第28話 修行編閉幕
「へっ…。『式操作』もしっかり修得しているようだな…。」
腹を抑えながら四龍は立ち上がり、体勢を整える。
恒一は守りの構えをとり、守りの構えをとる。
「この四龍が認めよう。恒一、お前はごうk「顕現解除!!」
突如、四龍の身体が黒い靄となった。
四龍は恒一に最後まで伝えることなく、空気中に消えていった。
恒一は端の方に目を向ける。静奈が立ち上がり、右手の指の中指だけを曲げて正面に掲げていた。
「はぁ…、はぁ…、よかった…大事にならなくて。」
静奈は大きく息を吐きながら掲げていた腕を下した。
「いつも冷静な四龍がムキになるなんて…、いやーすごいね恒一君。」
「ありがとうございます!」
恒一は静奈に生真面目に頭を下げた。
「一応『式操作』の試験もやるけど、今の恒一君なら大丈夫でしょ。」
「いえ、何が起こるのかわからないのが試験です。合格するまで油断せずに頑張ります!」
「うん!この調子で頑張ってね!」
「はい!」
◇◇◇
空也宅の庭。
約半年前、恒一はここで大きな挫折、大きな屈辱、大きな劣等感を味わった。
だが、兄弟子や師匠といった自分を支えてくれた存在のおかげで、これらを乗り越え、この日まで頑張ってきた。
そして今日、半年前の借りを返すとき。
あの時とは違う。今の自分ならできる。そう思えるくらい、自分は努力してきた。
さぁ、決着をつけよう!
静奈は恒一の目の前に丸太を置いた。
「ここに『内波』を3連続。前回と同じね。行けそう?」
恒一は目を閉じ、大きく一回深呼吸をする。
息を全て吐き終えて、目を開けて静奈に視線を合わせた。
「大丈夫です。」
「よし!じゃあ準備ができたら始めちゃって。」
恒一はゆっくりと構えをとる。
端で見守る空也、太郎、静奈。
静寂が庭を包んでいる。
「は!!!」
恒一は勢いよく、丸太に拳を3発叩き込んだ。
丸太からメキメキと破裂していく音が出る。
恒一が拳をぶつけた部分から亀裂が走っていく。それはどんどん広がっていき、丸太の端に到達する。
やがてぶつけた部分から破片が飛び散り、鈍い音を立てながら大きな抉りあとを生み出した。
恒一は肩の荷が下りたかのように膝をついた。
空也と太郎は満足げに恒一を見届けた。
静奈は恒一の方へ歩み寄り、目の前に立つと右肩に手を当てた。
「合否は後日お送りします。まぁ、結果は十中十合格だけどね。」
恒一は静奈の顔を見る。
優しげに話す彼女を見ていると、目から涙がこぼれてきた。
「これからよろしくね。恒一君!」
恒一はこらえ切れず、視線を下に向けてしまう。
静奈はその様子を見て、そっとその場を後にした。
端で見ていた太郎と空也が恒一の方にやってくる。
恒一は膝に手をつき、大粒の涙を流していた。
太郎が恒一の左肩に手を当てた。
「おめでとう。」
「あ…ありがとう…ございます!!」
恒一の声は涙を含んでいた。
呼吸も荒くなり、まともに話すことができない状況だ。
幼いころからの夢。
自分の思い描いた部署ではないが、なることができた。
二度諦めかけたことがある。
一度目は四国に来る前。
二度目は初めての仮免。
心が折れそうになった。自分には無理だと思った。
『しっかり合格して、夢をかなえてほしい。』
そんな自分を応援してくれる人がいた。
『その志を…忘れ…なよ』
自分が夢を叶えることを信じて庇ってくれたものがいた。
「ありがとう…ございます…」
恒一はもう一度呟いた。
恒一の右肩に、空也の手が添えられる。
「よく頑張った。恒一は大したやつだ!」
空也の声が震えていた。空也の瞳がうるんでいた。
それを悟られないよう、必死に平常を保とうとしながら恒一に話し始める。
「だがここはあくまで入り口。これからは妖との戦いに参加していくことになる。だが、今の…恒一なら…きっと…。」
空也はこらえきれず言葉を詰まらせた。
止まることのない涙。それを必死に止めようとするが中々止まらない。
「恒一ならきっと乗り越えられる。自分を信じて頑張れ。俺たちはずっと、恒一を応援してるぞ。」
太郎が空也を代弁するように伝えた。
恒一はそれを噛みしめながら、肩に添えてある二つの手を反対の手で握りしめた。
◇◇◇
2回目の仮免試験から数日後。
恒一の部屋に一通の封筒が届いた。
「妖防衛隊 本部より」
遂に来た。
恒一はゆっくりと丁寧に封を開ける。
そこには一枚の書状があった。
「陸軍省妖防衛隊隊長ヨリ、世話恒一ノ仮入隊ヲ許可スル。
尚、仮入隊の配属先ハ四国支部トスル。
配属日ハ四月一日デアル。
陸軍妖防衛隊隊長 鳴神 御阴
妖防衛隊四国支部支部長 獅能 秋寧」
この瞬間、世話恒一の夢が果たされた。
それと同時に、壮大な物語の幕が開けるのだった。




