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TSしましたが、取り忘れてますよ?  作者: kero


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オカンたちの熾烈なる包囲網

一年におよぶ過酷な『深淵の監視者』ダンジョン往復遠征。それは、文字通りの意味で世界のパワーバランスを粉砕する、地獄の【徒歩大行軍】となった。

この世界のダンジョンにはショートカットが存在しない。苦労して降りたら、全く同様の苦労をして自力で歩いて上がってこなければならない。


始祖ママに帰りはママの力で何とかならないのと聞いてみた、ダンジョンの支配者なら何か出来るかも?と期待したが……

近道は無かった、モンスターは何とでもなるけどママの力も見せたいし、何よりもステラと一緒に戦いたいのと言われたら無理だった。


行き道で倒した各階層のボスを、帰り道でもう一度「魔改造ミリタリー魔法」と脳筋重力魔法でチリ一つ残さず消し炭にし、時には変幻自在のハイ・スライムの透過能力で罠をすり抜け、あるいは新しく加わった最凶のオカン――吸血鬼の始祖の圧倒的な戦闘力(戦闘力:95)で空間ごと敵を圧殺する。


そんな規格外の徒歩進軍を続け、第百階層から第一階層まで全ての道のりを己の足で踏破した俺たちは、ついに懐かしき地上の光を浴びていた。


「ぷはぁーーーっ! やっと、やっと地上に戻ってきたぞォォォッ!! 歩き疲れて足が棒だ!!」

俺――ステラ(中身30歳元自衛官)は、頭からすっぽりと被った【漆黒の防風ベール】の裾を両手でガッチリと押さえ込みながら、ダンジョンの入り口から這い出てきた。

長年の徒歩遠征の間、顔を布で覆われ続けている。ストレスでハゲる一歩手前だが、一瞬でもこのベールを外せば、周囲の人間が俺の『狂気の美貌』に脳を焼かれて一斉にプロポーズの嵐を起こして大パニックになるのだ。絶対に外すわけにはいかない。

横を見れば、相変わらず全盛期のツルペタ美少女の姿をしたエルミナ先生、妹への特効薬『エリクサー』を大切そうに胸に抱きしめて涙ぐんでいるアリス。そして、俺の左右をがっちりと挟むようにして歩いている、黒いタキシード姿の混沌神と、俺と背格好がそっくりな銀髪赤眼の絶世の美女――始祖のオカンである。さらに俺のロベルタ風メイド服のポケットの中には、マスコットサイズに縮んだエメラルドグリーンのハイ・スライムがプルプルと収まっていた。


「さあステラちゃん、まずはギルドへ向かって、このダンジョンが完全にステラちゃんの『支配下』に入ったことを分からせてあげましょう?」


始祖のオカンが、慈愛に満ちた(しかし内容が恐ろしすぎる)笑顔で俺の肩を抱く。

「そうだよステラちゃん! 君の最初のダンジョン完全攻略(お散歩)の成果を、あの無能なギルドマスターに授業参観の発表会よろしく見せつけてあげようね☆」

混沌神が負けじと反対側の肩を抱き寄せ、糸目を細めてロイヤルスマイルを浮かべた。

「お前ら二人とも距離が近いんだよ!! 離れろ!! 歩きにくくて仕方がねえ!!」

俺の怒声のバズーカが響き渡る中、俺たちは遠征前と全く変わらない、ピリピリとした緊張感の漂う冒険者ギルドの重厚なドアを開けた。

------------------------------

「な……ッ!? す、ステラ殿!? 生きて戻られたのか……!?」

ギルドの応接室。俺たちの突然の帰還の知らせを受け、文字通り腰を抜かさんばかりの勢いで飛び込んできたのは、あの恰幅の良いギルドマスターと副ギルド長だった。

二人は、一年前と一ミリも変わらない、相変わらず怪しい防風ベール姿の俺と、その背後に控える物凄まじいプレッシャーを放つ一行を見て、冷や汗を滝のように流してガタガタと震えている。


「ええ、ギルド長。約束通り、最下層(100層)の攻略を完全に終わらせて帰ってきましたよ。これがその証拠です」

俺はアイテムボックスから、深層のボスたちが落とした国家予算レベルの貴重な財宝や、最下層周辺でしか手に入らない超高純度の魔鉱石を、テーブルの上に次々とドスン、ドスンと並べていった。


こ、これは……高位の魔導具に、伝説の素材ばかり……。

い、いや、しかし! 最下層の主である『吸血鬼の始祖』は神話の存在! これだけのアイテムを持ち帰ったとて、本当に100層を攻略したという証明には――


ギルド長は、信じたくないという現実逃避からか、目の前の財宝を見つめながら必死に首を振った。

そんな往めの悪いギルド長に対し、俺はため息を吐きながら、第八十階層の宝箱から手に入れた、あの古い羊皮紙の手記をテーブルに叩きつけた。


じゃあ、これならどうです? 80層のボス『デス・ナイト』が落とした、99層の【ハイ・スライム】に関する極秘の調査手記です。ギルドの最高機密の判子(スタンプ)が押してありますよ」


「な、何ぃっ!? 80層の固有ドロップ資料……! な、なぜそれを貴方が……っ!」

ギルド長と副ギルド長が、その羊皮紙を見た瞬間、顔面を紙のように真っ白にして激しく動揺し始めた。

だが、彼らの絶望はそこからが本番だった。


「――ねぇ、おじさんたち。大分姿は変わっちゃった(年を取った)みたいだけど、ボクのこと、覚えてる?」

突如として、俺のロベルタ風メイド服の胸元から、エメラルドグリーンのスライムがピョコンと飛び出した。

正式な契約のもと、混沌神の『絶対隷属セキュリティ』を施されたスライムは、ステラに対して絶対に裏切らない保証が世界のシステムレベルで約束されている。

そのスライムが、空間の魔力を吸い上げながら見る見るうちに巨大化し、姿形をぐにゃりと変化させていく。現れたのは、俺の容姿をベースにした【偽ステラ】の姿だった。


(※本物の俺ほどの超絶的な狂気の美貌にはなれないため、周囲の人間がパニックを起こさずに直視できる『普通に見れる綺麗な美少女』のレベルに収まっている)

偽ステラ姿のスライムは、応接室のソファにちょこんと腰掛け、ギルド長に向かって不敵にニヤリと笑った。

「昔、ボクが99層で退屈してた時、あんたたち大勢でボクの部屋に突っ込んできたよね? 物理も魔法も全然効かなくて泣きそうになってたから、ボクが可哀想に思って見逃してあげたよね?」

スライムはさらに、隣で固まっている副ギルド長を指さした。

「そっちのあんたも、あの時後ろの方で盾を持ってガタガタ震えてたよね? 懐かしいなぁ」


「「ひ、ひぃぃぃぃぃぃっっっ!?!?大あわて!?!?」」

ギルド長と副ギルド長は、心底からの驚愕と、過去のトラウマを完全に呼び覚まされた圧倒的な恐怖により、悲鳴を上げて応接室の壁際へと猛スピードで逃げ出した。二人はガタガタと歯の根が合わないほど震え、互いに抱き合っている。

「な、なぜ、なぜ99層の絶対生物(ハイ・スライム)がここにいるんだァァァッ!? ダンジョンのモンスターは、特殊な従魔術(テイム)でもしない限り、その階層から絶対に離れられないはずだ……!」


「ましてヤそいつは、ダンジョン最深部一歩手前のフロアボスだぞ!? テイムも何もないわけがない! 国家転覆級の災厄だ、衛兵! 衛兵を呼べぇ!!」


大パニックを起こして叫ぶ二人に対し、俺の後ろから、銀髪を優雅になびかせた始祖のお母様が、冷徹な、だが絶対的な支配者の笑みを浮かべて一歩前へと進み出た。


「無駄よ、人間。そのスライムは、このダンジョンの真の主である『私の権限』によって、外の世界へ出してあげたの。……それとも何か? 私の愛しい娘(ステラ)の可愛い下僕に、不服でもあるのかしら?」


始祖のオカンから放たれた、世界を滅ぼしかねない高密度の吸血鬼の魔力圧(プレッシャー)が、応接室の空気をギチギチと圧搾する。ギルド長たちはその圧倒的な威圧感の前に、完全に息を詰まらせて床にひざまずいた。


「いいこと、地上の羽虫ども。……以後、お前たちが我が娘ステラに絶対の忠誠を誓うなら、このダンジョンをお前たちがこれまで通り『産業』として利用するのを許してあげましょう」

始祖のオカンは、ベールに包まれた俺を愛おしそうに引き寄せ、ギルド長たちを冷たく見下ろした。


「もし、私たちの実力や言葉を疑うというのなら――今から【三日間】、このダンジョンへの出入りを一切禁止にしてあげるわ」

「な、なんだと……!? 出入り禁止……!?」

「ええ。すでに私の魔力によって、ダンジョンの中にいた冒険者や職員は、強制的に全員外の地上へと弾き出しておいたわ。嘘だと思うなら、今すぐ入り口を見に行ってみることね。

三日間、このダンジョンは完全に『機能停止』するわ。それが嫌なら、三日後に私たちの条件をすべて認めなさい」


「ひ、ひえぇぇぇ……っ!!」

ダンジョンが三日間完全に停止する。それは、この辺境の街の経済が完全に干上がり、深層を攻略中の全冒険者が活動不能になるという、ギルドの死告宣告に他ならなかった。


「さあ、お仕事の話はここまでよ!」

始祖のお母様は、一瞬にして冷酷な女王の顔から、蕩けるような笑顔の『オカン』の顔へと戻り、俺の手を両手で優しく包み込んだ。


「ステラちゃん! ママ、この街でとっても美味しいご飯を出す、隠れ家的なお店を知っているの! お昼には少し早いけれど、遠征の労いも兼ねて、今から二人で行きましょうね!」


「あ、それなら僕の方がもっとステラちゃん好みの『ミリタリースペックで栄養満点な最高級レストラン』を知っているよ、始祖のお婆さん☆ さあステラちゃん、僕と一緒に行こうねぇ♪」


「誰がお婆さんよ、このストーカーバカ邪神!! ステラのママは私よ!!」


「僕が何千年もかけて魂から作ったんだから、僕がパパでありママだよ!!」


「お前ら二人とも、公共の場で低レベルな親権(?)争いを始めるんじゃねえェェェェッ!!」


俺の絶計がベールの下から虚しく響き渡る中、俺たちは腰を抜かしたギルド長たちを置き去りにし、オカン二人の熾烈な手を引っ張られて街へと繰り出すのだった。もちろん、後ろでエルミナ先生が


「フッ、若返った私の分のご飯も期待しているわよ、脳筋の邪神たち」と呟き、


アリスが「ボク、もう一生宇宙猫のままでいいにゃ……」と遠い目をしていたのは言うまでもない。


過保護すぎたメイドの誕生

至れり尽くせり(片方は邪神、片方は始祖)の、精神的にめちゃくちゃ疲れる高級ランチをどうにか平らげた後、俺たちは今回の遠征の最大の目的を果たすため、アリスの案内で街の路地裏にある小さな家へと向かっていた。


「ここ、ここにゃ……! ボクの、妹のいるお家……っ!」

アリスは玄関のドアを震える手で押し開け、中に向かって大声を張り上げた。


「リリィ! ただいまにゃ! ボク、帰ってきたよ!」

奥の部屋から、ガタゴトと車椅子の回る音が聞こえ、一人の小柄なケットシーの少女が姿を現した。アリスとよく似た面影を持つ、足の無い少女――妹のリリィだった。


「お姉ちゃん……!? お姉ちゃんなの……っ!? 一年もどこに行ってたのよぉ!」


「リリィぃぃぃぃっっ!!」

二人はお互いに抱き合い、声を上げてワンワンと泣き崩れた。

一年間の過酷な徒歩遠征、全てはこの瞬間のためにあったのだ。

中身がおっさん自衛官の俺も、ベールの下で不覚にもウルっときてしまい、涙を堪えるように空を見上げた。本当に、作戦を完遂できて良かった。


「さあ、アリス. 約束の『エリクサー』を妹さんに」

「うん……っ! ありがとう、ステラお姉ちゃん……!」

アリスはアイテムボックスから(俺経由で)取り出した、あのエメラルドグリーンに輝く伝説の万能薬『エリクサー』のガラス瓶をリリィに手渡した。リリィがその液体をゴクリと飲み干した、その瞬間。


ガラス瓶から溢れ出た聖なる光がリリィの全身を包み込み、次の瞬間、失われていた彼女の両足が、まるで時間が巻き戻るかのように、見る見るうちに細胞が再生され、完璧な、元通りの美しい足へと完治していったのだ。


「あ……足が……動く、動くよ、お姉ちゃん……!」


「リリィ!! よかった、本当によかったにゃああああ!!」

姉妹が再び抱き合って号泣する、完璧な感動の再会編。

……だが、この美しい感動の空気を、あの『過保護なオカンたち』がそのまま終わらせるわけがなかった。


「ふむ……。ステラちゃんの記念すべき最初の『人助けの任務』だね。よし、僕もステラちゃんに良い所を見せるために、その妹ちゃんにちょっとだけ【混沌神の加護】をサービスしてあげよう☆」


黒いタキシード姿の混沌神が、糸目をピカピカと輝かせて指をパチンと鳴らした。


「ハッ、何よその安っぽい加護! ステラのママである私の方が、もっと素晴らしい【吸血鬼の真祖の祝福】を授けてあげるわよ!」

始祖のオカンも負けじと対抗し、リリィに向かって凄まじい始祖の魔力を注ぎ込んだ。

「ちょ、お前らやめ――」

俺の制止の言葉が届く前に、神の加護と始祖の祝福が、リリィの小さな身体の中で完全融合を起こしてしまった。

キィィィィィン……ッッッ!!!

光が収まった時、車椅子から立ち上がったリリィは、ただ足が治っただけではなかった。

その全身から放たれるオーラは跳ね上がり、身体能力はアリスを大きく超え、

【戦闘力:30までスペックが爆上がりした、一般的なA級冒険者並みの超実力派ケットシー】へと進化してしまっていたのだ。


「……あ、あれ? お姉ちゃん……ボク、なんか身体がめちゃくちゃ軽くて、そこらへんの岩なら簡単に砕けそうな気がするにゃ……?」

リリィが自分の小さな拳を見つめながら、不思議そうに首を傾げる。


「お前ら、ただの一般人の子供に何てものを授けてんだよォォォォォッ!!」

俺のツッコミの怒声が響き渡る。


「いやぁ、ステラちゃん。これだけ強くなっちゃうと、普通の街で暮らすのは逆に周囲に目をつけられて危険だからねぇ」

混沌神が当然のように頷く。


「そうだね。これほど高密度な魔力を持った子供を放置すれば、悪い貴族や魔術師に目をつけられてしまうわ」

始祖のオカンも真面目な顔で同意した。

「だからね、ステラちゃん。この子を君の専属の『三人目の従者(メイド)』として、王宮へ連れていくのが一番安全だよ☆」


「ええ、私の大切なステラの身の回りを守る、最強の護衛メイドにしましょう!」


「俺の許可なく勝手に俺の専属メイドを増やすなぁぁぁぁっ!!」

とはいえ、これだけの戦力(実力派)になってしまったリリィをこのまま辺境の街に残していくのは、本当に心配だった。


俺はため息を吐きながら、最後の安全確認として、アリスの時と同様に、ベールの下の俺の顔を見せて精神に異常が出ないかテストすることにした。

リリィちゃん、ちょっとだけ失礼するぞ。俺のベールの中に顔をみてくれ。急にパニックになったり、結婚したくなったりしないか?


リリィは、俺のベールを少しだけ持ち上げて中を覗き込み、俺の絶世の美貌をじっと見つめた。だが、神の加護と始祖の祝福で精神耐性が高まっているため、


ううん、全然大丈夫! ステラお姉ちゃん、世界一綺麗で、とってもいい匂いがするにゃ! ボク、お姉ちゃんのために一生懸命お掃除もお洗濯も頑張るにゃ!


と、満面の過保護なキラキラ笑顔で耐えきってみせた。よし、精神の異常もなし、完全合格だ!

こうして、よろず、ピノ(男の娘)に続き、俺の周りには「見た目は可愛いロリケットシー、中身はガチで強い、ステラお姉ちゃん命のガチ勢メイド」という、新たなる過酷なメイド包囲網が結成されてしまうのだった。

------------------------------

そして、約束の三日目がやってきた。

この三日間、ダンジョンが完全に機能停止(出入り禁止)になった辺境の街は、文字通りの大パニックに陥っていた。


ギルド長や副ギルド長は、毎日のように俺たちが泊まる高級ホテルへと血相を変えて駆け込んできては、門前払いを食らいつつも

「頼むからダンジョンを開放してくれ! 冒険者たちが全員干上がってしまう!」と、涙ながらに懇願し続けていた。

だが、俺たちの後ろ盾(始祖と邪神)は、断固としてそれを拒否し、三日目の約束の時間をきっちりと迎えたのだ。


満を持して、俺たちは再び冒険者ギルドの広間へと足を踏入れた。

ガチャリ、とドアを開けた瞬間。

「「「ステラ様!! シャルロット王女殿下の妹君!! どうか、どうか我らに慈悲を……っ!!」」」


ギルドの広間にいた、ギルド長、副ギルド長をはじめ、受付の職員から、居並ぶベテランの冒険者たち全員が、一人の例外もなく床に両手を突き、額を地面に擦り付ける完璧な【土下座(平伏)】の姿勢で俺たちを迎えたのだ。広間全体が、慈悲を求める哀れな羽虫たちの平伏の海と化していた。


「……うわぁ、自衛隊の演習終わりの総評でも、ここまでの平伏は見たことねえぞ」

あまりの光景に、俺はベールの下で顔を引きつらせた。


そこへ、俺の前に進み出たのは、銀髪を冷酷に輝かせた始祖の魔王――始祖ママだった。

彼女は、地面に這いつくばるギルド長を冷たく見下ろすと、懐から一枚の、ギチギチに書き込まれた魔導契約書を取り出した。


「さあ、ギルドマスター。我が娘ステラに、このダンジョンの『全収益の一割をステラ個人へ譲渡する』という契約を結びなさい」


「は、はい……! 一割、一割でしたら、喜んでサインさせていただきますぅぅぅっ!!」

ギルド長がもっと暴利を覚悟していたのか、一割という数字を聞いて地獄で仏に会ったような顔で涙を流す。だが、始祖ママの契約はここからが本番だった。


「 代わりにこのダンジョンの【十層ごと】に、冒険者が安全に休息できる『セーフティゾーン(安全地帯)』を、さらに、その新設されたセーフティゾーン内には、疲弊した冒険者たちの貴重な食料源となる、大人しくて安全な魔物が常にポップアップ(自動出現)する様にしてあげる! もし約束を破れば、即座にまたダンジョンを永久閉鎖してあげるわ」


「な、何という慈悲……! 冒険者の生存率が一気に跳ね上がる、神の救済措置……!! 喜びんで、喜んでその条件で契約させていただきますぅぅぅっ!!」

ギルド長は震える手でペンを握り、涙を流しながら契約書にサインと血判を押した。

利権をがめつく毟り取るのではなく、一割の利益を確保しつつ、十層ごとの安全地帯と食料の設置という完全なるインフラを整備。一度こうして完全攻略したマニュアルと安全地帯ができれば、冒険者の生存率は一気に上がり、国としても産業化が爆発的に進む。

俺の利益も上がる。

そうなると一割なんて安いものだ始祖ママ、恐ろしいほど合理的で完璧な統治契約書であった。


「ふふ、よくできました。これにて契約成立ね、ステラちゃん♡」

始祖ママが契約書をアイテムボックスへと仕舞い、パチンと指を鳴らすと、街全体を覆っていた『深淵の監視者』ダンジョンの封印が三日ぶりに解除され、冒険者たちが一斉に歓声を上げて入り口へと走り出していった。


こうして、ギルド全体を完全なる恐怖と経済力、性能の高い制度改革で平伏させ、俺側の圧倒的大勝利という形で、激動の『深淵の監視者』編は、完全なる終結(決着)を迎えたのだった。


「さあ! ステラちゃん、エリクサーも手に入ったし、ダンジョンの利権とインフラも全てママが整えてあげたわ! 二年ぶりに、あの懐かしのアララット王宮へ向かって、今度こそ馬車を出発させましょうね!」


「おっと、馬車の御者(マネージャー)は僕だからね☆ ステラちゃん、帰りの旅路の中でも、僕が至れり尽くせりでハニーな時間をプレゼントしてあげるからねぇ♪」


「新入りのボクも、お姉ちゃんのために馬車の中でお茶を淹れるにゃ!」


「ボクも、お姉ちゃんのハイブリッドな部分の防衛(スキンシップ)を頑張るよ!」


「お前ら全員、頼むから静かに馬車に乗ってくれェェェェェッ!!」

中身は30歳の元陸上自衛官。

変幻自在のスライム、最強の始祖オカン、若返り脳筋エルフ、宇宙猫の鍵師、そして新たな頼もしい最強のロリメイドを連れ、俺たちの凱旋馬車は、さらなる地獄(主に腐女子のよろず先生が待っている)の待つ王宮へと向かって、高らかに車輪の音を響かせるのだった。

物語は、全ての元凶が集う、激動の王宮凱旋&同人誌の逆襲編へと突き進む!

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