第26話
四龍が勢いのままに恒一目掛けて殴りにかかった。
恒一は一呼吸置き、四龍の拳を受け止める。
そのまま恒一は四龍目掛けて殴り返す。
しかし今度は四龍が恒一の拳を受け止めた。
そのまま四龍は受け止めた手を一気に自分の方へ引き寄せる。
想定外の行動に恒一の体勢が前方に傾いてしまった。
それにより緩んでしまった恒一の受け止めていた手を振りほどき、その勢いのまま恒一の腹に強烈な一撃がさく裂した。
あまりの勢いに恒一は吹き飛ばされるが、すぐに体勢を整える。
(受け身で軽減させたか。反射的に行えるほどの式操作)
「そう来なくてはなぁ!!」
四龍は恒一目掛けて再度距離を詰めに向かった。
◇◇◇
「四龍って今式能使えないんでしたっけ?」
家で雑務をこなし終えて道場にやってきた太郎は空也に囁き声で尋ねた。
「おお、お疲れ。そうだ。四龍は今、式能を使うことはできない。」
「それなら恒一は安心して恒一は戦えますね。」
「そうだな。…なぜだかわかるか?」
「ええっと…すみません、忘れてしまいました。」
「それはな…「私がお教えします!!」
空也の説明をさえぎるように静奈が割り込んできた。
「四龍の今の状態はいわば燃費を抑えている状態なの。古い書物とかに書かれている姿は強大な力を発揮することができる。でも四龍はその姿を長時間維持できないんだって。だから普段は人型になって力を抑えているって感じ。その関係で式能を使うことができなくなっているけど、数百年人型で戦ってきた経験と知識、戦闘技術があるから式能を使う妖ともしっかり戦えるんだよね!!」
静奈は自慢げな口調で早口気味に説明した。
「ありがとうございます。一つ聞きたいのですが、普段妖と戦うときはどんな感じなのですか?」
「普段はね、『火炎術』と体術を駆使して戦っているよ。私はそこにこの銃で援護するって感じ。」
そう言って静奈は太郎に肩にかけていた銃剣を下ろし、太郎に渡した。
銃剣には所々に傷があり、かなり使い込んでいることがわかる。
「見せていただきありがとうございます。」
太郎は銃剣を静奈に返した。
太郎にはこの銃剣がどのようなものかわからない。ただ、彼女が数多の妖と相対し、倒してきたことは銃剣を通して理解した。
「さて…、恒一君はどう戦うのかな?」
静奈と太郎の視線が中央の戦いに移る。
◇◇◇
「防戦一方だな。たまには攻撃してこいよ。」
四龍はゆっくりと恒一との距離を詰めていく。
恒一は少し息が荒くなりながらも防御の構えをとる。
四龍の動きは想定以上に速い。うかつに攻撃すれば、もろに攻撃をくらい倒れてしまうだろう。
全力で受けの体勢を取り、弱り切ったところを攻めるしかない。だが、このまま受け続ければどこかで限界が来る。どうにかしなければ…。
「挑発にのらない…か。わかった。じゃあ我慢比べといこうか!!」
四龍は恒一と距離を一気に詰めた。
(一か八か!!」
恒一は四龍の頭に目掛けて、右足で全力の回し蹴りを繰り出す。
動きの前兆をとらえた四龍は体勢を低くする。恒一の回し蹴りは空を割いてしまった。
だが、恒一はそのまま殴りの姿勢に入る。
(かがんでかわすことを読んでいたのか?面白い!!)
恒一の叩きつける拳と、四龍の振り上げる拳が交わる。
凄まじい勢いの衝突に、お互いにはじかれてしまった。
四龍はすぐに体勢を整え、攻撃を仕掛ける。
恒一もそれを見て守りの体勢に入った。
四龍の強烈な連撃が恒一を襲う。
攻撃の隙が無い。下手に動けば数多の攻撃を浴びてしまう。
必死に式による受け身と体術の受け流しでしのぐ恒一。
だが、そんな時間も長く続かなかった。
強烈な一撃が恒一を後方に吹き飛ばした。
吹き飛ばされたことで受けの体勢を崩した恒一。
それを見逃すまいと四龍は一気に仕留めにかかる。
「終わりやね。恒一君はよく戦ったよ。」
端で見ていた静奈は呟いた。
「いや…」
隣の空也はわかっていた。
恒一は わざと吹き飛ばされたこと。そして今の体勢は崩れているのではなく、攻めの準備をしていることを。
四龍の顔の側面に強烈な一撃が入った。
四龍は視線を恒一に向ける。
恒一の片足が見切れていた。そこで、自分は蹴られたことに気が付いた。
そのまま四龍は地面に顔を打ち付けた。
その様子に驚く静奈。
その隣で、光景に動じていない空也と太郎は口をそろえて言った。
「恒一はこの程度の男ではない!!」




