【9月30日非公開予定】王国元騎士
ボニーに乗り、私は進む。地形はよくわからないが、一度来たことのある村である分、どの方角に行けばなにがあるかくらいは覚えている。
この道を進めば、確か小さな集落があったはずだ。とはいえ、一度しか来たことのない場所だし、私は記憶力に自信がある方ではない。
今度こそ、マルゴニア王国への手がかりを聞き出さないと……
「ん、そういえば……」
そこでふと、思い出す。今から行く集落には……マルゴニア王国の元王国騎士がいたはずだ。その関係で、その集落では特に苦労とかなく馴染めたのだ。
元とはいえ、王国の騎士……勇者パーティーメンバーではなかったが、それはすでに騎士を引退しているから。少なくとも、そう思えるくらいの実力を感じた。
ということは……さっきの村のように、すんなりとはいかないわけだ。
「……ふふ」
私の目的は、復讐だ。だけど、抵抗のない人間を殺しまくるというのもあっけないものだ。こんなに簡単に済んでしまっては、私の気が済まない。
元王国騎士ならば、それなりに強いだろう。それを思って、無意識に私は笑っていた。
もしかしたら、無抵抗の人間を殺すことに多少なりとも罪悪感があったのかもしれない。けれど、少しでも抵抗があるなら……その罪悪感は消えるだろう。
その気持ちは矛盾してるし、そもそも復讐なんて普通考えることではない。それも、個人でなく世界に対して。
……この世界で過ごすうちに、私は『普通』ではなくなっていたのかもしれないな。
「……っと、見えた」
ボニーのスピードは、この世界の生き物の中でも上位にあたる。そのおかげか、次なる目的地……集落が、見えた。
先ほどの村よりは小さく、人口も少ない。だが、関係ない。私の復讐対象からは消えないし、あそこには王国に所属していた人間がいる。
殺す前に、なにかしら手がかりを得られればいいんだけど。
「……うん?」
次なる標的を定め、決意を固める……が、視界に映る集落がどうも様子がおかしい。
まだそこまで近づいたわけではないが……集落から、もうもうと黒い煙が上がっているのだ。単に火の取り扱いを誤った、というレベルではない。
火事か……それか、誰かが人為的に火を起こしたか。魔王がいなくなり平和になったこの世界で、そんな悪意があるのだろうか。
……人間なんだ、脅威がなくなれば別の脅威が現れるだけ。現に『英雄』と呼ばれた私が、この世界を壊そうとしている。いい例だ。
「ま、関係ないか」
あそこでなにが起こってようが、私には関係ない。私はただ、やるべきことをやるだけなのだから。
たとえなにがあろうと、やることは変わらない!
「キミは、ここにいてね……!」
集落へと近づいたところへ、ボニーから飛び降りる。首輪とかで縛れば逃げないのは確実だが、このまま放置しててもこの子はきっと逃げない……そう感じた。
この子は、貴重な移動手段だ。復讐の際に、巻き込まれて傷でも負ってしまったら困るし。
そして私は、ボニーを置いて集落へと足を踏み入れる。
「……!」
……奥へと進むと、そこには……複数の建物を巻き込む大火事が起こっていた。そして、火を背に立つ一人の男が、そこにいた。




