになく興奮した様子で立ち上がり、目を輝かせて大絶賛の拍手を送った。
にゃ、にゃにゃんだってー!? お姉ちゃん、カッコよすぎるにゃ!! ボク、お姉ちゃんの歌って踊る姿に魂を奪われたにゃ! 一生のお世話係として、ボクが毎日ステージの衣装をお洗濯してあげるにゃ!!
妹枠のリリィが、猫耳をピンと直立させて大興奮で跳ね回り、
「お姉ちゃん、最高! ボク、お姉ちゃんがターンする時のスカートの広がり方に合わせて、背景のエフェクトに完璧に変身できてたよね!?」と、スライムもプルプルと身体を揺らして歓喜の声を上げる。
この一件は、その場にいた耐性持ちの面々の間で、生涯語り継がれる伝説の【神回】となったのだった。
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「……はぁ。本当に、なんで僕たちのステラちゃんはこんなに世界一可愛いんだろうねぇ」
撮影会の夜。混沌神は、撮影されたビジョンを愛おしそうに眺めながら、ぽつりと呟いた。
「ええ、本当よ、バカ邪神。これほどのステラの最高の姿(素顔や歌って踊るステージ)を、あの学園の有象無象の人間どもに見せてあげられないなんて、ママとして、本当に残念で悔しくて仕方がないわ」
始祖ママも、ベッドの上で悔しそうに枕を叩いた。
「そうね。ステラちゃんの【魔法少女適正:極大】の魔力と、吸血鬼の始祖の美貌が融合しているせいで、耐性のない人間は一瞬で脳が魅了されてパニックを起こしてしまう……。教育者としても、これは不便極まりないわ」
エルミナ先生も、真面目な顔で腕を組んで頷いた。
混沌神、始祖ママ、あるいはエルミナ先生。
ここに、ステラを我が子として溺愛する【三人のヤンデレなママ(パパ含む)】たちの間で、新たなる、そして最も恐ろしい共同研究の火蓋が切って落とされた。
「よし、決まりだ! 始祖のお婆さんも、脳筋エルフ先生も、僕の神の技術に知恵を貸しなよ」
混沌神が糸目を妖しく光らせ、邪悪な笑みを浮かべる。
「ステラちゃんの最高に美しい素顔を、周囲の人間にパニック(魅了)を起こさせることなく、安全に世界に晒し出すための『広域認識阻害・魔導デバイス』を、僕たち三人で共同研究して開発しちゃおうじゃないか☆」
「ええ、大賛成よ! それができれば、ステラの美しさを大陸中に国家事業として見せつけて、みんなを私たちの新刊(合同誌)のファンにできるわね!」
「わしも、愛弟子の本当の顔で学園の授業を行うためなら、喜んで魔力を貸してあげるわ」
三人の最強の親たちによる、ステラの「顔面安全解放プロトタイプ」の開発会議。
何も知らないステラ(長谷川聡)は、アイテムボックスの奥に隠したウォッカをリリィに再び没収され、「明日からの授業、あの変態王子ルシアンが隣の席なのマジで勘弁してほしいんだけど……(泣)」と、自分の顔面が世界のシステムごと魔改造されようとしている恐怖にも気づかず、ただただ明日の学園生活へのストレスに頭を抱えるのだった。




