第31話
妖防衛隊四国支部。
ここに、仮免を取得し防衛隊員として向かう男がいる。
男の名は世輪 恒一。修行まみれの1年を乗り越えた男だ。
初めての出勤に心躍り、全力疾走で四国支部に向かっている。
四国支部に着くと、勢いよく扉を開け
「おはようございます!」
と大きな声であいさつをした。
中からは返事は返ってこない。
そんなことを気にせず、恒一は支部長室に向かう。
1年前の記憶を頼りになんとかたどり着き、支部長室の扉を数回ノックした。
「どうぞ。」
恒一は勢いよく扉を開けた。
「失礼します!今日からお世話になります!よろしくお願いいたします!」
言葉の勢いのまま恒一は頭を深々と下げた。
その様子を机に片肘をつき、その手に顎をのせ微笑ましく見る女性
四国支部支部長、獅能 秋寧だ。
「はいはい、これからよろしくね。じゃあそこに座って。」
「はい!失礼します!」
恒一は秋寧と目が合う位置のソファに座った。
「まずは、仮免取得おめでとう。これから一緒に仕事をしていくわけなんだけど…、恒一って仕事内容って覚えてる?」
「はい。学科で教わりました。」
「そう、じゃあ『結界張り』ってわかる?」
「一応習いました。やったことはないですが…。」
「わかった。じゃあ『結界張り』よろしくね。」
「わかりました!」
恒一は元気よく秋寧に返した。
秋寧は机に置いてある書類を1枚手に取り、恒一の目の前の机に置いた。
「場所は高知県宿毛市。高知の端の方にある町だ。ここの村の1つの結界の効力が弱まって来てるから張りなおす。いいね?」
「はい!」
「で、恒一と一緒に行く人なんだけど…。」
入り口から扉を叩く音がした。
恒一は思わず振り返る。
「どうぞ。」
秋寧が言うと、扉がゆっくり開いた。
左右に前髪を分けて下ろした髪型、子供のような身体。
四国支部副支部長明瀨 陸胡だ。
「今回恒一と同行する明瀨陸胡だ。」
「よろしく。」
◇◇◇
結界。
妖が町に入らないように町全体を球状に覆う膜。
妖防衛隊は人数が少ないため、町に1人配置するといったことができない。
故に、結界を貼って町に妖が入らないようにしているのである。
だが、結界は時間が経つにつれ劣化していってしまう。
そのため、劣化した結界を取っ払い、新しい結界を貼りなおすのが『結界張り』である。
結界張りの主な仕事は3つ。
①対象結界周辺の妖の討伐。結界張替え中に町に入ることを防ぐためである。
②劣化結界の状態確認。妖が劣化結界の一部を破壊し、町へ侵入していないかを確かめるためである。
③結界張替え。
これらを行い本部に戻り報告する。
これで結界張りの業務は以上だ。
◇◇◇
恒一と陸胡は四国山地を進んでいく。
四国支部から宿毛市まではかなりの距離がある。そのため、四国山地を突っ切って最短距離で進まなければならないからだ。
足場の悪い山道を式の脚力向上で進んでいく。
しばらく進んでいると、陸胡の足が止まった。恒一もそれを見て足を止める。
「やっぱりか。」
「どうしたんですか?」
陸胡は恒一の方を振り返る。
陸胡はしばらく恒一のことを見つめた。
恒一は戸惑いつつも陸胡の方を見る。
「遠くに妖がいるから、ボクはそっちに行ってくるよ。恒一はそこで待機、いいね?」
そういうと陸胡は宿毛市とは反対の方向に向かって行った。
「ちょっと!一緒に行動するべきでは!?」
恒一は陸胡に向かってそう叫んだが、叫んだ時には陸胡の姿はなかった。
「仮免生一人残すなんて…。」
恒一がそう呟いたその時だった。
前方の草むらから何かが飛び出した。
恒一はとっさに防御の姿勢をとった。




