【9月30日非公開予定】違和感の村
ポニーに乗った私と、リザードルに乗ったコルマは目的地の村を目指し、お互いに並んで足を進めていた。
先ほどの集落から、この方角は……私は、行ったことのない所だ。この先になにがあるのか、まったくわからない。
「さて、もうすぐで村につく。アンは、はじめて行く村なのかい?」
「はい、そうなんです。頼まれ事があって行くことになったんですけど、行くのは初めてで」
もちろん、頼まれ事というのは嘘だ。当たり障りのない単なる口実……それを深く追及する人は、普通いないからね。
逆に、行くのが初めてであることは、嘘じゃない。嘘をつくときは、時折真実を混ぜるのがミソだってテレビで見たことがある。
「そうか……なら、少しだけ驚くかもしれないな」
「驚く?」
初めて行く……それは、驚くことになるのだと彼は言う。その言葉の意味するところは、私にはわからない。
なので、その意味を問いかけるが……
「バルルォ!」
それよりも先に、リザードルが鳴き声をあげる。それにより意識はそちらへと持っていかれ……リザードルの視線の先、足が向かうその先には、ひときわ大きな村と呼べる一帯があった。
どうやら、次なる目的地についたらしい。
「ま、行ってみればわかるさ」
と、説明を省略したコルマだが……確かに、見た方が早いかもしれない。そういうわけで、私もそれ以上の追及をやめる。
気にはなるけど、それもあと数分でわかることだ。
「さ、入るぞ」
村の入り口を見つけ、そこへ向かう。外から見た限りでは、単に少し大きいだけの村だけど、内部はどうなっているのか。
外からは、大きな壁のようなもので村を囲っている。村とは言うが、その規模はそんじょそこらの村とは規模が違う。国とまではいかないが、なるほど大きなところだ。
村へとつながる門を潜り、そこにあったのは……
「おぉ」
これまで目にしてきたものとは、全然活気の違う村。人の往来は多く、あちこちで賑やかな声が聞こえている。大きな村ではあるけど、人と人との距離がだいぶ近いようだ。
……これだけの人間が、これだけの笑顔が、私の救った数……そして、私がこれから手にかける数だ。
「どうした、アン」
「なんでも、ないですよ」
いけないいけない。妙に鋭いこの男の前じゃ、下手に思案することも出来ないな。
……それにしても、この村のなにに驚くっていうんだ。確かに、村の規模こそ大きいけど、驚くというほどのものでもないと思うけど。
「あの、コルマさん。この村になにが……」
「アン、この村のこと、どう思う?」
この村のなにが驚くのか。それを聞くよりも前に、コルマは質問してくる。この村のことを、どう思うかだって? そんなの……
「賑やかな、村だなと」
こう答えるほかに、なにがあるというのだろう。
ただ、正直な話……村に入った瞬間から、謎の違和感のようなものを感じてはいるけど。
「あぁ、そうだな。この村は賑やかだ。けど、なんの対価もなしに賑わっているわけじゃない」
「?」
なにを、言っているんだろう。この男は。はっきり言ってくれればいいものの。
そうやって問答している間にも、私達はいつの間にか、人通りの少なくなってきた場所へと足を進めていた。いや、正しくはコルマに着いてきただけなのだから、連れてこられたと言った方が正しいかな。
なぜこんなところに……まさか、私の正体がバレた? 始末するために人気のない場所に……いや、それならわざわざ村に来る必要はない。それとも、仲間が近くに控えているとか?
「……」
急に、コルマの足が止まる。それに伴い、私も足を止まると……先に足を止めたコルマが、私に視線で促す。あちらを、見ろと。
建物の影に隠れるようになっているこの場所から、顔を覗かせる。その先には、なにやら大きな馬車のようなものが止まっていた。その近くには、三人の男が話をしている姿がある。
なにかの商業的なものだろうか? それにしたって、なんでこんな人気のないところで……
「!」
次の瞬間、馬車の扉が開く。中から、人が出てくる……それも、一人や二人ではない。なんだ?
誰も、俯いて暗い顔をしている。老若男女、人間獣人と様々な人種。しかも、手首に手錠をはめられ、その首には重々しく首輪のようなものがはめられている。どう見ても、チョーカーのようなファッション的なものではない。
これだけの要素があれば、想像はつく。彼らが、なんなのか。彼らは……
「アレは、奴隷だよ」
私の疑問に答えるように話すコルマは……彼らを『アレ』扱いし、その表情には笑みが浮かんでいた。




