↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TSしましたが、取り忘れてますよ?  作者: kero


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/60

ヤンデレの愛は呪いと一緒 ♪

「――お見事です、ステラちゃん。もう私から教えることは何もありません」


王宮の特別訓練場。ピンクのハート型の究極魔法が遥か彼方の防護山脈(※先生の魔力で毎朝再構築される)を塵一つ残さず消滅させたのを見届け、全盛期の姿(ツルペタ)のエルミナ先生が、パチパチと静かに手を叩いた。


一年間。俺――ステラ(中身30歳元自衛官)は、ひたすらに、それこそ自衛隊のレンジャー訓練がぬるま湯に思えるほどの地獄のステップ&魔法訓練を続けていた。


普通のエルフなら、この領域に達するまでに最低でも100年はかかります。


それを僅か一年で全てマスターしてしまうなんて、異常です。

……やはり、何者か(クソ邪神)の強大な力が働いているのでしょうね。

私をこの姿に若返らせた、あの力も含めてエルミナ先生はそう言って、細い金髪を揺らしながら苦笑した。


この一年で、俺はついに【アイテムボックス(小)】の開き方も完全にマスターしていた。自衛隊から持ってきていたグロックの予備弾倉や手榴弾、ミリタリースペックのレーション一式を放り込み、いつでも実戦に即応できるロジスティクスを完成させている。


本来の魔法修行ならば、ここでおしまいです。

……ですがステラちゃん、貴方は吸血鬼(アンデッド)でもあるわ先生の言葉に、俺はベールの下でゴクリと唾を呑んだ。


それも、神殿の聖域に立ち寄っても(爆散はしたけれど)滅びず、太陽の下も平気で歩ける。そんな規格外の吸血鬼、神話に語られる吸血鬼の神……

『始祖』並みです。貴方は自分の体について何も知らない。吸血鬼の力の使い方を学ばなくてはなりません。しかし、並みの吸血鬼では貴方の教育係など手に余るわ

エルミナ先生は古木の杖をトントンと地面に突き、真剣な眼差しをこちらに向けた。

貴方と同等の存在に、一つだけ心当たりがあります。非常に危険な場所ですが……

この一年の修行の成果も試してみたいでしょう? ダンジョン『深淵の監視者』へと潜り、その最深部にいる監視者に会いなさい。

……ただし、行くのは貴方一人です。幸いアイテムボックスが使えるようになったのですから、必要なものをすべて入れていけば大丈夫ですよ


「一人でダンジョン最深部……! よし、了解です、先生!」俺の中の少年の精神が刺激され、俺はベールの下で拳を握りしめた。あのクソ邪神と、腐女子のよろず、そして距離感ゼロの男の娘ピノに囲まれた王宮の精神的ディストピアから、ついに一年の時を経て、合法的に単独隠密作戦(ソロ・ダンジョンハック)に出撃できるチャンスが巡ってきたのだ。最高かよ!――だが。


その「ステラちゃんが一人で遠くのダンジョンへ行ってしまう」という決定事項を、天界の特等席でモニターしていた混沌神は。「…………は?」邪神の糸目が、かつてないほどギチギチと、冷酷なまでに鋭く見開かれた。


一年の間、ステラちゃんが一生懸命ステップ踏んでる可愛い姿を特等席で見るのを、僕がどれだけ我慢してたと思ってるんだい? なのに……

次は何? 一人でダンジョン? 最深部……?

往復と攻略だけで、最低でもまた

『もう一年』

は僕の可愛いステラちゃんに会えないってこと……?

混沌神の脳内の、ステラに対するカンストした独占欲とヤンデレメーターが一気にレッドゾーンを突き抜けた。


「ふざけるなよ……!! 僕のステラを、僕の視界からこれ以上連れ去るなぁぁぁぁぁっっ!!!」

ドガァァァァァァンッッッ!!!


邪神の感情の爆発に伴い、彼が住まう絶対安全なはずの「神域」そのものが、凄まじい衝撃波と共にグラグラと大地震のように揺れ動いた。

漏れ出た怒りの暗黒波動が、天界から地上へと一筋の黒い雷となって降り注ぐ。

そして、その邪神の「ガチのブチギレ限界ビジョン」を、王宮の陰でいつも通り最速新刊のネタとして直接脳内受信(モニター)していたよろずは――。


「ひぅっ…………あ、あわわわ……っ!!」あまりの邪神の怒りの凄まじさ、世界の崩壊を予感させるほどの狂気の精神圧(プレッシャー)に完全に脳を焼かれ、よろずはその場で腰を抜かし、情けない声を上げながらビシャビシャと【お漏らし】してしまった。持っていた羽根ペンは恐怖のあまりガタガタと震えて握ることもできない。


「あ、あああ……本物だわ……。あれは、萌えとか同人誌とかのレベルじゃない、正真正銘の、世界を滅ぼす側の『ヤンデレ神』だわ……っ!」


よろずは股間を濡らしたまま、涙をボロボロと流してガタガタと震えた。


今さら……今さらこの公式(邪神)から手を引くことなんて、絶対に無理ね……!? ステラちゃん、お願い、世界のためにも、私たち王宮の腐女子の命のためにも……あのヤンデレ神と一生添い遂げてェェェェェッ


(号泣)!!!


主(あるじ)の貞操と引き換えに世界の平和を願う、最低最悪のメイドの悲鳴が響き渡る。何も知らないステラ(中身30歳元自衛官)は、アイテムボックスに生活必需品をぎっしりと詰め込み、「よし、ソロ任務、いっちょ行ってくるか!」と、最高に晴れやかな笑顔で、邪神の怒り狂う『深淵の監視者』のダンジョンへと向けて旅立つ準備を始めるのだった。


(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。