第36話
今回は主人公の視点で物語を進めていきます。違和感はあると思いますが、ご了承いただけると幸いです。
副支部長(陸胡)に結界の張替えを任せられたけど、本来は長年やっている副支部長がやるべきではって思う。確かに新人育成のために新人にさせること自体は悪いとは思わない。でも、最初は見本という形でやって見せるべきではないのだろうか。
ってモノ申したいけど、副支部長少し怖いんだよなぁ。優しい雰囲気と顔で誤魔化しきれないくらいの鋭さがあるというか。
まぁ、やり方自体は先生(空也)から習ってるし、上で式神が見守ってくれるって言ってたから大丈夫…なはず。
とりあえず今は結界を突き進んでいこう。結界の中心部に結界を形成する札があるはず。それを探さないとな。
◇◇◇
初めて来たところだけど、なぜか馴染みがあるように感じる。
鳥取の実家の周りもこんな感じだっただろうか。程よい田畑、程よい住宅地、最低限整備された道路。
不思議と実家にいたころを思い出す。
あの頃は自称守り神と一緒によく馬鹿騒ぎしていたなぁ。夜、母さんの目を盗んで一緒に蛍を捕まえたに行ったこともあったっけ。友達が少なかった僕にとって、親友みたいな存在だったなぁ。
…そういえば、守り神の名前って何だっけ?そもそも守り神様は名乗ったことあったか?
「名前、聞いとくべきだったなぁ。」
心の声が漏れてしまった。
僕以外に、守り神様のことを知ってる人はいるのだろうか。
この先、守り神様のことを知っているものに出会えるのだろうか。
「いけない!任務に集中しないと!何考えてんだ自分!」
僕は両頬を叩いた。
◇◇◇
結界に入って1時間。ようやく今の結界札を見つけることができた。
まさか町中の電柱に貼られているなんて。しかも一般人に剝がされないよう、上から尋ね人の張り紙を貼っつけて隠してあった。
「春野 宇羅」…、本当にいる人物なのか。
結界札は見つけた。後は副支部長を待つだけだな。
本当はすぐに張り替えたいところだけど、張り替えてすぐに妖に攻撃されるようじゃあ意味がない。結界は内側からの攻撃に弱いって先生から習った。だから副支部長と合流するまで張替えちゃ駄目だな。
…にしても、本当に妖の気配がない。本当に侵入しているのか。もう出ていったんじゃ…。
!!!
式探知にかかった!近くにいる。
まずい。こんな住宅街で戦闘になったら、住んでいる人がただじゃ済まない。
まずは人気のない広い場所…って、こんな場所の近くにあるわけないわな。
クソっ!こっちに来た!
足が8本の狼ってところか?屋根の上でこっちを見降ろしてる。
距離がまぁまぁあるな。そういう時は…。
(空波!)
避けた!放った2発の間をすり抜けやがった。
こいつ、見た目に反して身軽そうだな。
接近戦は周辺を巻き込むから避けたい。どうしたものか…。
(!?この式は…!?)
間違いない!あの時助けてくれた副支部長の式神!
だが何だ?大きすぎる。30メートルはあるぞこれ。
妖も動きを止めてる。いや、身をかがめて震えてる。それほど強力な式なんだ。
「これが…。」
黒龍!
昔本で見た通りの龍。全身が漆黒の鱗で覆われ、金色の瞳で妖のことを見下ろしてる。
龍は左前足で妖を握った。妖は抵抗するそぶりも見せなかった。それはまるで、自分の死を悟っているような状態に思えた。
龍はそのまま、握っている前足に力を込め、妖を握りつぶした。
勝負にすらなっていない。人間が蟻を踏み潰すような戦い。
「規格外すぎる…。」
思わず心の声が漏れてしまった。
龍は視線を僕に向けた。そして、瞼をわずかに閉じると、あの時のように全身から白い煙を放出した。
しばらくして煙が晴れると、目の前に副支部長の式神が立っていた。
今ので理解した。あの白い煙は、龍に変身したり人型に戻るときに放出されるもの。結界に入る前、急に視界内から消えたのは龍に変身してすぐに行ってしまったからなのか。
「特にけがはないようだな。」
「はい!ありがとうございます!」
「礼はいらん。リクの指示に従ったまでだ。」
「おーい、こっちは終わったよ~。」
向こうから副支部長の声がした。
副支部長は屋根の上を走りながらこっちに向かってきていた。
十数メートル離れている屋根と屋根の間を軽々と飛び越えてきている。自分も近いうちに、これくらいの移動術ができるようになりたいものだ。
「リク、どうだった?」
「4匹くらい入り込んでた。ありふれた雑魚だったから、サクッと始末したよ。」
「そうか。こっちも1匹殺った。」
「了解。恒一、もうこの結界内に妖はいない。今のうちに張り替えておこうか。」
「はい!」
僕は張替え作業に入った。




