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妖記 ~久遠■反逆~  作者: 狐のこ
妖記 〜恒一修行編〜
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第25話

「ごめんくださーい!」


 この日、空也(くうや)宅に1人の人物が訪ねてきた。

 声を聞いた太郎(たろう)は空也の代わりに玄関に向かい、扉を開ける。


「仮免試験の試験官としてやってきました!『種藤(しゅとう) 静奈(せいな)』です!今日はよろしくお願いします!」

「こ…こちらこそよろしくお願いします。」


 あまりの勢いに太郎は気圧されながらも返す。

 軍服を着た小柄で華奢な体格。丸い輪郭に子供のような顔、髪は肩ほどまでしかなく、前髪は左右に流している。この前来た龍明(たつあき)とは異なり腰にサーベルを備えていない。だが、肩に刃物を取り付けられた銃『銃剣』を装備している。


「早速ですみませんが、恒一(つねかず)君は今どちらにいますか?」

「恒一なら道場で先生と最終調整をしていますよ。」

「そうですか!ならもう始めても構いませんか!?」


 静奈は勢い余って太郎に詰め寄った。

 そんな静奈に対し太郎は両手を静奈の顔の前に置き落ち着くよう促す。

 静奈はハッとなり太郎と距離をとった。


「…もう始めてもらっても構いません。おそらく恒一も準備はできているでしょう。」

「わかりました。では失礼します!」


 静奈は軽く一礼して空也の家にあがった。



◇◇◇



 静奈は道場の扉をゆっくりと開けた。

 物静かな道場の中心に、正座している軍服の男が一人。端にあぐらをかいて座る部屋着の男が一人。

 正座している男は誰かが来た気配を感じ、立ち上がって振り返った。あぐらをかいている男も立ち上がり、部屋に入ってきた人物歩み寄る。


「お待ちしておりました。今日はよろしくお願いします。」


 部屋着の男…空也は静奈にそういい軽く頭を下げた。


「こちらこそよろしくお願いします!」


 空也の会釈に戸惑いつつも静奈は空也に頭を下げ返した。


「今日受験する「世輪(せわ) 恒一」です。よろしくお願いします。」


 静奈は空也の後ろに視線を向ける。

 空也の背後に先ほどまで正座していた男…恒一が立っていた。

 後ろを見た空也は恒一を気遣いそっとその場を後にした。

 

「はい。こちらこそよろしくお願いします。」

静(しっかりしてる子だなぁ)


 二人は同時に頭を下げた。


「もう準備は出来ている感じ?」

「はい!」


 静奈は恒一の目を見る。

 覚悟を決めたまっすぐな目。もうやるべきことはやったということを伝えてくる、そう感じさせてくる。


「了解!じゃあ早速始めようか!」


 静奈はそう言い、道場の真ん中に向かった



◇◇◇



「では、これより仮免実技試験『組手』を開始します!」


 静奈の声と共に恒一は構えを取り、身構える。

 それを見た静奈はあろうことか両手を上げた。

 静奈の予想外の行動に恒一の構えが緩む。


「ごめんねー。私近接戦闘苦手なの。」

「え?」

「私基本後方からの援護だからさ、悪いけど私が直接相手することはできないな~。」

「じゃあどうす…『私が直接』?」

「おっ!よく勘づいたね!そう。普段は彼に近接戦闘を任せているんだ。」


 そういうと静奈は右手を恒一の目に入る位置に持っていく。

 そして、右手の指を全て開き、その後中指ををそっと曲げた。


「『式神召喚(しきがみしょうかん)』。紹介するよ。これが私の式神。」


 静奈の隣に黒い靄(もや)が沸き立つ。沸き立っていく靄は一点に集まり形を成していく。

 靄が晴れると、静奈の隣に不思議な男が立っていた。

 晴天時のような真っ青な髪。そこから生えている4本の角。形状はまるで書物にでてくる龍のようだ。直垂と括袴を着ているその男の体格は、太郎と同格と感じるほどの巨体。直垂から見える彼の手は、猛獣のような鋭い爪をもっていた。


「四龍(しりゅう)だ!!!」


 静奈がそう言うと、靄が晴れ、四龍の全体像がはっきりと形成された。

 四龍はゆっくりと目を開け、眼前の恒一の方を見る。

 そこには構えが緩み、唖然としている若人の姿があった。


恒「し…死龍(しりゅう)!?」

静「あっ、しりゅうのs…」

「四龍の『し』は数字の『四』の方だ。『人が死ぬ』の『死』ではないぞ。」


 四龍は突然会話に割って入り、静奈の解説を代弁した。

 静奈は何とも言えない気持ちになりながら四龍に視線を向ける。

 それを聞いた恒一は少し安堵した。


「これから彼と組手をしてもらいます。ということで、頼んだよ四龍。」

「この前言ってたやつか。わかった。」

「あっ。『火炎術(かえんじゅつ)』は使っちゃ駄目だからね!」

「ああ、単純な肉弾戦をしろってことだろ?」

「そゆこと。じゃ、後はよろしくね」


 静奈は四龍にそう伝え、空也のいる道場の端に向かった。

 それを見届けた四龍は恒一に視線を向ける。


「若人(わこうど)、名前は?」

「世輪…恒一です!」

「そうか。恒一、私は何百年と式神として戦ってきた。故に私は幾千万という妖を葬ってきている。そんな私がお前を見定めてやるんだ。だからせめて…」


 四龍は両手を握りしめ、顔の前に置き構えた。

 恒一もそれを見て緩んでいた構えを引き締める。


「私を満足させてくれよ!」


 四龍は恒一に向かって距離を詰めた。


 

1週間休んでしまいすみません。私生活にて辛いことが立て続けに起こり執筆が困難なレベルに精神状態が疲弊していました。今日からはいつも通りの投稿ペースに戻して活動できるよう頑張っていきます。

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