↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TSしましたが、取り忘れてますよ?  作者: kero


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/59

TS(途中経過)なら、いっそ取ってくれよ!

日本人の中年男性が、邪神が溺愛する為に設定モリモリで作り上げたふたなりに転移された悲劇、今日も理不尽な邪神の愛に悲鳴をあげる日々、果たして平穏な日常は帰って来るのか?

TS(途中経過)なら、いっそ取ってくれよ!

「意味がわかんねえよ〜〜っ!」

長谷川聡(はせがわ・さとし)は、見知らぬ天井に向かって絶叫した。

転生!

なのか? これが噂の異世界転移ってやつなのか!?

実弾演習の真っ最中、近くに雷が落ちたと思ったら、気づけば知らない場所に倒れていた。

そこまではまだいい。いや、良くはないが、百歩譲って受け入れよう。

問題は――TS(性転換)してたことだ。

いやいやいやいや!

「TSなら美少女になれて良かったじゃん?」とかそういう話じゃないんだよ!

TSするなら、元あった方をちゃんと取れよ!

神様だか誰だか知らんが、盛大に取り忘れていますよ!?

何で両方あるんだよ!

俺はこれからどっちの性別で生きていけばいいんだよコンチクショウ!

「ダメだ、混乱しすぎて脳がバグる……。こういう時は酒だ! 酒を飲もう!」

バックパックから隠し持っていたスキットルを取り出し、ウォッカを一口。

カッと喉が焼ける。美味い。

もう一口。うん、ちょっと落ち着いてきた。

ダメ押しでもう一口……。

……ん?

天井? ベッド?

やっぱり夢か?

淡い期待を抱きつつ、自分の胸と股間を交互に触る。

――うん、やっぱりどちらもあるね!

「駄目じゃないか! 酒が足りない、酒どこ!?」

今更ながら、がばりと起き上がって周囲を見回す。

家の中のようだが、どうにも洞窟の中に無理やり家財道具を置いたような雰囲気だ。

壁のあっちこっちに発光する板のような物が不規則に張り付けられていて、そこそこ明るい。

あと、俺は何故か女の子っぽい服に着替えさせられている。

誰だ、俺を着替えさせた奴は。

見たな? 俺のハイブリッドな下半身を見たな!?

「殺すしかないか……? いや酒! いや武器! 武器はどこだ!?」

ベッドの上で一人大パニックを起こしていると、ガチャリとドアが開いた。

入ってきたのは、直立二足歩行のワニだった。

「シャアアアアッ!」

「うわあああ!」

咄嗟に手が出た。

人間相手なら顎のところに掌底を打ち込むところだが、自分の背が縮んでいるせいか、格闘ゲームの昇龍拳みたいなポーズになってしまった。

(お、俺、今のポーズちょっとカッコイイんじゃないか?)

などと思っている暇はなかった。

結果、ワニには何の効果も無かった。ただ手が痛かった。

クソ、痛み止めに酒を飲まねば。酒どこ?

すると、ワニが喋った。

しかも流暢な日本語で。

「大丈夫……?」

声は、ひどく可憐な若い女の子のものだった。

「……ダメだ、俺は意識を手放した」

(暗転)

次に目を覚ました時も、やっぱり目の前にワニがいた。

今度は自衛官としてのプライドを総動員し、正常かつ落ち着いて対応することに成功した。

「すいません、ここは何処ですか? 貴方は誰ですか?」

ワニは、相変わらずひどく優しい女の声で話してくれた(ワニなのに)。

ここはアララット王国の東の端にあるダンジョン。

自分はダンジョンの中層で、冒険者相手の雑貨屋を営んでいる『シャルロット』という名前だと教えてくれた。

もうお腹いっぱいです、勘弁してください。

情報過多でフリーズしていると、ワニ――いや、シャルロットさんが微笑んだ(気がした)。

「お腹が空いたの?」

持ってきてくれたのは、肉と野菜らしき何かを塩(?)で味付けした温かいスープだった。

一瞬、原形を留めた生肉を「食え」と言われるのかと身構えただけに、文化的でビックリした。ワニだけど。

シャルロットさんの話によると、従業員の子が町に買い出しに行った帰り道、倒れている俺を見つけてここに連れてきてくれたらしい。

持ち物はすべて保管してあるとのこと。服は臭かったから洗っておいた、とも言われた。

なんて女子力の高いワニなんだ……。

さて、自分のことをどう説明しよう。

とりあえず、念のために「自分と同じような姿の種族はいるのか」を初めに聞いてみた。

やっぱりというか、自分のように『両方ついている』者はいないらしい。

シャルロットさんは見ていないが、従業員の子が着替えさせる際に見つけて報告してきたのだとか。

乙女の秘密を見ただけでなく、上司にほうれんそう(報告・連絡・相談)するなんて!

秘密を知られたからには、その従業員を……!

物騒なことを考えていると、年の頃20歳くらいの、普通に可愛い人間の女の子が入ってきた。

「貴様かーーー!」

と、心の中で刀を抜いたが、普通にいい子だった。

汗臭く、その上ウォッカ臭かった俺を店前の湧き水でガシガシ洗って、自分の服まで着せてくれたらしい。

ただ、「服の代金はあとで請求するね」と言われた。そこはタダでくれる流れじゃないのか。

それとなく、俺の股間のことについてツッコミを入れてみた。

「あ、それ? 最初、女の子だと思って脱がしたら……なんか変なのが股間に付いてたからさ。魔物だったら大変だし、近くの冒険者さんを呼んで見てもらったんだけど分からなくて。結局、セーフティゾーンにいた冒険者に片っ端から診てもらって安全性を確認したんだよ!」

「あ〜〜〜〜〜〜っっっ!!」

俺の自制心を褒めてほしい。

いま目の前の優しき従業員をマウントポジションからボコボコにしなかった俺を、世界中の自衛官は褒め称えてほしい。

酒! 酒がいる! 気が狂いそうだ!

何とか……何とか大人の自制心を取り戻し、返してもらった装備を受け取る。

ミリタリースペックのバックパックからスキットルを引っ張り出し、とりあえず一口。

カッとする感覚が、ようやく俺の脳を現実に引き戻してくれた。

胸やら股間やらでパニックになり、ワニやら、お節介な従業員のせいでキャパオーバーしていたが、ようやく落ち着いて現状を整理できる。

まずは自分だ。

俺は長谷川聡、30歳。今年曹長に昇任したばかりの陸上自衛官だ。

実戦装備で、沖縄の米軍演習場にて訓練を受けていたはずだった。

夜間偵察訓練で、斥候として一人で先行していた。そこへ雷が近くに落ちたと思ったら……。

気づけば、昼間の全然知らない地形にいた。

妙に服がダボつくと思って手袋を外してみると、手がやたらと小さく、白く綺麗になっていた。

そこからの混乱は加速する。

胸があった。しかも結構でかい。

金髪の髪の毛が胸のあたりまで伸びていた。

(これは……お約束のTS異世界転移ものか!? 俺もなんか新天地でブイブイ言わせられるのか? ハーレムか!?)

一瞬テンションが上がり、身体の変化のチェックを続けた。

いいね、いいね! 鏡は見てないが、耳が尖っている。エルフかな?

エルフで胸がでかいとか、完全なる勝ち組決定じゃん、最高かよ!

手足も細くて長い、いいね!

そして最後に、念のため股間に手を当てた!?。

直接ズボンに手を突っ込んで、触ってみる。

――在るじゃねえか。

金玉は無い(というか代わりに女性器がある)が、棒が、在る デカい 本当にデカい 俺の前腕部位あるんじゃないか、立ったらどうなるんだ?……怖い。

その瞬間、上がりきった感情は垂直落下してパニックへと変わったのだった。

そして、今に至る。

「……はぁ」

シャルロットさんに鏡を借りられたので、気になっていた顔を見てみる。

おおお……鏡に映っているのは、間違いなく絶世の美少女だった。

……うん? メガネ?

演習は夜間だったから、暗視装置(ナイトビジョン)のために裸眼だったはずだ。

こんな縁の丸いメガネは持っていないのに、なぜ装着している?

外して眺めてみるが、普通のメガネにしか見えない。

そのまま、メガネを外した自分の顔を鏡で凝視してみる。

「……目が、真っ赤だ」

エルフじゃなくて、これ吸血鬼(ヴァンパイア)か何かってコト!?

いよいよ雲行きが怪しくなってきた。

とりあえず、もう一口ウォッカを煽った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。