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084 悪魔を嬲る狂気

(およそ3,300文字)



かなり強めの性的描写や表現があります。




〈この話の登場人物〉


◯ヴァルディガ…ベイリッドの部下、ペルシェの警備責任者。オクルスに上位悪魔を用意させた張本人。


◯ドゥマ…ベイリッドの部下。ヴァルディガの片腕。


 それは、サルダン継承戦争が始まるより少し前の話──




 ヴァルディガの喉笛を掻き切るのは容易い。


 レベル差は顕著であるし、制約の腕輪が壊れた今となっては悪魔に命令に従わせることもできない。


 だが、イゼリアが彼を殺さなかったのは単なる気まぐれなどではなかった。


 彼の提案が少し面白く、それに乗ってやろう……そんな遊び心が疼いたのだ。


 それは長らく鎖で繋がれ、暗闇の中で過ごすしかなかった彼女が、酷く退屈を持て余していたせいも大きかった。



 薄暗い室内。暗いのは、ただ単に照明を付けるのが面倒だったからだ。


 ベッドが激しく軋む音、ヴァルディガの汗が流れ落ちて白いシーツを濡らす。


「……はー、はー」


 荒い息遣い、イゼリアは少し朱に染まった顔を上げ、後ろで揺れるヴァルディガを見やる。


「もう、そろそろ……限界じゃねぇのか?」


「……まだまだ平気だぜ」


 強く腰を掴まれ、イゼリアは眉を寄せる。


「へー。かなり、魔法かけてるのにな」


「なぜか、かかりが悪いのですヨ」


「“不感症”なんじゃないスか? コイツ」


 リヴェカとノーリスは一糸も纏わぬ姿で、左右から挟み込むようにヴァルディガに絡み付いている。


 彼女たちは長い舌で耳を舐め、鋭い歯で噛み跡をつけたり、耳元で呪文ような囁きを唱え続ける。


「快楽を数十倍に高める呪詛だ。“契約”に基づき、先に果てたら……」


「何度も言わねぇでもわかってんよ。“命”がなくなる……だろ?」


「そうだ。テメーが望んだことだぜ。どうせ死ぬなら、“気持ちよく死にたい”って願いを……」


 イゼリアは自分の中の物が更に硬くなる感触に、軽く目を細める。


「お前らこそ、“人間の男”は久しぶりなんだろ?」


 ヴァルディガはニヤリと笑うのに、イゼリアたちは一瞬だけ止まる。


「47匹も男の部下がいて、交わろうともしねぇのは、飽きたのか、はたまた楽しませてくれねぇからだろ」


 伸ばした舌を軽く噛まれたノーリスの目が揺れ、胸の突起をつままれたリヴェカがヒュッと息を呑む。


 彼女たちが無言だったのは、それが図星だったからに他ならない。


 悪魔族は基本的に自分の欲望に忠実だ。男性型悪魔たちは、自分の欲求を満たすことを優先する。命令すればそれは防げるが、“相手に合わせよう”という意識は皆無であり、所詮は“制約されての行為”という感じは否めなかった。


(“欲望”……。人間は果てしない欲望を持つ。だからこそ、悪魔は人間と交わる。だが……)


 イゼリアは“そのまま”の状態で、横にグルリと回り、ヴァルディガと向かい合う形になった。


「ッ!」


 一瞬生じた痛みにヴァルディガはわずかに呻いたが、すぐに笑みを取り戻した。


「人間より、悪魔の方が上だって思い知らせてやるよ」


「そりゃ楽しみだぜ」


 イゼリアはそのままヴァルディガを押しやるように倒すと、言葉通り、上になって動き出す。 


 ノーリスもリヴェカも妖しげな笑みを浮かべ、一層のことヴァルディガの身体に触れる。


「こいつはぁ……スゲェな」 


 波のように押し寄せてくる快楽。肉体だけではなく、精神までも貪り尽くそうという悪魔らしい貪欲さがあった。下半身は痺れ、半ば感覚まで失われつつあるのに、強い興奮と快感だけが、熱を持って疼き、抜け出る場所を探して暴れ回っているかのようだった。


「ホラホラ。どうだぁ? 呑まれちまぇよォ。ヴァルディガァ。オレさまの中はキモチイイだろ?」


 さらに激しさを増し、イゼリアは甘い蜜のような唾液をヴァルディガの胸部に垂らす。熟れた果実のような薫りが漂った。

 

「ああ……ああァ。最高だぜェ。イゼリア。このまま魂を奪われちまってもいい。……だけどな、こんなもんじゃ物足りねぇよ」


 ヴァルディガの目が大きく見開かれ、獰猛な笑みと共に鋭い犬歯が顕になる。


「あ……? テメー、何を……」


 イゼリアの細い腰を、ヴァルディガは掴む。そして勢いよく下から突き上げた。


「あッ!!」


 イゼリアは一瞬で意識が飛びそうになる。今まで経験したこともない脳が痺れるような感覚に、両手両足の爪先がピンと張る。


「まだだぜ」


「ア……オッ……! オオゥッ!!」


 繰り返し突き上げられ、イゼリアは白眼を剥いて痙攣する。


「もう、やめ……ろ……」


「あ? 聞こえねぇな!」


「ヒギィッ!」


 涙と唾液を撒き散らして、イゼリアは頭を横に振る。


「イゼリア姉ェ!」


「姉様!」


 彼女らしからぬ状態を見て、ノーリスもリヴェカも慌てて止めに入ろうとした。


「おっと、邪魔するなよ。次はお前たちの番なんだぜ」


「調子に乗るな……ヨ! アッ!」


 ヴァルディガの指がいきなりノーリスの秘部を突き、彼女は目を見開く。


「ふざけんなよォ。ヴァルディガ……」


「なんだ? お前も欲しいのか?」


 腰を浮かせて逃げようとしたリヴェカの脚を掴んで引きずると、同じように局部を弄ぶ。


「クッ……」


「なんだ。強がってる割には、こっちは随分と素直じゃねぇか」


 その気になればヴァルディガの腕を引き千切ることもできた。

 しかし、ノーリスもリヴェカも紅い頬をして、その視線はヴァルディガとイゼリアの接合部位を凝視していた。その目は“自分も欲しい”という欲望に染まっていた。


「おいおい。まだ休憩じゃないぜ」


「……テメー、本当に人間か?」


「どうだろうな。人より欲求が強いってだけだと思うぜ」


 ノーリスとリヴェカを弄びながら、イゼリアを揺すり始めるヴァルディガ。流れは完全に1人の男によって支配されていた。


 次第に3人は抵抗する気も失せ、今はただ快楽に身を任せ酔いしれようと、考えることを止めたのだった──。




□■□




 数時間後、ヴァルディガはそっと部屋を出て来る。


「アニキ!」


 すぐにドゥマが心配そうな顔を浮かべて走って来た。ヴァルディガが戻って来るまで、律儀に部屋の外で待っていたのだろうと分かる。


「大丈夫ですか?」


 思わず「大丈夫じゃなきゃここにいねぇ」と言いそうになり、ヴァルディガは思い止まる。


 真剣に心配していることから、中で何が行われていたのかドゥマが察している様子はない。密室で秘密の会談をしていたぐらいにしか思っていないのだろう。


「バカってのも罪だよな」


「え? どういうことっすか? バカって誰が? あの女悪魔たち?」


「……なんでもねぇよ」


 説明するのもバカバカしくなり、ヴァルディガは手を振って歩き出すが、鬱陶しいことにドゥマは後を付いて来る


「アニキ。話し合いは……」


「上手くいった。俺の言う通りには動いてくれる」


「ホントに? さすがアニキ!」


 ヴァルディガは彼には聞こえない声で、「俺の言うことしか聞かねぇって意味だよ。バカ」と呟く。


「なぁ! アニキ!」


「なんだ。こっちは頭がガンガンしてんだ。でっけ声で……」


「鼻血が……」


「あ?」


 ヴァルディガは眼を瞬くと、自分の鼻下に指を当てる。べっとりと血が皮手袋についた。


「あー。飲み過ぎたか」


「飲み過ぎたって?」


「精力剤だよ」


「……え? ええッ?」


「それも致死量の一歩手前だ。そら、副作用も半端ねぇよな」


 致死量と聞いて、ドゥマが真っ青になる。


「アニキィ。死んじまうぜ……」


「ここで死ぬくらいなら、とっくのとうに死んでんよ」


 ヴァルディガは先ほどの“命を奪われるかもしれない瀬戸際”を思い起こし、ブルッと身を震わせる。


「あー、最高にキモチイイな」

 

 手袋についた血を舐め、ヴァルディガは先ほどの行為を思い返す。


「……さっき散々、発散したのに、また催してきやがったぜ」


 鼻血を乱暴に拭うと、ドゥマの顔を見やる。


「アニキ?」


 肩を強く掴まれたドゥマは、困惑の色を浮かべた。


「……そういや、お前は柔らかい尻してたな」


「え?」


「なあ、ちょっと貸せよ」

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