第3話 産み付け
「姫埼さん?」
「ヒカル君!」
気が付くと下校中のヒカル君が私たちの少し離れた後ろに立っていた
「わー!そっかそっかヒカル君もおうちこっちだもんね!」
学校の外で好きな人に会えてテンションが上がってしまい思わず駆け寄る
「うん、姫埼さんもこっち?よかったら途中まで一緒に帰ろう、あと…」
ゆっくりと視線を上げてその場から動かないユウちゃんに目を向ける
すこし胸がチクッとした。
「水無瀬さん、だよね?一緒にかえる?」
ぎゅっと自分の服をつかんでユウちゃんの返事を待つと
「…私、寄るところあるの思い出した、ばいばい」
そう言って走って行ってしまった。
「(え、え、よくわからないけど、ヒカル君と二人きりで帰れる!)」
ユウちゃんがさっきまで何を言っていたかもう覚えてない
隣を歩くヒカル君の横顔を時々チラっと見る
「僕の顔、なんか変かな?」
「あ、違くて、ヒカル君きれいだから見ちゃうだけ…」
突然目が合ってとっさに下を向いた
ユウちゃんはぞっとするって言っていたけど
ヒカル君と目が合うと私はドキっとする
きっとヒカル君が特別綺麗だからユウちゃんの心臓は勘違いしちゃったんだ
「本当?きれいって言われたの初めてだからうれしいな」
二人だけの内緒話をするみたいな静かな声で
嬉しそうなヒカル君の目に気持ちが吸い込まれていく
どうしよう、鼓動がうるさくて息が苦しいくらいだ
「きれいだよ、ヒカルくんは、転校してきた時から、ずっと」
不思議だな、ヒカル君に見つめられると頭がぼーっとする
でも全然いやじゃない
「姫埼さんがそう言ってくれて良かった、男子の友達は沢山出来たけど、女子とはあまり話せてなくて…」
寂しそうにする表情に気持ちはくしゃくしゃだ
他の女の子と仲良くなってほしくない
でも、ヒカル君の悲しい顔は見たくない
「ねぇ、よかったら僕とライン交換してくれる?」
夕日をバックに柔らかく首をかしげて
不安そうな顔で聞かないでほしい
「うん、私もヒカル君と学校以外でもお話しできたらうれしい」
急いでランドセルからスマホを取り出してLINEの連絡先を交換する
「ありがとう、あのね」
そう言って、私の耳元に唇を寄せると
「姫埼さんが1番目」とささやかれた
「っ!!」
「じゃあ、また明日」
お互いの家につながる分かれ道
胸がいっぱいの私に手を振って家に帰る背中を見つめる
ヒカル君
ヒカル君
ヒカル君
ヒカル君
ヒカル君
ヒカル君
ヒカル君
ヒカル君
ヒカル君
ヒカル君
ヒカル君
「ヒカル君っ」
スマホの画面に映る好きな人の名前を指でなぞる
今まで経験したことが無いくらい、全身が熱いと思った。




