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【9月30日非公開予定】奴隷商人



 奴隷のいる村……もちろん全部じゃないんだろうけど、他の村とかでも、こういった奴隷は多く存在するのだろう。国とか、規模が大きくなればなおのこと。


 ……私が召喚されたマルゴニア王国でも、もしかしたら同じように。



「ご覧になっていたのですか、アルファード殿」


「奴隷が市場に並ぶ前に声をかけるのは無作法だと思ったんだがね。どうしても、質のいい奴が欲しかったもので」


「いぃえ、他ならぬアルファード殿ならば歓迎です。他の者に取られる前に見定めておきたい気持ち、よくわかりますぞ」



 コルマが話す、二人……無精髭を蓄えた太めの男に、長身だが足の短い男。彼らは満面の笑みを浮かべているが、胡散臭いことこの上ない。


 コルマもコルマで、よくもまあ普通に話せるものだ。……いや、世話になってると言ってたし、古くからの付き合いなら慣れもするか。



「して、そちらのお嬢さんは?」



 男達が疑問に思うのは、コルマの後ろに隠れるように立っている私の存在だ。私のことを奴隷と思っていないのは、比較的きれいな身なりと、たった今奴隷を買いに来たコルマが奴隷を連れてるわけがないと感じたからだろう。



「彼女は、アン・クーマ。この村へ来る途中で出会ったんだ。心配しなくていい、害はない。どうやら奴隷に興味があるようでね、連れてきたんだ」



 言ってないけどな、奴隷に興味があるなんてそんなこと。あったとしても、お前が思う興味とは180度違う。


 勝手に同類扱いされて、勘弁してほしいくらいなのに。



「はじめまして。クーマと言います」



 だが、ここで否定するわけにもいかない。この男ほど歪んでないと信じたいが、私だって、奴隷に興味はあるのだ。


 さっき一瞬だが見えた彼らの目……あれは世界に絶望し、光を失った目だ。どろどろして、怒りとか悲しみとか、そんな言葉では表しきれない。……私と、同じ目だ。



「ほう、女性で……しかもまだお若いのに、奴隷に興味がおありとは」



 太めの男が、私を見定めるように覗きこんでくる。フードで顔を隠しているから顔全体は見られていないとはいえ、さすがに覗きこまれると……



「これこれ、アルファード殿が連れてきたお方だ。それだけで充分でしょう」


「そうですな、これは失敬」



 そこへ、長身の男からのフォロー。助かった……よくか悪くか、コルマがこいつらに絶大な信頼を得ているというのは、わかった。



「それで、クーマ殿はどのような奴隷をお求めで? やはりアルファード殿のように、質の良さを求めますかな?」


「質はいいんですがね、リーブス殿。あまり長持ちしないのはなんとかなりませんかね」


「それは、アルファード殿の使い方が荒すぎるのでは? 物は大切に使わねば、すぐに壊れてしまうのは当然の理」


「ロッシーニ殿の言うとおりですぞ。ま、奴隷を大切に、とは矛盾しておりますがな」


「違いない、あははは!」



 ……なんて吐き気のする会話なんだろう。まさか、この世界にこんな腐った人間がいたなんて。私が勇者として旅をしていたときには、こんな……


 ……結局、見ていたのはうわべだけってことか。どんなところにも、クズはいるんだ。


 コルマと、そしてリーブスと呼ばれた長身の男、ロッシーニと呼ばれた太めの男は、なにが楽しいのか笑っている。大の男三人が笑っているというのは、なんとも奇妙な光景だ。その内容が特に。



「実は私、奴隷に興味はあるんですが、こういうのは初めてで……」


「なんと! そうでしたか……ではぜひとも、アルファード殿同様、私共のお得意様になっていただきたい」



 こういうのをごますり、って言うんだろうな。私も、勇者のときに経験があるからよく覚えてる。



「では、まずは見ていただきましょう。私共が扱うのは、どれも一級品のものばかりですからな!」



 奴隷に一級とかあるのかは知らないが……まあ自慢の商品であるらしい。はぁ、もうこいつらここで殺して、世界に絶望した奴隷だけ連れて行ってしまおうか。


 ……さすがに、無謀だな。この二人の男はともかく、コルマは実力が知れない。なにより、この馬車の中にいる何人、もしくは何十人の奴隷を連れていくのは目立ちすぎる。


 ここはひとまず、成り行きに任せるしかない、か。

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