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短いです。
ゆっくりと空が夜に近づいていく。
街灯にぽつり、ぽつりと光が灯って暗闇を消していく。そんな中をひたすら走り、私は選択をした。いや、選択しようとして足を止めた。
よくよく冷静になってみよう。
視界に映る選択肢を睨むように見つめた。
√カルナード
√アルト
√リズウェルト
▽√??
??がそうだとは確信はないけれど、願望を胸に再び足を動かす。
どこにいるか判らない。
でも、選択肢のままに行けば――逢える!
・・・逢えるよね?
どうしようもなく不安を覚えて、また足が止まった。
大丈夫、と心の中で言ってみるけどまったく大丈夫に思えない。せめて??がそうだと確信できたらいいのにと、親の仇のように選択肢を凝視した。
時間制限で変わったりしないかな?むしろ変われ。変わってください。土下座するから。
▽√ヴェルナンド
√グランドール
「!」
神々の王の気まぐれか知らないが、願いが叶った。
現れた名前に鼓動が高鳴る。気のせいか、顔が熱い。口から水分がなくなって、喉が痛い。緊張してるのかも・・・。両手で頬を包み、眼を伏せた。
息を吸い込む。
吐き出し、また息を吸い込んだ。
ああもう、ちっとも心臓が落ち着いてくれない。
幼馴染三人の名前には、ときめかなかったし羞恥を覚えなかったのに・・・。ただ選択肢に名が出ただけでこうなんて、これじゃあ、本人にあったらどうなるのか。頭と心臓が破裂しそうな予感だけはするよ。うう・・・身体が熱い。
自覚した途端に、ただの名前が宝物のように輝いて見えるなんて・・・。重症だ。どうしようもない。もう、惚れたら負けってこう言うことなの?ああ、心臓が痛いよ。
「すー・・・はー・・・」
気持ちを落ち着かせるため、深呼吸をする。
これで何度目の深呼吸だ。我がことに呆れつつ、繰り返す。・・・駄目だ。精神が興奮して冷静になれない。心臓痛くてもう無理。
こんなの私じゃない。
そう思うのに、私の意思に反して感情が暴走して身体を支配する。
「・・・大丈夫、大丈夫」
呪文のように何度も呟く。
大丈夫。
想いを言葉にするだけ。
ただそれだけ。別に両想いになりたいとか、関係を変えたいとかじゃなくて・・・。いや、想いを告げたら関係は変わるか。それは嫌だ。
もし振られたら、想いを否定されたら。
想像だけで胸が苦しくて、痛い。
涙が出そうになって、唇を噛みしめた。鉄の味が口に広がる。気持ち悪い。
両手で顔を覆う。――眼元が熱い。
息を吐き出す。――唇が震えた。
「大丈夫・・・大丈夫、大丈夫」
何度も、何度も、暗示のように繰り返す。
大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。だい・・・何が、大丈夫?
もう訳が分からなくなってきた。
どうしたらいいんだろう。
私は何をすべきなんだろう。
想いを告げる?どうやって?何を言えばいいの?「好きです」って言って逃げればいい?言い逃げ・・・あ、いいなそれ。
「――――もう、当たって砕けてこよう」
玉砕覚悟で!
今の関係性が壊れるのは嫌だけど、想いを告げるってことはつまりそう言うことだよね!空を見上げれば、綺麗な月が輝いている。・・・なんか、ルキが応援してる気がしてきた。いや、応援はされたな。うん。されてた。
よし、女は度胸!
変な風に吹っ切れたけど、この勢いでぶつかっていこう。その結果、元の関係に戻れなくても仕方がない。恋とはそう言うモノだと思うし。
あ、もしかしたら友人関係は続けられるかもしれない。
希望を持っていこう。
そうしよう。
むしろそう考えないと足が竦んで動けない。
・・・臆病者め。
ばしばしと両足を叩き、乱暴に眼元を拭う。袖が若干濡れてるけど気にしない。唇もまだ震えてるけど、無視しよう。
「ふー・・・よし!」
息を吐き出し、気合を入れるために頬を叩いた。
痛い。力を入れすぎた。痛い。
▽学校に行く ↑ヴェルナンド
公園に行く ↑グランドール
眼の前に、選択肢が現れた。
今ほど、このスキル擬きに感謝したことはない。神々の王にだって笑顔で「ありがとう」を言えるぐらいだ。その後、自己嫌悪しそうだけど。
でも、これで迷わず行ける。
足を止めずにすむ。
「・・・ふぅ」
胸元を握りしめ、眼を閉じた。
「行こう」
緊張で声が震えた。
足が思うように前に進まない。――ええい、このヘタレチキンがっ!
ばしばしばしばしばし!とこれでもかと言うくらいに足を叩き、ついでに頭も叩いた。痛い。泣きそう。
くっそ、ここまで臆病者だとは思わなかった。
新発見だね!
嬉しくない。
歯を食いしばり、憎悪の眼で足を睨む。・・・意思の力で動かすことが叶わないなら、もうね、仕方ないよね。にゅふふふ・・・最終手段だ。
――選択することで、強制的に動いてやる!
自棄だった。
判り易く自棄だった。
後々で悔やむことは解っているが、もうこれ以上の方法を思いつかなくて暴走した。早く、早く想いを言葉にして、この胸の痛みと苦しみと羞恥から逃げ出したい一心だったんだから仕方がない!私、悪くない!
「頑張れ、私!負けるな、私!」
声に出したら情けなくなったけど、これで逃げることは出来ないと覚悟は決まった。
▽学校に行く ↑ヴェルナンド
公園に行く ↑グランドール
眼の前の選択肢に右手を伸ばす。
人差し指で、自覚した想いの主の名をなぞる。・・・なんで恥ずかしくなる、訳が分からないよ。口から出た息が、妙に熱っぽくて嫌になる。
「どうか」
どうか、どうか。
臆病な心が表にでてしまわないように。
気持ちを最後まで、言葉に出来ますように。
逃げ出さない勇気を、私にください。
「ふぅぅ」
空を見上げる。
――夜空に映える月しか見えない。
眼を閉じた。
――脳裏に顔が浮かび上がってくる。
息を吐き出す。
――愛おしいと、恋しいと気持ちが騒ぐ。
眼を開けた。
――彼を想うだけで心が震える。
息を吸い込む。
「よし・・・行こう」
最悪を考えず、ただ、想いを告げることだけを念頭に。臆病者は考えた時点で逃げたくなるからね。
さて、頬を叩いて気合を入れよう。
私の初めての恋を、どうか伝えさせてください――――。




