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TSしましたが、取り忘れてますよ?  作者: kero


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24/59

オカン邪神の授業参観

二ヶ月に及ぶ地獄のストーカー・ドライブ(片方は邪神)を経て、

俺――ステラ(中身30歳元自衛官)は、ようやく目的地である『深淵の監視者』ダンジョンを擁する辺境の街へと到着した。


……はぁ、本当に辛い呪いの旅だった。今すぐ一流のお風呂に入ってゆっくり体を休めたい……

俺がベールの下でそう呟くと、案の定、タキシード姿のオカン邪神が


「ステラちゃんのために、街で一番お風呂が広くて豪華な最高級宿の手配は終わっているよ☆」と、ドヤ顔でルームキーを差し出してきた。


何も言わなくても俺の希望通りの完璧な環境を用意してくる。

ありがたいんだけど、なんかめちゃくちゃ悔しい。その夜、いつものように部屋へ侵入してきた混沌神にベール越しにウザ絡みされているうちに、俺は激しい疲労から泥のように眠ってしまった。

……が、翌朝、ベッドの中で俺はある重大な事実に気づいて戦慄した。

「待てよ。この二ヶ月間の旅の間中……俺、一度も夢精してないぞ?」

王宮の俺の部屋のベッドは、よろず達の陰謀(薄い本のネタ元確保)によって『夢精しても大丈夫な特注仕様』になっていたし、そもそも寝る前に自分で定期処理をしていたから、やらかすのは時たまだった。

それが、この旅の間はあの『特大のモノ』がピクリとも暴走していないのだ。

下半身のコンディションまでクソ邪神に完璧に管理(コントロール)されている。「コントロールできるならずっとしてくれ! でも、そこまで握られてるなんてなんか悔しい……!」

翌朝。

俺は気持ちを切り替え、この世界に来て初めて『冒険者ギルド』の門を叩くことにした。もしや、ネット小説でよく見る

「おいおい、こんな地味な小娘が冒険者だってよぉ!」

というラノベのテンプレ絡まれイベントが経験できるのだろうか? 正直、元おっさんとしてちょっとワクワクしてきた。

ガシャリ、

と執事姿の混沌神が完璧な所作でスイングドアを開け、俺がギルド内へと足を踏み入れる。

「おい、見ろよ……」

「なんだあいつは……?」

その瞬間、ギルド内の騒がしい空気が一瞬にして凍りつき、一斉にどよめきが走った。今日の俺の服装は、アイテムボックスから引っ張り出してきた

【なんちゃって喪服】である。質素ながらも非常にエレガントな見栄えの黒いドレスに、大量の黒リボンをあしらった、喪服であって喪服でない特注戦闘服だ。頭には、風が吹いても絶対にめくれないよう、下部の両端に固定用の紐を取り付けて改良した『防風ベール』をガッチリと巻いている。

いずれは機動隊が使う顔面の防石・防弾プレートみたいなもので覆うつもりだが、今のところはこの喪服スタイルによく似合っていた。

ザバァッ! と、荒くれ者であるはずの冒険者たちが、一斉に左右へ飛び退くようにして道を開けていく。

「え、なに? どういうこと?」

いくら執事(邪神)を先頭に立てて歩いているとはいえ、そこまでモーセの十戒のごとく露骨に避けられると、中身おっさんとしては普通に傷つくんだけど! パニックになりそうだ。

「駄目だ! 酒! 酒を飲もう!」

俺はポーチからお馴染みのウォッカスキットルを取り出し、ベールの下からとりあえず一口ゴクリ!喉がカッと焼ける。よし、大丈夫だ、いける!俺は受付へと進み、凛とした声で名乗った。

「ステラ・アララットです。ギルドへの登録をお願いします」そう言って、シャルロット姉さまから預かっていた正式な紹介書を提出する。

なんと俺、この一年の間に書類上、シャルロット姉さまの正式な妹(王位継承権のない養子枠)になっていたのだ。

「ア、アララット王家からの直筆紹介状……!? しかも王都の、あの『最強の魔法少女』ステラ様!?」受付係の顔が真っ白になり、ギルド内が一気に慌ただしくなった。速攻で奥の豪華な応接室へと案内され、そこに現れたのは威厳のあるギルド長と、副ギルド長だった。

「事情は聞き及んでいる、ステラ殿。このダンジョンの最階層(最下層)を目指したいそうだが……」

さすがは情報網を持つギルド、俺の王都での活躍(バルタザールを掌底昇龍拳でブッ飛ばした件など)や実力は、かなり正確に伝わっていた。だが、それはエルミナ先生の地獄の特訓を受ける一年前の情報だ。だからギルド長は「まだお若い。行くならせめて優秀なパーティを組んでほしい」と渋ったのだが、俺がソロでの突入を断り続けていると、「ならば、実力を見せてもらいたい。我がギルドが用意する『A級パーティ3組(合計15名)』と同時に模擬戦を行い、勝てれば最下層への挑戦を認めよう」と言い渡された。最下層のボスの推定実力がそれくらいだと考えられているらしい。このダンジョンが未だに未攻略のままなのは、ボス部屋に一度に入れる人数に『最大6名まで』という、強烈なシステム上の人数制限(制限を超えると弾かれる)があるからだという。

「分かりました。その試験、受けます」試験日は三日後、ギルド地下の大規模訓練場で行われることになった。よし、それまでは資料集めと勉強だ。


そして三日後、試験当日。結果から言えば、俺の完全勝利だった。

それも、相手のA級冒険者たちが気の毒になるほどの圧倒的な『力の差』を見せつける形での圧勝である。

「チェストォォォッ!!」

俺はロベルタ風の黒いフリフリ傘(仕込み銃・鉄塊仕様)を片手で軽々と振り回し、A級前衛たちの剣撃をすべて傘の骨で弾き飛ばした。

さらに、ステップを一歩踏み込んで放った、ピンクのハート型の初級火属性魔法(威力は究極魔法級)を相手の足元に炸裂させ、爆風だけで3パーティ15名を一瞬にして戦闘不能(気絶)へと追い込んだのだ。

(……っていうか、観客席のあいつの顔よ)ふと上を見上げると、執事姿の混沌神が、観客席の最前列で


「いやぁ、うちのステラちゃんは本当に最高だねぇ!」とばかりに、嬉しそうにウンウンと頷きながら満面の笑みを浮かべていた。


お前は我が子の授業参観に来たオカンか。エルミナ先生の特訓を受ける前の俺なら、A級3パーティ相手なら良い勝負か、あるいは結構苦戦していたと思う。今は変に実力が上がりすぎているものだから、手加減の調整がめちゃくちゃ難しかった。まあ、誰一人として後遺症が残るような怪我はさせてないから良しとしよう。


模擬戦での無双から数日後。俺が泊まっている高級ホテルの部屋に、驚くべき来客があった。

「ステラ様、お初にお目にかかります。ボクはケットシーの斥候兼鍵師の『アリス』っていうんだ。どうか、ボクを最下層へのパーティに入れてほしい!」


現れたのは、小柄で可愛らしい、猫の耳と尻尾を生やした獣人の少女(獣人は歳が分からん)だった。彼女は、最下層のボスがドロップするという伝説の万能薬『エリクサー』が、病気の妹のためにどうしても必要なのだと、涙目で訴えかけてきた。


俺が、横でニヤニヤしている執事姿の邪神の顔を見た瞬間。

(チッ、これも全部お前の計算のうち(セッティング)かよ……!)

と察した。だが、最下層の罠や宝箱を解除するための「鍵師(シーフ)」は絶対に必要だ。俺は念のため、ピノの時のような悲劇を防ぐため、ベールを外した俺の『狂気の素顔』と、魔法少女変身後の顔をミアに見せてみた。


すると、アリスは「うわぁ、綺麗なお姉ちゃんだね!」と、獣人の純粋な精神力で見事に魅了耐性をパスして耐えきった。よし、合格だ!そして、アリスの後ろから、もう一人の人物が平然と部屋に入ってきた。


「長旅ご苦労様、ステラちゃん。私もパーティに加えてもらうわよ」


「ええっ!? エルミナ先生!?」そこにいたのは、混沌神のヤンデレ魔改造(ギフト)によって全盛期のツルペタ美少女の姿になった、エルミナ先生だった。


「先生、どうしてここに!?」


「フフ、愛弟子の成長をこの目で見届けたかったの。……それとね。私の肉体をこんな風に勝手に弄くり回した、そのふざけた【邪神(混沌神)】の顔を、この目で身近でじっくりと拝んでやりたくてね」


先生、本人を目の前にしてハッキリと『邪神』って言っちゃったよ!!俺はベールの下で満面の笑みを浮かべ、即座に叫んだ。


「大歓迎です、先生! ぜひ一緒に行きましょう!!」

隣を見ると、これまで全てを手のひらで転がしてドヤ顔を決めていたあの混沌神が、想定外のエルフの最高峰(魔改造済み)の参戦に、見たこともないほど苦虫を噛み潰したような、最高に不機嫌な顔をして黙り込んでいた。

「ざまぁ見ろクソ邪神! お前の思い通りにはさせねえからな!」

完璧なオカン型ストーカーの計画に、初めて特大のイレギュラーを叩き込んでやった。俺の心は、二ヶ月の馬車旅のストレスが全て吹き飛ぶほどに最高に上機嫌だった。

それから出発までの三日間、俺たちはアイテムボックスに黄金商会のVIPカードで買い占めた物資をぎっしりと詰め込み、完璧な遠征準備を整えた。

パーティメンバーは、俺(中身おっさん吸血鬼魔法少女)、

アリス(ケットシーの鍵師)、

エルミナ先生(世界最強のツルペタ魔導師)、

そして影のマネージャー兼御者兼執事(クソヤンデレ邪神)。

「よし! 明日から、いよいよ本当のダンジョン探索の始まりだ!」俺は黒いフリフリ傘をしっかりと握り締め、三年がかり(予定)の過酷で、そして最高に楽しみな大冒険へと向けて、高らかに声を上げるのだった。

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