第35話
陸胡のきつい助言を聞いた後、しっかり睡眠と食事を取った恒一は目的地である宿毛に向かった。その際、陸胡はずっと恒一の近くにいた。これ以上恒一の負担をかけさせたくないのだろう。
入り組んだ道を黙々と進んでいく二人。沈黙した状態をどうにかしようと、数分おきに話しかけることはあった。しかし、その会話は長く続くことはなかった。
次第に道がしっかりするようになってきた。もう少しで目的地だろうか。周りに畑や田、家がぽつぽつ恒一たちの目に入ってくる。
気づけば太陽が真上に見える時間帯になっていた。周辺はしっかりとした街並みになっており、人も見られるようになっていた。
「着いたよ。」
陸胡と恒一は立ち止まった。
一見するとただの十字路。常人ならここを目的地とすることはまずないだろう。
「あのー、ここで合ってます?」
恒一は陸胡に小声で聞いた。
「式感知を使ってみて。」
恒一は目を閉じ、集中する。
「あ。」
恒一は思わず声が出た。
十字路の真ん中あたりに十数センチほどの壁があることを感じる。それは道のりを無視し、曲線を描きながら地平線まで伸びていった。
「ね?ここでしょ?」
「はい。全く気づきませんでした。」
「そっかぁ。じゃあ感じられるくらい式に敏感になってもらわないとね。」
陸胡はそう言うと、結界にゆっくり触れる。
「こりゃあ相当痛んでる。妖に侵入されてもおかしくないな。」
そういうと陸胡は懐から赤色の札を数枚と、青い小包を取り出した。
「妖の駆除はこっちがやる。恒一は結界の取り換えをよろしく。もし妖に出くわしたら赤い札に式を込めて上に飛ばして。」
「わかりました!」
「よし。さてと…。」
陸胡は右手を胸あたりに持っていき、握っている手を開く。そして、そのまますべての指の第1.2関節を軽く曲げる。
「『式神召喚』。頼んだよ、黒龍。」
陸胡の隣に黒い靄もやが沸き立った。仮免再試験の種藤静奈と同様に黒い靄は形を成していき、やがてそれは昨日恒一を救った長身の角が生えた男となった。
「何すればいい?陸胡。」
「昨日みたいに上空で恒一を見ていてほしい。頼んだよ。」
「相分かった。」
そう言うと黒龍は全身から白い煙を放出した。恒一の視界が白に包まれ、一寸先も見えないほどの状態になってしまった。
恒一は式探知をしようとした。だが、周辺がどうなっているか全くわからない。周辺が高濃度の式に包まれており、式探知が機能しないのである。
戸惑っている恒一に、突如凄まじい強風が吹きつける。恒一は足に式を集中させる。
数秒吹いた強風は煙を完全に払ってくれた。しかし、陸胡の隣にいた黒龍の姿がない。
「副支部長、あの人はどこにいったのですか?」
「クロか?さっき聞いてただろ。上空だ。」
陸胡はそう言いながら、空に指をさす。恒一はそれをじっくり見つめるが、黒龍の姿はおろか式を感知することもできなかった。
「とりあえず、これから結界の張替えにかかる。しつこいけど、もし何かあったらすぐに赤札を飛ばす。いいね?」
「はい!」
二人は古びた結界の中に入っていった。
片頭痛がひどいので今回は短めです。最近夜の生活リズムがおかしくなっていて、
21時 仮眠
26時 起床
28時 就寝
8時 起床
になっています。どうにかしたい。




