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TSしましたが、取り忘れてますよ?  作者: kero


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国家事業の同人誌と、三杯一気飲みの完全ログアウト

実物大ハイブリッドお人形の爆発的ヒットと、混沌神&始祖ママの合同サークル結成によって、俺のプライベートが完全に王宮の裏産業と化していたある日のこと。

ついに、このアララット王国の最高権力者が、重い腰を上げて動き出した。


「ステラ・アララット。これより国王陛下による公式の拝謁(謁見)を執り行う。謁見の間へ出頭せよ」

鎧をピカピカに光らせた近衛騎士長エドガー(※本物、魅了耐性持ち)が、かつてないほど真剣な顔で俺の部屋に呼び出しにきた。


俺――ステラ(中身30歳元自衛官)は、漆黒の防風ベールをガッチリと押さえながら、ついに国王直々のお呼び出しが来たかと、ベールの下で冷や汗を流した。


ついに来たか……。さすがに王宮の裏で実物大バズーカ人形が爆売れして、毎日女官たちが鼻血を噴き出して失神している異常事態だ。国家の風紀を乱した罪で、元陸曹長として軍事裁判、あるいは国外追放に処されるかもしれん。


……よし、いいだろう。このディストピア王宮から合法的に追い出してもらえるなら、むしろ願ったり叶ったりだ!


俺は覚悟を決め、エドガーの先導で白亜の巨城の中心――広大な『謁見の間』へと足を踏み入れた。

重厚な扉が開かれると、正面の高貴な玉座には、かつて宮廷魔術師長バルタザールの精神操作から俺の昇龍拳(掌底)によって救い出された、この国の絶対君主――アララット国王陛下が厳かに座っていた。

その周囲には、王国の重臣や名だたる貴族たちがずらりと居並び、全員がただならぬ緊張感でベール姿の俺を見つめている。


「……よく来たな、ステラ。シャルロットの妹(養女)として迎え入れて以来、じっくりと話すのはこれが初めてだな」

国王が、威厳に満ちた重々しい声で沈黙を破った。


「はっ。国王陛下におかれましては、ご健勝で何よりにございます」

俺はベールの下から、陸上自衛隊仕込みの折り目正しい、完璧な敬礼(お辞儀)を決めた。

だが、国王の次のセリフは、俺の想定していた「風紀紊乱の罪」とは、100%斜め上の方向へとぶっ飛んでいた。


「――ステラよ。単刀直入に問う。……お前、我がアララット王国を、裏から『同人誌の経済利権』で牛耳るつもりか……!?」


「はいぃぃぃぃぃっ!?!?」

俺のベールの下から、本日一番の間抜けた絶叫が響き渡った。重臣たちも「やはりか……!」とばかりにゴクリと息を呑んでいる。

国王は、机の上に積み上げられたよろず先生の新刊や、例の『実物大ハイブリッドお人形』の売上報告書(※黄金商会のVIPルート経由)をバシバシと叩きながら、大真面目な顔で俺を詰問し始めた。


「報告によれば、お前をモデルにしたというその怪しげな本と人形の売上は、今やこの辺境の街だけでなく王都全土の経済を動かし、我が国の今年度の税収の数割に匹敵するほどの巨額の富を生み出しているという……! さらに、お前を裏で支援している最大手サークルの『よろず』や、謎の出資者たちの影響力は、我が国の主要な貴族派閥をも巻き込みつつある! お前、その絶大なる同人利権を盾に、この私を退位させてアララットの王座を乗っ取る計画(クーデター)を進めているのではないか……っ!?」


「やるかそんなクソくだらねえクーデターァァァァッ!!」

俺がベールの下で本気のツッコミを入れようとした、まさにその瞬間だった。

「――おやおや、しがない人間の王様が、僕の可愛いステラちゃんに向かって、ずいぶんと不敬な妄想を膨らませているじゃないか」


「おいおい、人間。私の愛しい娘ステラが、お前のような羽虫の座るちっぽけな王座なんかに興味を持つわけがないでしょ? ――身の程を弁えなさい」


謁見の間の空間がぐにゃりと歪み、そこから突如として、黒いタキシード姿の混沌神と、銀髪赤眼の絶世の美女、始祖のお母様が、音もなく姿を現した。

二人が現れた瞬間、謁見の間全体の空気が完全に圧搾され、重臣や貴族たちがその絶対的な強者の神気と魔力圧によって、一瞬にしてその場に崩れ落ちて窒息しかけた。


「な、何者だ……!? 衛兵! 衛兵を――」

国王が慌てて叫ぼうとしたが、混沌神が糸目をギチリと細めてニヤリと歪な笑みを浮かべ、指をパチンと鳴らしただけで、王宮の全結界が一瞬にして粉々に瓦解した。


「静かに。……これ以上、僕のステラちゃんをいじめて困らせるっていうなら、今この場で、君たちの矮小なアララット王国ごと、世界の概念からチリ一つ残さず

【消滅(滅ぼして)】させてあげてもいいんだよ?」


「ええ、大賛成よ。バカ邪神。ステラを泣かせる奴は、一国の王だろうが何だろうが、私の始祖の魔力で原型が残らないレベルでミンチにしてあげるわ」

世界を滅ぼせるツートップ(戦闘力:100と95)による、ガチのヤンデレおかん脅迫。

あまりの次元の違う絶望的な脅しに、国王は玉座の上で完全に腰を抜かし、ガタガタと震えながら冷や汗を滝のように流した。


「ひ、ひえぇぇぇ……っ!! し、始祖の魔王……!? そして、神話の混沌の神……!? な、なぜそのような超越存在が……」


そこで、混沌神が「ひゃはは! だってこのステラちゃんは、僕とこの始祖のお婆さんが何千年もかけて作った最高傑作(娘)だからね!」とバラしたことで、国王は初めて、俺の『本当の正体(邪神と始祖のハーフにして最高傑作の人形)』を、100%理解することになった。


「そ、そうだったのか……。ステラは、ただの地味な小娘などではなく、世界の存亡を握る神々の愛娘(最高傑作)だったのか……っ!」


国王は、恐怖で真っ白になりながらも、数十年一国を統治してきたベテランの政治家としての脳細胞をフル回転させた。


待てよ……。

我が娘シャルロットは、このステラを『正式な義理の妹(養女)』としてアララット王家に迎え入れた。ということは……我がアララット王家は、この最強の神々と、世界で最も強固で強力な【縁結び】を果たしたということではないか……!?


その事実に気づいた瞬間、国王は一瞬にして恐怖を消し去り、手のひらを太陽の黒点レベルの速度でマッハでひっくり返した。


「――ハハハハハ! 失礼したな、ステラ! 我が愛しき義理のの娘よ!」


国王は玉座から飛び降りると、ガタガタ震える重臣たちを無視して、俺の前に駆け寄ってこれ以上ないほど温かい笑顔で俺の手を握りしめた。

「我が娘シャルロットを救ってくれただけでなく、我がアララット王家にこれほど神聖で強力な縁を運んでくれるとは、お前はまさに我が国の『勝利の女神』だ! 考えてみれば、私もお前を養女にした時点で、

お前の『親の一人』!

父親として、お前の活動(同人誌活動)への協力は一切惜しまんぞ!」


「……は?」

「よし、重臣たちよ! 聞けい! 本日より、ステラとよろず先生が主催するあの同人誌即売会および実物大ハイブリッドお人形の販売事業を、我がアララット王国の【公式国家事業】として指定する! 王宮の全予算と物流ルート、さらには国営の印刷所をすべてよろず先生に解放し、大陸中に我がステラの尊い姿(薄い本)を爆発的に輸出し、国家の主要産業とするのだ!!」


「「「ははっ!! 国王陛下の仰せのままにィィィッ!!」」」

国家のトップから、これ以上ないほど盛大な【同人活動の全肯定&国家事業化】の宣言が下された。


「…………」

その、目の前で繰り広げられる完全なる政治的・経済的な手のひら返しと、自分の最も恥ずかしいプライベート(下半身バズーカ仕様)が、今度は一国の『国家公認・最大貿易輸出品』として大陸全土にバラ撒かれるという絶望的な未来を確信した瞬間。


俺は、頭を覆う漆黒のベールの下で、本日二回目となる、

完璧な【宇宙猫(スペースキャット)】の顔になり、脳内の全思考が完全に停止してフリーズした。


後ろで、新入りのケットシーメイドのリリィが

「お、お姉ちゃん……本当にお姉ちゃんは、この世界を裏から支配する同人の女王様(愛妾)になっちゃったにゃ……」とガタガタ震え、


アリスが「リリィ、もう宇宙の心理に身を任せるにゃ……」と遠い目で白目を剥いていた。

公式(神と始祖)が、最大手(よろず)と結託しただけでなく、ついに国家(国王)までがそのスポンサーとして完全合流してしまったのだ。


「ハッ……!」

あまりの精神的過労と、逃げ場のない世界の狂気に、俺はハッと我に返った。

脳のヒューズが完全にぶっ飛び、前世の自衛官としてのプライドも、陸曹長としての尊厳も、もう何もかもがどうでもよくなった。現実逃避したい。今すぐこの狂った世界からログアウトしたい。


「あああああ! もう知るかァァァッ! 酒! 酒だァァァッ!!」

俺は半狂乱になりながら、腰の小袋から、あの『無限ウォッカスキットル』をひったくるように取り出した。


カパッと蓋を開け、ベールの下から、愛しのウォッカを一口、ゴクリ!!

「……ぷはっ! 耐えろ、俺!」


現実から目を背けるため、間髪入れずにもう一口、ゴクリ!!

「……アルコール万歳! 世界なんか滅びろ!」


そして、脳のブレーキが完全にぶっ壊れていた俺は、あの恐ろしい呪いの回数制限――『アルコールを三回(三口)口にすると強制気絶する』という、自分自身にかけられた最悪の弱点のことなど、完全に忘れていた。


俺はそのままの勢いで、美味いウォッカをボトルごと喉の奥へ流し込むようにして、ダメ押しで通算三口目、ゴクリ!!!

「……あ、詰ん――」

ガクッ。



俺の意識は、国王や重臣、さらにはオカンたちが居並ぶ神聖なる謁見の間の大理石の床の上で、純白のドレスを翻しながら、またしても綺麗さっぱり途絶え、そのまま強制的に現実世界からログアウト(気絶)するのだった。

(続く)

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