第23話
恒一の仮免試験不合格から2か月。
恒一は内波の練習をしに、空也から内波を教わった川の上流に来ていた。
2か月前に立てた式操作精度強化計画。
それをしっかりこなしているため、恒一は順調に式操作の精度を上げていった。
現在の精度は内波を10回に6回成功させるほど。
まだまだ精度を上げる必要がある。
恒一は百発百中を目指し、今日も巨石に内波をぶつける。
◇◇◇
「調子はどうだ?」
恒一が振り返ると太郎が視界に入った。
普段太郎は空也が不在のため、空也の奥さんと空也家の留守を預かっている。
そんな太郎がやってきたということは何か事情があるのだろうか。
「どうした太郎?」
恒一の疑問を空也が代弁するように太郎にぶつける。
「先ほど四国支部から『学科試験は前回基準点を大幅に満たしているため免除とする』という連絡が来ました。」
聞いた二人は目を大きくした。
これは願ってもいない誤算だ。恒一がいくら頭がいいといえど半年も勉強をサボれば内容をほとんど忘れてしまう。そうならないよう復習をしなければならないのだが、半年という限られた時間の中で復習に時間を割くのは厳しい部分があった。
それがなくなった。これで本格的に式操作に集中できる。
だが、空也にはもう一つ懸念点があった。
「太郎、他に三つ聞きたいことがある。」
「何ですか?」
「1つ、『組手』は免除になっているか。2つ、連絡をしに来た人物は誰か。3つ、試験官は誰なのか。事実だけで答えてくれ。」
太郎は少し考えたのち、空也の問いに的確に返していく。
「まず1つ目ですが、連絡をしに来た人物が『他は特に変更なし』と言っていました。2つ目について、名前はわかりませんが短髪の女性だったことは覚えています。最後の3つ目、気になる言動などは特になかったのでわからない…といったところでしょうか。」
「十分だ。報告ありがとう。」
空也は太郎のところに歩み寄り、肩に手を添えた。
太郎はそのまま軽く一礼をする。
空也は恒一に視線を移した。
「計画変更だ。組手免除と思って計画を練っていたが、組手が試験内容に入った以上作り直さないかん。恒一、あと10発決めたらいったん帰るぞ。太郎、先に帰っておいてくれ。すぐに組手の準備をする。」
恒「わっ、わかりました。」 太「了解です。」
◇◇◇
「はぁ…、はぁ…。久しぶりの…組手は…キツい…。」
「何息切れしてんだ。はやく式で疲労回復させろ。もう一本行くぞ。」
「さっきまで…内波の…練習して…たんですよ。そんな…すぐに回復でき…ませんって。」
「ちっ、わかった。しばらく休んでおけ。」
それを聞き、恒一は体中の力を一気に抜き道場に大の字で倒れ込んだ。
太郎は恒一の傍に足を延ばして座った。
内波の練習を終わらせた後、空也と共に川を下っていき計画を立て直した。
先ほども少し触れたが、空也の中では組手と学科が基準をしっかり満たしており免除になると見込んでの計画だった。
だが、学科は免除になっても組手は今回もやることとなった。
故に、組手の時間を急遽作らなければならない。
恒一と空也、太郎の3人は急いで残り4か月の計画を練り直した。
大方練り直した後、空也は恒一に太郎と組手をするよう指示した。
少しでも勘が覚えているうちにやっとかないと忘れてしまうからとのこと。
恒一と太郎は言われた通り道場に行き組手を行った。
恒一は2か月ぶりの組手で少し身構えていたが、実際にやってみると体が僅かに覚えていたため太郎と多少はやりあうことができた。
だが、先ほどの内波の練習によって式がほとんどなかったため、受け身や式拳の威力が大幅に落ちてしまっていた。そんな恒一を太郎は容赦なく叩きのめし、恒一が疲れ果ててしまい今に至る。
太郎は恒一の方に視線を向ける。
大の字に寝転がっていながらも目はしっかり開けている。寝てしまってはいないようだ。
「前々からずっと気になっていたんですが。」
恒一が急に喋りだし、太郎は少し驚いた。
そんな太郎に目もくれず、恒一は太郎に聞いた。
「太郎さんと先生(空也)の出会いってどんな感じだったのですか?」
その言葉を聞き、太郎の表情が暗くなった。




