第2話 羽音
転校生のヒカル君は
都会の空気や水では呼吸が苦しくなってしまうので引っ越してきたらしい
転校生のヒカル君は
物静かだけど体育が得意で、跳び箱なんか一番高いのを簡単に飛び越えてしまう
転校生のヒカル君は
もうみんなの中心にいる
転校生のヒカル君は…
「(太陽にあたると黒髪なのに赤茶色みたいに見えてとってもきれい)」
校庭で男子たちとサッカーをしているヒカル君を目で追ってしまう
きれいで、かっこよくて、運動もできるヒカル君に、女子も男子も夢中だった。
「源君かっこいい」
「私も下の名前で呼びたい!」
でもおとなしいヒカル君と積極的に仲良くできるのは男子くらいで
だから、女子で“ヒカル君”って下の名前で呼んでいるのは私だけだった。
「ねぇヒナちゃん、私もヒカル君って呼んで良いいかなぁ」
コソコソそんなことを私に言われても分からない
「ん~、ヒカル君に直接聞いてみたら?」
多分、自分からは聞けないって分かってて
そんなことをいうのは意地悪かな?
でも、本当に私が許可することじゃないもん
すっかり男子たちの中心にいるヒカル君に“名前で呼んで良い?”なんて
茶化されるのが怖くて聞きにいけないのはなんとなく分かっていたけど知らないふりをする
「(私だけの特別だもん)」
そんな優越感で毎日が楽しくてキラキラしていた
けど
「ユウちゃーん!ユウちゃんもコッチでおしゃべりしよ?」
前は私の席まで来ておしゃべりしてたユウちゃんと最近なんだか距離がある気がする
最初はヒカル君の近くに来るのが恥ずかしいのかなと思って私から声をかけてみた
「あ…ごめん、先生に呼ばれてるから、あとでね」
でもこっちを見ないように近づいてこないユウちゃんに最近はちょっとイラっとする
せっかく呼んであげたのにって、ヒカル君とも話せるチャンスあげたのにって思った。
その日、帰り道で後ろから「ヒナちゃん」とユウちゃんの声がした。
「一緒にかえろ」
「いいけど…」
前は私の席まで“一緒に帰ろう”って誘ってくれたのに
もやもやしながら「ねぇ、なんで最近、私のこと避けてるの?」と聞いてみた。
「ヒナちゃんのことは避けてないよ!!ほんとは前みたいにお話したいし帰りたよ!でも…」
視線を落として唇をかみしめたユウちゃんの手が震えている
「み、みなもとくん…」
絞り出すようにヒカル君の名前が出て、口元が緩んだ
「なーんだ、やっぱりユウちゃん照れて―――」
「源君と目が合うとなんだかぞっとするの!!」
「―――は?」
聞き間違えたかなとユウちゃんを見ると
怯えたように視線が揺らいでいる
「最初はかっこいいなって、仲良くなりたいなって思って見てたんだけど…目が合ったとき“こわいっ”ってなってから近づけなくて」
ぽつりぽつりとユウちゃんから出てくる言葉にイライラした
「なにそれ、ヒカル君のこと悪く言わないでよ」
「で、でも、他にも同じ事言っている子もいて…ねぇ、ヒメちゃん、源君とはっ」
ユウちゃんが何か言いかけた時だ
「姫埼さん?」
耳を撫でるように落ち着いたソプラノが私を呼んだ




