国の喧嘩に親が出るとは大人げない
国家事業としてアララット王国が総力を挙げて輸出し始めた、あの『よろず先生特製・実物大ハイブリッドステラお人形』。その狂気と美貌の結晶が海を渡り、他国へと流通した結果、案の定というか、お約束通りに最悪の国際問題が巻き起こっていた。
ステラ様! 大変でございます! 隣国の強国『ガザリア帝国』より、特使として第一皇子である【変態王子・ルシアン】と、帝国最強の女傑と名高い【黒鉄の女騎士長・ヒルダ】率いる大使節団が、王宮の正門に押し寄せております!
「……おいよろず、今さらっと『変態王子』って公式の肩書きみたいに言わなかったか?」
俺――ステラ(中身30歳元自衛官)は、頭の漆黒防風ベールをガッチリと両手でホールドしながら、執務室に飛び込んできたよろずにツッコミを入れた。よろずはフンスと鼻血を拭いながら、最新の帝国製スクープ誌(薄い本)を机に叩きつける。
「本当のことでございますから仕方がありません! ルシアン皇子は、我が国から輸出された『実物大ステラお人形(ハイブリッドバズーカ仕様)』を自室で検品した瞬間、そのあまりの美しさと前衛的な構造に脳の全回路を焼かれてしまい、『本物の魔法少女ステラを我が帝国の正妃(あるいは極上の玩具)として略奪婚する!』と宣言し、精鋭の騎士団を率いて直談判に来たのです!」
「あのクソ人形のせいで国際的な貞操危機(略奪婚)が勃発してんじゃねえかァァァッ!!」
俺がベールの下で頭を抱えていると、謁見の間はすでにガザリア帝国の使節団によって占拠され、アララット国王が玉座の上でガタガタと震える事態になっていた。
「アララットの王よ! 隠し立ては無用だ! 我が求愛の対象、絶世のハイブリッド魔法少女ステラを今すぐここへ出せ! 拒むのであれば、我がガザリアの鉄騎兵が一瞬でこの軟弱な国を蹂躙し、力ずくで彼女を奪い去るのみだ!」
謁見の間に響き渡る、いかにも成金成金した豪華な鎧を着た、目の血走った変態王子ルシアンの怒声。その隣には、大剣を背負い、ステラの素顔を一目拝まんと殺気を放つ女傑ヒルダが控えている。
(よし、いいだろう。このまま戦争になるくらいなら、俺が自衛隊仕込みのロベルタ傘(現代実弾レールガン仕様)で、あの変態王子ごと帝国の騎士団を分子レベルで粉砕して――)
俺が弾薬ベルトのグロックに手をかけた、まさにその瞬間だった。
「――へぇ? 僕のステラちゃんを、我が帝国の玩具にする、だって?」
「誰が軟弱な国を蹂躙するって? 私の愛しい娘ステラに、お前のようなドブネズミが指一本触れられると思っているのかしら?」
謁見の間の空間が、バリバリとガラスが割れるような音を立てて崩壊した。
現れたのは、黒いタキシード姿の混沌神と、銀髪赤眼をこれ以上ないほど冷酷に輝かせた吸血鬼の始祖(始祖ママ)の二人だった。
「な、何者だお前たちは!? 帝国の皇子たる我が前に立ち塞がるとは――」
「黙れ、羽虫が」
混沌神が糸目をギチリと見開き、ただ指をパチンと一回鳴らした。
それだけで、ルシアン皇子が背後に引き連れていたガザリア帝国自慢の『精鋭鉄騎兵300人』の頑強な全身鎧が、一瞬にしてブリキ缶のようにベコベコにへしゃげ、全員が悲鳴を上げる暇もなく床に叩きつけられて気絶した。
神威による完全なる物理法則の書き換えである。
「ひっ、ひえぇぇぇっ!?」
「私のステラを、そんな趣味の悪いドブネズミの嫁(正妃)になんかさせるわけないでしょ。……ねえ、バカ邪神。このガザリア帝国とかいう国、今から二人で首都ごと世界の概念から【消滅(更地)】にしてあげましょうか?」
「ええ、大賛成だよ、始祖のお婆さん☆ 君の国ごと、魂の構成粒子を永遠の暗黒空間にドロドロに溶かし尽くしてあげるからねぇ!」
世界を滅ぼせるヤンデレ親バカツートップ(戦闘力:100と95)による、ガチの本気の「うちの娘に手を出すな」大爆発。謁見の間全体が、二人の放つ凄まじい神気と始祖の魔力によって、ミシミシと音を立てて天井から崩落し始めた。変態王子ルシアンと女傑ヒルダは、その絶対的な強者の覇気の前に、一瞬でプライドを粉砕されて床に這いつくばり、涙と鼻水を流して「ご、ごめんなさいぃぃぃっ!」と許しを乞うしかなかった。
お前ら二人とも、ちょっと落ち着けぇぇぇぇッ!! 国家間の外交問題を
『世界の消滅』で解決しようとするなァァァッ!!」
俺がベールの下から全力でロベルタ傘を振り回して割って入り、どうにかガザリア帝国の消滅だけは免れたものの、変態王子一行は「二度と同人利権に逆らいません……!」と、お土産の実物大お人形(バズーカ仕様)を抱きしめたまま、蜘蛛の子を散らすように母国へと逃げ帰っていくのだった。
過激なお世話の包囲網隣国の襲来という大ハプニングを物理(神の力)で強引に解決した翌日。俺の自室は、またしても別の意味での「過酷な戦場」と化していた。
「さあ! 新入りのハイ・スライムちゃん、そしてリリィちゃん! 本日もステラお姉様をお世話するための『カリスマメイド育成・秘密のスパルタレッスン』を開始しますよ!」部屋の応接スペースで、よろず先生がぶ厚いメイドの心得
(※ただし内容は100%変態セクハラ仕様)を机にドンと叩きつけた。
その前で、真面目な顔をしてメモを取っているのは、エメラルドグリーンの球体から可愛いロリケットシーへと姿を変えたスライムと、戦闘力30の爆上がりスペックを持つアリスの妹・リリィの二人だった。
「いいですか、二人とも。ステラ様のお洋服を着替えさせる時の鉄則は、ただ着替えさせるのではなく、服のフリルを直すフリをして、お姉ちゃんの下半身の『ハイブリッドな部分』に、ミリ単位で、うっかり触れそうになる絶妙な角度(過剰スキンシップ)を徹底的に攻めることです!」
「なるほど、よろず先輩! ボク、姿形を自由自在に変えられるから、指先を細い触手にして、お姉ちゃんのドレスの隙間から『うっかり』どころか『確信犯』の角度で全身をマッサージできちゃうよ!」スライムがプルプルと身体を揺らし、ロリ美少女の姿から指先をドロドロの液体に変えて見せた。
「素晴らしいわ、スライムちゃん! その変幻自在の透過能力、ステラ様の絶対防御(ロベルタ傘)をすり抜けて羞恥の表情を確保するのに最高の実戦スペックね!」
「ボクも負けないにゃ! 混沌神様の加護と始祖様の祝福で、ボクの敏捷性はアリスお姉ちゃんを超えてるから、お姉ちゃんが『出ていけぇ!』って怒ってグロックを抜くよりも早く、背後から音速でお風呂のバスタオルを剥ぎ取って、事務的に全身をガシガシ洗ってあげられるにゃ!」
リリィが、戦闘力30の驚異的なスピードで部屋の中をシュバババッ!と残像を残しながら高速移動し、俺のクローゼットから予備の下着をガシッと掴み取ってみせた。
おいおいおいおい待て待て待て!!!
お前ら全員、仕事のベクトルが完全に狂ってやがるだろォォォォォッ!!
俺はベッドの上で、シーツをこれでもかと全身に巻き付けながら、新入りのメイドたちの暴走に本気で絶叫した。新しく加わった変幻自在のスライムと、超パワーロリケットシーのリリィ。二人は、先輩であるよろずの悪魔の指導によって、完璧な「ステラ様お世話メイド(セクハラ・新刊のネーム素材確保要員)」としての英才教育を完全に施されてしまっていたのだ。
「お姉ちゃん、お着替えの時間だよ♡ ボク、今日はどんな姿に変身して、お姉ちゃんの身体を洗ってあげようかな?」スライムが、俺と寸分違わぬ絶世の美少女の姿に変身し、全裸のまま(スライムだから服がない)俺のベッドへとダイブしてきた。
「ボクもお手伝いするにゃ! お姉ちゃん、今日のハイブリッド部分のコンディションチェックの時間にゃっ!!」リリィが、音速のステップで俺のシーツを剥ぎ取ろうと、小さな手をガシッと伸ばしてくる。
「来るなァァァァァッ! 頼むから普通の真面目なメイドの雑務をしてくれぇぇぇぇっ!!」部屋の隅で、よろず先生が「最高です! スライムちゃんのリキッドハラスメントと、リリィちゃんの神速のシーツ剥ぎ! 次回の合同誌の第4章の挿絵の構図、これで完全に原稿完成です!!」と、凄まじい残像を残しながら羽根ペンを走らせていた。
中身は30歳の元陸上自衛官。変幻自在の絶対生物と、スペックがバグった最強のロリメイド、そして背後で大爆笑しながら見守るヤンデレ混沌神と始祖オカンの包囲網により、俺の部屋は毎日、これ以上ないほど賑やかで、そして最高に破廉恥な「お色気の戦場」と化していくのだった。




