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ヒューストン・スティール・ホース 〜草食男子、ワイルドガールと終末アメリカツーリング〜  作者: 遊星


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27話 強襲隊(後編)

イータンあらためアトラスが、ストローマンのパワードスーツを圧倒し、押しつぶさんとする。


脚を撃たれたホワイトが、エスカレードから散らばった武器の方へ必死に這い寄る。


「いいぞイータン、時間を稼いでくれ……あれは!」


炎上しているエスカレードの近くに、格好の武器を見つける。


「弾丸は……!?」


単分子ワイヤーによる攻撃で武器弾薬が散乱しているなか、一発だけ見つけ銃身に込める。


「一発だけ……!」




手四つで押されているストローマンが、下からの膝蹴りでアトラスの右腕をちぎり飛ばす。アトラスは構わず左腕の鉄槌でストローマンを地面に這わせる。


「このガラクタがぁ!」


ステップインしたストローマンの崩拳がアトラスの左脇腹を吹き飛ばすが、同時に力任せのフックがストローマンの顔面にクリーンヒットしヘルメットごと吹き飛ばす。


互角、いや僅かにアトラスが上回っているかと思われたその時、再び暗闇からの狙撃がアトラスを襲う。


2発。残った左腕と、右足の付け根を撃ち抜かれ跪くアトラス。

しかしその時ホワイトは180km/hのスプリットを真芯で捉える視力で、ガンファイアの発生源を捉えていた。


頭部を担うイータンを狙って、再び放たれる弾丸。そのガンファイアが網膜に届くよりも早く、撃たれた脚でホワイトは駆け出していた。


背後からストローマンに近づき、背中からの体当たり『貼山靠』を炸裂させる。体勢を崩しよろめいたストローマンのこめかみをライフル弾が撃ち抜く。


ストローマンはまるでダメージなどないかのようにこめかみを押さえて振り向き、


『信じられない』


と声にならない呟きを発し、どうと倒れた。


ホワイトはストローマンの最期など目もくれず、転がるように先ほど見つけた武器の元に戻っていた。


ヘカートⅡ対物ライフル。1800m以上の射撃を想定して設計されたライフルだ。二脚を利用した伏せ撃ちという最も精度が高い射撃姿勢で放たれた12.7mm弾は、イータンを撃ったガンファイアの地点に正確に吸い込まれていった。


「手応えあったぜ!ストライク……いやデッドボールか」


ヘカートを杖にしてなんとか立ち上がったホワイトが、こと切れたストローマンの幼い顔を見下ろす。


「悪いなストローマン、八極拳なら俺も使えるんだよ。21世紀のレトロゲームでやり込んだからな」




またもや時を戻し、残る一組マミコと強襲隊リーダー、ユディトの運命を追うことにする。


……いや、訂正しよう。時を戻す必要はなかった。他の2組の戦闘が決着した時点でも、2人は最初と全く変わらないスピードで斬り結び続けていた。


ユディトはトンファーの長柄部分がブレードになった武器を左右に持っている。逆手に構え、肘打ちとともに斬撃を放つ。互いの膝がぶつからんばかりの超接近戦だ。


マミコは左手の脇差で追い払いつつ長刀の間合いに持ち込みたいが、ベネディクト戦で負傷した左腕も思うように動かない。貼り付くように懐から離れない敵の斬撃をなんとか凌いでいる状況だ。


痺れをきらせたマミコが、ユディトの肘打ちに合わせて逆に距離を詰める。脇差の柄頭を鳩尾にめり込ませ、ヘルメットの顎に手をかけ背負投げにとらえる。


倒れたところに放たれた長刀の突きを転がって躱し、距離をとるユディト。ヘルメットを脱ぎ捨てて吐瀉物をぶち撒けながらも、その表情は愉悦に溢れている。


「さすがだ!」


マミコが脇差と長刀を鞘に納める。長刀の柄を握り、ほぼ背中を向けるまでに身体を捻り力を溜める。


「イアイギリか……!」


ユディトはトンファーソードを地面に刺して徒手になると、シリンジを自らの首に刺して投げ捨てる。


マミコの居合は古来からの術式にくわえ、コンバットブーツに仕込まれた電動スパイクとボディアーマー背部の推進装置で爆発的な初速を得る。


マミコが雷鳴の如く一瞬で距離を詰め、致死の斬撃をユディトに見舞う。しかし、ブレードはユディトの血走った首筋手前50mmのところで両掌に挟まれ止められた。


「白刃取りだと……?」


マミコが驚愕の表情を浮かべる。

ユディトが先ほど打ったシリンジは、一時だけ反射神経と筋力を爆発的に高めるドーピング剤だ。


ユディトは、マミコの居合をブレードで受け止めることは不可能だと判断、とっさにドーピングしてのキャッチに切り替えたのだ。


そのままドーピングで得た筋力を利して、マミコの手から長刀をもぎ取ると後方に投げ捨てる。


再びトンファーソードを取り猛攻を仕掛けるユディト。脇差1本でなんとか凌いでいたマミコだが、銃声とともに動きが止まる。


ユディトの右からの斬撃と同時に、左腕のトンファーの柄から放たれた拳銃弾がマミコの脇腹を貫いたのだ。


ユディトのトンファーソードは、短手の柄に拳銃が仕込まれている。斬撃を凌いでも、避けようのない至近距離から拳銃弾が襲う『2刀2丁』の攻法がユディトの本領なのだ。


銃撃を受け動きの鈍ったマミコに、2刀2丁が迫る。マミコは致命傷だけは避け、凌ぎ続ける。

しかし斬撃を10数箇所、銃撃を6発受けた時、とうとう捌ききれなくなる。


ユディトの右の斬撃を脇差で受けたマミコの右手首を、左からの斬り上げが切り飛ばした。


宙に浮いたマミコの手首と脇差を見て勝利を確信したユディトがほくそ笑んだ刹那、マミコの身体が飛び上がる。


ジャンピングしての首筋への飛び蹴り『延髄斬り』だ。しかも斬り飛ばされた自らの脇差を足の甲でキャッチしたまま、ユディトの頸部に叩きつける。


ユディトは血を噴水のように吹き出させながらも、反撃せんとトンファーソードを振り上げるが力が入らない。取り落とした剣をマミコが踏みつけ、屹立させる。

そのままユディトの胴に素早く腕を回し、バックドロップで刃の上に投げつける。


トンファーソードの刃はユディトの後頭部から口腔内を貫き、端正な顔を血に染めた。


マミコはユディトの腰のポーチから素早く回復シリンジを奪い取って自らの首に打ち込み、切断された右腕の付け根を強く縛り止血をおこなった。


「ユディト、ヴァルハラの特等席で待っていてくれ。私もすぐ行く」




戦いが終わりペガソとミラも戻ってくる。イータンは機械腕を伸ばして、ホワイトの脚の治療に当たっている。


さすがのミラもホワイトとマミコの負傷の酷さに絶句している。


「イータン、手当できる?」


「ホワイトの脚はかなり大口径の弾でやられてる。骨も砕けてるし肉もズタズタだよ。なんで走れたのか理解できないよ」


「俺はスーパーヒーローだからな!」


と、強がりを言っているが流石に顔は青ざめている。


「それよりマミコがひどいよ。生きているのが不思議なぐらいだ。今動ける仲間達から治療用のマシンを再構成してる、それまで待って……」


自分の血と返り血に染まり座っているマミコに、ミラが駆け寄る。


「マミコ、しっかり……!」


「ミラか?鹵獲した鎮痛回復のシリンジを打ったから問題ない。心配するな」


はっきりした受け答えとは裏腹に、もう目も霞んでいるのだろう。眼の前のミラを認識できていない。


「あぁマミコ、大昔から会いに来てくれた私の姉さん。どうか死なないで」


ミラがマミコの血塗れの頬にそっとキスする。マミコは残った左手でマミコの頬に触れる。


「ミラ、君は最高にCurraheeな妹だ」




その時、ブルーを乗せたスレイプニルが大慌てで戻ってくる。


「マミコ!ホワイトさん!」


「小僧!話はあとだ。2人は動かせない。もうすぐ夜が明ける。何でもいいから怪我人に日除けを作れ。

イータン、マミコの治療に回れるか!」


「今治療ポッドの構成が終わった!ブルー!そっと揺らさないようにマミコを入れて!」


「分かった!」




結局、ホワイトとマミコが目を覚ましたのはその日の夕方だった。

身体を起こそうとするホワイトをブルーが制止する。


「ホワイトさん、まだ動いちゃダメだ!」


「……もう夕方か?俺達なんか置いて出ちまえばよかったのに、手遅れになるぞ」


「だって、眼の前のホワイトさんたちを放っておけないよ!」


ブルーが涙を流しながら訴える。


「では一緒に出立しようか。すこし休み過ぎた」


いつの間にかポッドから出たマミコが、ふらつきながら立ち上がっている。


「マミコこそ寝てないとだめだよ!お願い!」


今度はミラが涙ながらに懇願する。


「困った子供たちだね、ねえホワイト?」


そう言ってホワイトに寄り添って座るマミコ。ホワイトはマミコの肩を抱く。


「そうだぞミラ。お前はラウラと『話し』に行くんだろ?それはミラにしか出来ない仕事だ。

俺も同じように、ヒューストンで俺にしか出来ない仕事が残ってるんだよ」


「さあミラ、ブルー。補給を怠っては戦いは出来ないからね。簡単に食事を取って、また笛を1曲聞かせておくれ。40分後に出発しよう」


肩を寄せあっているミラとブルーが、涙顔で頷く。



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