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TSしましたが、取り忘れてますよ?  作者: kero


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混浴(?)オアシスと、心開かれし者たち

「やった……やったぜ、安全地帯だァァァッ!」第八十階層のボス『デス・ナイト』を分子レベルで消し炭にし、そこから続く階段を下りた先――

第八十一階層に足を踏み入れた瞬間、俺たちを迎えたのは神聖な結界の光だった。しかも、そこはただの岩肌の広場ではなかった。

洞窟の奥からこんこんと透明な湯(あるいは温水)が湧き出しており、湯煙が幻想的に立ち込める、広大な天然の「温泉オアシス」とも言うべき、素晴らしい隠れ安全地帯(セーフティゾーン)だったのだ。ここ数週間、ベールで顔を隠し(六十二層からは外したけれど)、埃まみれのダンジョンを戦闘服代わりのロベルタ風メイド服で激走し続けていた俺――ステラ(中身30歳元自衛官)にとって、この温水の泉は砂漠のオアシスに他ならなかった。


「よし! ミッションは一時中断! 今日はここで徹底的に身体を洗って、泥を落とすぞ!」俺はアイテムボックスから支給品のタオルと石鹸を取り出し、鼻息を荒くした。一刻も早く服を脱ぎ捨てて、この温かい泉にダイブしたい。……だが、俺が脱衣を開始しようとしたその瞬間、いつの間にか『湯上がりのバスタオル一枚』という破廉恥な姿に着替えた混沌神が、糸目をいやらしく光らせて俺の前に立ちはだかった。


「ひゃははは! 温泉といえば混浴、混浴といえば僕とステラちゃんの甘いハネムーンの続きだよねぇ! さあステラちゃん、僕がその華奢な美少女ボディを優しく、時には激しく洗ってあげるから、一緒に入ろうか♪」


「入るかバケモノォォォォッ!!」

俺はロベルタ傘を抜いて邪神の額に突きつけた。

俺は一人で静かに入りたいんだよ!

お前はそこから一歩も動くな! 覗いたら神の座から引きずり落として射殺するからな!

中身がおっさんの俺にとって、いくら絶世の美少女(中身は邪神)の見た目をしていようが、あるいは日替わりイケメンの姿をしていようが、混沌神と一緒に風呂に入るなど精神的死亡(あるいは別の意味での貞操危機)を意味する。

何より、俺の下半身は例のハイブリッド仕様だ。

これ以上、奴に面白がられる材料を増やすわけにはいかない。

俺が本気で拒絶し、青筋を立てて怒鳴り散らしていると、

混沌神は「ちぇーっ、ステラちゃんは本当にツンデレだなぁ」と肩をすくめた。

だが、このヤンデレ邪神が、これくらいの拒絶で引き下がるわけがなかった。奴は俺の「中身がおっさんゆえの羞恥心」を完璧に把握した上で、最高にタチの悪い『神の権能』を発動させたのだ。パチン、と混沌神が指を鳴らす。


「――おやおや、それなら『女性同士』なら文句はないよねぇ?」ドロン、と怪しいピンクの煙が中庭……ではなく泉の周囲に巻き起こった。

霧が晴れた時、そこに立っていたのは、バスタオル姿の邪神ではなかった。

それは、王宮で俺のプライベートを監視していた、あのよろずの手下の【王宮の女官】の姿を模した、完璧な超絶美女(中身は混沌神)の姿だった。


「さあみんな! ステラ様が頑なにお洋服を脱ごうとされません! 専属メイド(のフリ)として、私たちが責任を持ってステラ様を丸裸にして差し上げましょう!」


「はぁぁぁぁぁっ!?」

「にゃ、にゃにゃんだってー!? ボクもお手伝いするにゃ!」

そうね。ステラちゃん、一年の地獄の修行で身体が凝り固まっているでしょうから、私がしっかり解してあげるわ混沌神(女官変身)の号令に、エリクサーを手に入れて上機嫌のアリス、そして全盛期(ツルペタ)のエルミナ先生までが、ノリノリで賛同してしまった。


「待て! やめろ! 自分は元自衛官だ! 身体の洗浄くらい自分で行え――ひゃんっ!?」

抵抗空しく、力=200の俺の馬力をもってしても、世界最強の魔女(先生)と敏捷MAXのケットシー(アリス)、そして全ての元凶たる邪神のコンビネーションの前には、無力に等しかった。フリフリのロベルタ風メイド服のボタンが鮮やかに外され、下着が剥ぎ取られ、俺はものの数秒で、湯煙の立ち込める泉のほとりで【完璧な丸裸】にされてしまった。


「「「…………」」」

その瞬間、泉の周囲に、しんと静まり返った沈黙が流れた。湯気の中に晒された、俺の全身。上半身は、無駄にでかくて形の良い、世界の美を結集したような絶世の美少女。しかし――その下半身には、よろず先生の薄い本(同人誌)の挿絵で描かれていた通りの、人間業とは思えないサイズを誇る【特大の男のモノ】が、堂々と自己主張していた。


……にゃ、にゃるほど……。本物の、リアルな『バズーカ』にゃ……。薄い本の描写は、一ミリの誇張もなかったのにゃね……

アリスが顔を真っ赤にしながら、本日何度目か分からない【宇宙猫】の顔になって固まっている。


ほう……。これが神話の始祖たる、陰陽を内包した究極のハイブリッド肉体……。実に興味深い構造だわ。筋肉の連動性が素晴らしいわね

エルミナ先生だけは、腕を組んで(裸だが)医学的・魔術的な視点からじっくりと凝視して感心していた。


「ひゃはははは! やっぱりステラちゃんのこの身体、いつ見ても最高のアートだねぇ! さあ、恥ずかしがってないで、みんなで裸になれば怖くないよ!」混沌神(女官姿)がそう叫ぶと同時に、奴は自分の着ていた女官服をパッと脱ぎ捨て、一瞬で一糸まとわぬ全裸になった。

さらに、先生もアリスも「そうね、隠し事なしの混浴にしましょう」と、あっさりと衣服を脱ぎ捨て、全員が完全な全裸となって泉へと足を踏み入れた。

「うわあああ! 目のやり場に困るだろォォォォッ!!」中身がおっさんの俺は、シーツならぬ湯煙で必死に自分の前を隠しながら、真っ赤になって泉の隅へと縮こまった。周りを見渡せば、全盛期のツルペタのエルミナ先生、小柄で可愛いアリス、そして中身は邪神だがビジュアルは完璧な美女の混沌神。

絶世の美女三人(?)に囲まれた、ハイブリッド仕様の全裸の俺。完全に、異世界の成人向けコミックのワンシーンのような状態だった。

だが、温かいお湯の中に全員で肩まで浸かっていると、不思議と、これまで張り詰めていた心のトゲが、少しずつ溶けていくのを感じた。


「……お姉ちゃん。驚かせてごめんにゃ」アリスが、お湯の中から顔だけを半分出して、申し訳なさそうに俺に近づいてきた。

ボク、お姉ちゃんに大きな秘密(下半身)があるって本で知ってたから、少しだけ『本当はおっかない人なのかな』って緊張してたんだ。

でも……こうして同じお湯に入って、お姉ちゃんが真っ赤になって照れてるのを見たら、やっぱり優しくて可愛い『ボクのお姉ちゃん』なんだなって、安心したにゃ

アリスは、猫耳をパタパタと揺らしながら、お湯の中で俺の手をそっと握りしめてきた。


「そうね、ステラちゃん」エルミナ先生も、豊かな金髪をお湯に浮かべながら、穏やかな瞳で俺を見つめた。

「貴方が前世でどのような戦士(自衛官)だったとしても、今の貴方は私の可愛い教え子であり、このダンジョンを共に往く大切な仲間よ。

身体の形が少し個性的(ハイブリッド)だからって、私たちの絆は何一つ変わりはしないわ」


「先生……アリス……」ベールのない俺の素顔から、今度は羞恥心ではなく、純粋な感動の涙がポロポロとお湯の中にこぼれ落ちた。

そうだ。

こいつらは、俺の正体(中身おっさん・下半身バズーカ)を全て知った上で、それでも俺を仲間として、ステラとして、心を開いて受け入れてくれているのだ。王宮のディストピアでは決して得られなかった、本物の「仲間との心の繋がり」が、この未踏の八十一層のオアシスで、じんわりと俺の胸を温めていく。


「ひゃはははは! いい話だねぇ! 絆が深まるって素晴らしいよ! じゃあ僕とステラちゃんの愛の絆も、このままお湯の中でさらに深く――」


「お前は一生黙ってろクソ邪神ォォォォォッ!!」

俺はお湯を盛大に撥ね退け、感動の涙を引っ込めて、混沌神の顔面に全力のマジカル湯平手打ち(正当防衛)を叩き込んだ。


ドバシャァァァンッ! と邪神がお湯の中にひっくり返り、先生とアリスが大声を上げて爆笑する。最下層(90層以降)への突入を翌日に控え、俺たちのパーティーは、衣服だけでなく「心のベール」をも全て脱ぎ捨て、これまで以上に強固な、そして少しかしこまった(?)絶対の信頼関係で結ばれるのだった。


打倒・混沌神の道のりはまだまだ遠いが、この仲間たちとなら、どんな深淵の闇であっても笑って突き進んでいける。

俺はウォッカ(これで今日二杯目!)の代わりに、温かいオアシスのお湯をすくい、新しい仲間たちとこれからの勝利を願って、静かに乾杯するのだった。


(続く)

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