色々と混ざりすぎてませんかね?
俺って何?お約束のステータスを見た俺は絶望した、なんなんだよ!混ざりもの?って本当に混ざり過ぎだろう。加護もわけ分かんないよ!
ひとまず自分の凄惨な現状(主に下半身と吸血鬼疑惑)を確認した俺は、
覚悟を決めてもう一度ワニの姉さんに会いに行った。
男たるもの、いや、元・男たるもの、コソコソ隠し事をするのは性に合わん!俺はこれまでの経緯を、包み隠さず正直にすべて話した。
その上で、全力で頭を下げて助けてほしいとお願いした。
すると、ワニの姉さんは優しく微笑んで(ワニだけど)言ってくれた。
丁度お店の人が足りていなかったのよ。
うちで働きながら、この世界のことを少しずつ知っていけばいいわ
……抱いて!ナイスガイすぎる。中身は女子の声だけど、やってることは完全にイケメンのそれだ。
「姉さん! 一生ついていきます、姉さんと呼ばせてください!」心の底から忠誠を誓った。
それに比べて、もう一人の従業員のバカ女(名前はまだ知らない)はどうだ。
俺の秘密を冒険者たちにフリー素材みたいに開示した前科があるからな。
お前なんか、呼び名は『女』で十分だ。
「今日は移動とパニックで疲れているでしょうから、働くのは明日からで良いわよ」そう言って、シャルロット姉さんは俺に部屋をくれた。
そう、部屋。……個室だぜ、個室!自衛隊の駐屯地勤務なら、幹部でもない限り大部屋での集団生活が基本だ。
プライベート皆無のゴリゴリの世界から来たら、個室なんて大名並みの超 VIP待遇である。
その後、トイレの場所や食事といった日常生活のルールを教えてもらい、自分の部屋へ。ガチャリ、とドアを閉める。
「……やった、やったぜ! 俺の部屋だ!」ベッドにダイブし、テンションは爆上がり。
そして、一息ついたところで、満を持して「アレ」をやる時が来た。
異世界転生者たるもの、これが出せなければ偽物だ。転生者を名乗る資格すらない、最も大事な通過儀礼。俺は上がりに上がったテンションをどうにか抑え込み、小さな声で呟いた。
「……ステータス」ピコン、と目の前に半透明のウィンドウが現れる。
「出た! 出た! 出たーーー!!」俺は本物だ!両手を天に掲げ、声なき声で全力のガッツポーズと歓声を上げる。
しばらく喜びの舞を踊っていたが、上げた腕がピキピキと痺れてきて、ようやく我に返った。
よし、中身の確認だ。実戦の基本は、まず自己の戦力把握から。
どれどれ……?
【ステータス】
名前:長谷川 聡 年齢:30歳 種族:混ざりもの 性別:混ざりもの
ステータス:力:100 賢:40 速:45 敏:40 魔:70運:22 聖:-60
特性:自己再生(大)、不老不死、アイテムボックス(小)
適正:武器補正(中)、魔法適正(大)、魔法少女適正(極大)
加護:混沌神の加護、鍛冶神の加護、魔神の加護、魔法少女の加護
「……なんやねんこれ」思わず、心の中でエセ関西弁のツッコミが出た。
種族も性別も『混ざりもの』ってどういうことだ。
やっぱり下半身のハイブリッド仕様は世界のシステム的にも「バグ」扱いなのか。あと、聖属性の値が『マイナス60』って。
完全にヤバい側の数字じゃねえか。
やっぱり体質は吸血鬼に寄っているらしい。
教会とか行ったら即チリになるやつか?力とかの数字は基準が分からないから、自分が強いのか弱いのかは謎だ。
だが、定番の『アイテムボックス』があるのはありがたい。
『自己再生(大)』と『不老不死』にいたっては最高のご褒美だ。
自衛官、実質クビになったけど生命保険はいらなくなったな!武器や魔法の適正が高いのも、ファンタジー世界を生き抜く上で頼もしい。
……ただ。ただ、一つだけ、致命的に意味がわからない項目がある。
「魔法少女適正:極大……? 加護にも『魔法少女の加護』ってあるんだが?」
魔法少女。
あの、フリフリの衣装を着て、ステッキを振り回して「ピピルマピピルマ」とか言うやつか?いや、俺、中身は30歳の陸曹だぞ。
もしや、あの魔法少女コスプレをしたら戦力が跳ね上がるとか、そういう嫌がらせか?
しかも他の加護が『混沌神』『魔神』とかいう絶対関わっちゃいけない邪神系なのに、そこに並ぶ『魔法少女』
俺に一体何をさせたいんだ、この世界の神様は。
というかさ……魔法とか具体的な使い方が書いてないんだけど。
アイテムボックスもどうやって開けるんだよ〜〜っ!
ああああ、もう駄目だ!
脳の処理能力を超えた!
「酒! 酒だ! 酒がすべてを解決する!」
バックパックからスキットルを引っ張り出し、
ウォッカを一口、ゴクリ。……ヨシ、不安が綺麗さっぱり消え去った。
アルコール万歳。勢いでもう一口、ゴクリ。うん、いい気持ちだ。
さて、明日からの備えをしよう。支給されている自衛隊の戦闘服や装備一式は、今の俺の小さくて華奢な美少女ボディにはブカブカで合わないものだらけだ。
だが、ここはファンタジーのダンジョン。武器は絶対に必要になる。
さっきの『女』も、腰にデカいナイフ(マチェットみたいなやつ)を差していた。
よし、銃剣をナイフ代わりにしよう。
今の俺のサイズなら、ちょうどショートソード感覚で使えそうだ
念のため、愛銃の『グロック(拳銃)』と予備弾倉を2本。さらに、いざという時の火力枠として『手榴弾』も1個持っていくことにする。
それらを弾薬ベルトにセットし、華奢な腰にきゅっと巻きつけてぶら下げた。
うん、最高にアンバランスで物騒な美少女の完成だ。
ハッ! メイド服なら某ターミネーターメイドじゃないか?魔法のステッキ代わりに黒い傘持ったら、世界も取れるのでは?。
ヨシ! 明日から頑張ろう! ……よし、明日の景気づけに、もう一口だけ飲もう……
(暗転)
……あれ?
気づけば、朝になっていた。
洞窟内の発光プレートは外の太陽と連動して明るさが変わるとか、魔物も強さや出現する種族、更にはドロップアイテムすら変わるとかその為に冒険者も狙ったアイテムのために活動時間を合わせるらしい。
俺はベッドの上で、弾薬ベルトを巻いたままの姿で固まった。
待て。
昨夜、俺はスキットルから……合計で三口(三杯)飲んだ。
そこで記憶が途絶えている。
「どうやら俺の身体は、三杯で意識を失うらしい……」
待て待て待て、ウォッカ三口で強制シャットダウンだと!?前世の俺は、隊の飲み会でどれだけ飲んでも潰れないザルだった。
それが、こんなヤクルトみたいな酒量で気絶する体に退化しているなんて。パニックになったら酒で落ち着くライフライン(ウォッカ)が、まさかの使用回数制限付き
「これ……戦闘中にパニックになって飲んだら、その場で即寝落ちするってことじゃねえか。……超致命的な弱点では!?」
俺の、ダンジョンでの店員ライフ(初日)は、前途多難な予感しか残していなかった。
(続く)




