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第4話 異変

『姫埼さんが1番目』


あの日から、毎日スマホの画面を見るのが日課になった

特に連絡は取りあっていない

LINEを交換したときの最初のスタンプだけが残っているだけだけど


先生の声が遠くに聞こえる授業中、コッソリとヒカル君の方を見る

そうすれば、すぐに気づいて笑ってバレないように手を振ってくれるようになった


「(内緒の恋人みたい)」


少女漫画のヒロインになった気分の私が

世界の中心みたいなヒカル君の周りで、少しずつ

前とは違う状況になっていると気づいたのは


少し後のことだった


「ねぇ、ヒナちゃん大丈夫?」


最初はヒカル君の名前を呼びたいと言っていた女子達から

心配されることが増えたのだ

「なにが?」

「いや、その…源くんさ…」


それも全部全部ヒカル君のことで


「何が“大丈夫?”なの?」


そう言うとみんな口をつぐむ


「…目とか」

「ヒカル君の目が何?」

自分でも驚くくらい低い声が出た


「あみあみに見えたり…なんか変じゃない?」

「近く通った時にブンって音がするってみんな言ってて…」

「ヒナちゃん、最近ずっとヒカル君と帰ってるし大丈夫かなって」


全部こんなことばっかり

私がヒカル君のこと嫌になるようにみんなで口裏を合わせてるのかな


「そういうのいじめじゃない?」

「でも」



「…もう行くね」


感じ悪い、自分たちはヒカル君と仲良くできないからって

そうやって陰で悪口言うんだ


グッと唇を噛みしめる

皆のこと大好きだったのに悲しい


涙が出そうなのを鼻をすすって我慢した

自分だけは絶対にヒカル君の味方でいよう


「ねぇ男子ぃー」


女子とは違って男子は変わらずヒカル君を囲っている

「あ?なんだよ」

「ヒカル君の目ってさ、なんか変って思う?」


恐る恐る聞く私に「はぁ?」と小ばかにしたような声に嫌になる


「ヒカルに変なところなんてねーよ、なー?」

「目?」

「あいつの目めっちゃかっこいいじゃん」

「分かる」

「なぁ?」

「あいつすげーからな!?」

「まぁ、そんなヒカルの1番の友達は俺だけど」

「はぁ―?ちがいますー、オレです~」


そこにいる男子全員がヒカル君の良いところを口々に話始めて

「ほら」と自分の口の端っこが上がるのを止められない


「だよね!ヒカル君、全然変じゃないよね!!ありがとう!!」

「なんだあいつ」


後ろで男子たちが私のことを色々言っているけど

私の気持ちがすっきりしたから別にいいもんね


「ヒカル君!お待たせ」

放課後、校門から少しだけ離れた畦道が私とヒカル君の…

デート、コース…って勝手に思ってる

「ふふ、全然待ってないよ?じゃ帰ろうか」


今日はユウちゃん達に引き止められたせいで

待ち合わせみたいになった、本当のデートみたいで気分が上がるけど


「どうしたの?なんか元気ない?」

視線が下がっていた私をのぞき込むように聞かれて心臓が跳ねる

「えっと、あの…」


チラっと見つめたヒカル君の目は

あみあみなんかなってない

初めて会った時から変わらない、透き通るみたいに真っ黒なきれいな瞳だ


「何でもない」


きっとヒカル君は、陰でなんて言われているか知ったら傷つくから


「何でもないの…」


今日何を言われたか飲み込んだ

口をつぐんだ私をじっと見つめ

「姫埼さん、こっち」


と、突然ヒカル君は走り出す


「(え、どうしよう、ヒカル君と手、つないでる!!)」


すらりと白い温度の低いヒカル君に手を握られて

パニックになりながらたどり着いたのは、静かな川辺だった


「ここ、僕が見つけたお気に入りの場所」

緩やかな水の流れる音と太陽が反射する水面がキラキラして


「きれい…」


真夏だというのにひんやりと涼しくて

水の流れる音が心地良い、火照った体が落ち着いていく


「あのね」

ヒカル君はぼんやりしている私と向かい合って

手を握り直すと


「嫌なことが有っても僕が姫埼さんの味方になるから、辛くなったらここで会おう?」

とほほ笑んだ


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