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TSしましたが、取り忘れてますよ?  作者: kero


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35/63

王宮が俺の尊厳を蹂躙する日

よろず、混沌神、そして吸血鬼の始祖の三人が、俺のプライベートをオカズにした「同人暗黒同盟」を結成したあの日から、アララット王宮は完全にまっとうな国家の政庁としての機能を失っていた。


中身が30歳の元陸上自衛官陸曹長である俺――ステラは、ダンジョンから帰ってきたばかりだというのに、自室のベッドの上で頭に予備のカーテンの切れ端を巻き付け、二杯縛りのウォッカスキットルを握りしめてガタガタと震えていた。


「ハハ……。ダンジョンで命がけの徒歩往復を完遂したのに、なんで我が家に帰ってきた途端、世界の終わりみたいな絶望に包まれてるんだろ……」


一口、ゴクリ。ウォッカが脳を優しく麻痺させてくれる。だが、飲めるのは二杯までだ。三杯目を飲んで意識を失えば、あの狂った親バカどもとバカメイドの格好の餌食(実写トレースの素材)になるのは火を見るより明らかだった。

そんな俺の警戒をあざ笑うかのように、ガチャン! と部屋のドアが勢いよく踏み開けられた。


「ステラちゃん! 朝の着せ替えとポージングの時間だよ☆」


「私の可愛いステラ、今日のママとパパ(自称)の合同サークルのために、最高のポーズを決めてちょうだい!」


部屋になだれ込んできたのは、これ以上ないほど白い正装に身を包んだ【白の王子様姿】の混沌神と、その隣で我が物顔でノリノリになっている銀髪赤眼の絶世の美女、始祖ママだった。二人の手には、眩いばかりの純白の布地――どう見ても【最高級のロイヤルウェディングドレス】が握られていた。


「お前ら、人の部屋のドアを蹴り開けるな! あと、なんだその不穏すぎる衣装はァァァッ!?」


「何って、次回の新刊(合同誌)の表紙用イラストのポーズを取ってもらうための衣装だよ♪ タイトルは『邪神パパと始祖ママ公認! 魔法少女ステラちゃんの純白ウエディング初夜編(裏はガチBL)』さ!」


混沌神が糸目をピカピカと輝かせ、出席簿……ではなく出来立ての絵コンテを掲げる。


「大賛成よ! 貴方と私の遺伝子(パーツ)を盛りに盛って作ったステラだもの、ウェディングドレスが似合わないわけがないわ! さあ、よろず先生とアシスタントのメイドたち、ステラを丸裸にして着替えさせなさい!」


始祖ママの号令一発、背後に控えていたよろず率いるサポートメイド軍団が、「はい、始祖様!!」「素材確保にゃ!!」と目を血走らせて俺に突撃してきた。


「やめろッ! 離せッ! 俺の中身は30歳のおっさんだ! ドレスなんか穿けるかァァァッ!!」


抵抗空しく、戦闘力:95の始祖ママと、すべての元凶たる邪神、そして狂った腐女子メイドたちの完璧なコンビネーションの前には、力=200の俺の馬力をもってしても無力だった。

衣服が鮮やかに剥ぎ取られ、俺はフリフリのレースとシルクで埋め尽くされた、胸元が大胆に開いた純白のウェディングドレスへと強制換装されてしまった。


「おお……素晴らしい……! 自分で自分を褒め称えたいほどの最高傑作だねぇ!」

混沌神が涙を流して拍手する。


「本当に可愛いわ、ステラちゃん! さあ、次はポーズよ! 恥ずかしそうにドレスの裾を少し持ち上げて、カメラ――じゃなくて、よろず先生の筆に向かって、下半身の『特大バズーカ』がうっかり見えそうで見えないギリギリの角度で恥じらいの表情を浮かべるのよ! あなたなら出来るわ、ママのためにやって頂戴!」


「できるかぁぁぁぁぁっ!! 母親が娘(中身おっさん)に要求するポーズの破廉恥度じゃねえだろそれはァァァァッ!!」


俺の怒声のバズーカが響き渡る中、よろずは「最高です、始祖様! 邪神様! 今のステラ様の『怒りと羞恥に染まった真っ赤な顔』、新刊の巻頭カラーの表紙に決定です!!」と、狂ったように羽根ペンを走らせていた。お前ら全員、一回自衛隊の規律訓練に放り込んで頭を冷やしてこい!


------------------------------


しかし、この合同誌のポージングハラスメントは、王宮内に吹き荒れる狂気のほんの序の口に過ぎなかった。

数日後。俺は少しでもよろずたちの視線から逃れるため、ベールとカーテンの切れ端をガッチリと巻き直し、王宮の裏庭へと避難していた。だが、そこで俺は、王宮の地下倉庫へと続く古い通路の前に、異様な行列ができているのを目撃した。


「な、なんだあの行列は……?」

看板には、よろずの達筆な文字でこう書かれていた。

【王宮公認・ステラちゃんファンクラブ・公式グッズ販売店(協賛:混沌神&始祖魔王)】


「……は?」

俺の脳細胞が恐怖で一瞬にして凍りついた。

恐る恐る、行列をかき分けてその地下店舗の中へと潜入した俺は、そこに並べられている「公式グッズ」の数々を目にして、本気で卒倒しかけた。


「さあさあ、今なら新発売の『ステラ様・等身大マジカル抱き枕

(よろず先生描き下ろし・羞恥ボイス魔道具付き)』が残りわずかでーす! さらに大注目なのは、混沌神様が自ら監修し、始祖様の魂の断片を配合した、こちらの

【実物大・ハイブリッドステラお人形】にございまーすっ!!」

店内で売り子をしているメイドの手には、俺の素顔を完璧に立体化させた、恐ろしいほどのクオリティを誇る等身大フィギュア――いや、ドールが握られていた。


それだけではない。その人形は、混沌神の悪趣味な神の技術によって、服を着せ替えることが可能であり、さらにスカートをめくると、俺の最大のトップシークレットである『あの人間じゃ拝めないサイズの特大バズーカ(ハイブリッド仕様)』まで、シリコン製か何かで完璧に、かつ盛りに盛られた規格外のサイズで100%再現されていたのだ。


キャァァァァァッ!!

見て、この人形、あそこのモノのクオリティが本物(薄い本の描写)の通りだわ!

「混沌神様の加護で、触るとほんのり温かくて、ステラ様の声で『出ていけぇ!』って怒ってくれるボイス機能まで付いてる! 一体、いくら出せば買えるのかしら!?」


王宮の女官やメイド、果ては他国から来ている女性貴族たちまでが、目を血走らせてその「実物大ハイブリッドお人形」を奪い合い、札束や魔鉱石をレジへと叩きつけている。


「……お、お前ら……俺の尊厳を……陸曹長としてのプライドを、王宮の裏でフィギュアーツ(人形)にして売り捌いてんじゃねえェェェェッ!!」


俺は本気で激怒し、腰の弾薬ベルトから、鍛冶神の加護で魔改造された愛銃『グロック』を抜いて全弾ブチ込もうとした。だが、そのレジの奥から、「はい、毎度ありー☆」と、今日の衣装である『商人のエプロン姿』に変身した混沌神が、大量の金貨を数えながらドヤ顔で手を振ってきた。

その隣では、始祖ママが「この人形の胸の盛り方、もう少しステラちゃん大きいと思うのよもっと大きくしても良かったわね。よし、次はバージョン2を開発しましょう!」と、嬉々としてよろずと新商品の会議を開いている。


公式(神と始祖)が、最大手(よろず)と資本(黄金商会のVIPカードの利益)をガッチリと結託させ、俺のプライベートを完全に産業化していた。


「終わった……。俺の社会的抹殺は、この王宮で完全に完了したんだ……」


俺はグロックを持つ手を脱力させ、アイテムボックスからウォッカを取り出して今日二杯目をゴクリ。……耐えろ。ここで三杯目を飲んだら、あの人形の横に生身の俺がディスプレイされるのは火を見るより明らかだった。


------------------------------


精神的に完全に消し炭になり、トボトボと自室へ戻ってきた俺を、さらに最悪の「新展開」が待ち受けていた。


「ただいま戻りました、ステラお姉ちゃん! ボク、今日から先輩メイドのよろず先生とピノ先輩に、お姉ちゃんへの『正しい仕え方』をバッチリ調教……いえ、教育してもらったにゃ!」


部屋のドアを開けるなり、満面の笑顔で俺に突撃し、問答無用で抱きついてきたのは、あのダンジョン八十層のエリクサーで足を治し、神と始祖の加護で【戦闘力:30】の実力派へとスペックが爆上がりした、新人ケットシーメイドのリリィだった。

アリスの妹であり、純粋で可愛いロリケットシーのはずだったリリィ。

だが、今の彼女の目は、これまでの誰よりもギラギラとした、不穏な『ガチ勢』の光を放っていた。


「よ、よろずとピノに、何を教わったって……?」

俺が嫌な予感を抱きながらベールの下から聞き返すと、リリィはフンスと鼻息を荒くし、小さな手で俺のロベルタ風メイド服のスカートの裾をガシッと掴んだ。


いいですか、リリィ。ステラ様をお世話する時のメイドの鉄則は、お洋服を直すフリをして、お姉ちゃんの下半身のハイブリッドな部分に『うっかり』かつ『肉気味』に触れそうになるギリギリの角度(スキンシップ)を攻めることなのですにゃ! ボク、ピノ先輩の技を完璧にマスターしたよ!

はい、お姉ちゃん、失礼するにゃっ!!


「ひゃんっ!? バカ、やめろリリィ! お前までそっち側のハラスメントに毒されるんじゃねえッ!!」


リリィは、戦闘力30の驚異的な俊敏性と、小さな体躯をフルに活かし、俺の下半身の『トップシークレットな部分』へ向かって、本当にミリ単位で触れそうになる絶妙な角度のスキンシップを過激に仕掛け始めた。タチが悪いのは、彼女自身は「お姉ちゃんのために良かれと思って(よろず達に騙されて)」純粋な忠誠心から暴走していることだ。

さらに、部屋の物陰から「素晴らしいわ、リリィちゃん! 今の『うっかり触れそうになる角度』、次回の合同誌の第3章の挿絵の構図として完璧よ!!」と、よろずが猛烈な勢いで羽根ペンを走らせてメモを取っている。


「おい、よろず!! お前、入ってきたばかりの純粋な新人のロリケットシーを、自分の薄い本のネタ元を確保するための『前衛の刺客(セクハラ要員)』に調教してんじゃねえェェェェッ!! 仕事しろォォォォッ!!」


「お姉ちゃん、ボク、もっとお姉ちゃんのために過激なお世話(ハラスメント)を頑張るにゃ! 明日はお風呂で全身をガシガシと事務的に洗ってあげるにゃ!」


「リリィ、お前は可愛い妹キャラのままでいろ! 暴走するなァァァッ!!」

部屋の中で、中身おっさんの絶世の美少女(現在リリィにスカートを剥がされかけ中)の、涙ながらの絶叫が虚しく響き渡る。


――その様子を、遥か高みの世界の狭間で、特大のスクリーン(神の奇跡)に映し出して見ていた混沌神と始祖ママは。


ひゃはははは! 傑作! 新人のリリィちゃん、最高の働きじゃないか! これで次回の合同誌の売り上げは、黄金商会の総資産を超えるねぇ!


ええ、本当に素晴らしいわ!

ステラがパニックになって『この体全部わかって作っただろ!』って叫ぶシーン、何回見ても大爆笑しちゃうわね。さあ、次はバージョン3の人形の開発会議よ!


二人の親バカ邪神(戦闘力:100と95)は、お腹をよじらせ、涙を流しながら大爆笑。

中身おっさんのステラの社会的尊厳と自衛官のプライドが王宮の裏で完全に粉砕され、すり潰されれば潰れるほど、異世界のトレンドは『邪神×吸血鬼魔法少女(実物大バズーカ仕様)』の萌えの狂気によって、さらに混沌(カオス)へと塗り替えられていくのだった。

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