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第19話

 龍明(たつあき)との組手から数時間後。

 すっかり日も暮れてしまい、空が黒に染まろうとしている。

 そんな中、恒一(つねかず)と龍明は空也(くうや)宅の庭にいた。

 空也と共に式の修行をした場所。

 そこで行われるのは…


「最後、技能試験『式操作』を始めます。」


 龍明は恒一に告げる。

 恒一は今日一番の緊張を感じた。

 

 恒一一番の不安要素「式操作」


 仮免試験直前まで式操作、特に「内波(ないは)」を重点的に鍛えてきた。

 だが、自分の中で自信をつけられるほどの出来にはならなかった。

 上振れれば5回に2回、下振れれば7回に1回ほどである。


(試験内容によっては合格できるかもしれない…、だからお願い!可能性がある試験内容であってくれ!)


「えー、『式操作』の試験内容は…『10回以内で内波を3連続決める』という内容です。具体的には…」


 終わった。

 龍明の声がどんどん遠くなっていく。

 決めれるわけがない。今までの内波の練習で2連続で決めることができたのは指で数えられる程度。

 自分には無理だ…。


「(今回は自分の実力を確かめるために受けるのだろ?成功にこだわって変なことをせずに普段通りやればいい。)」


 先生(空也)から言われた言葉が脳内をよぎる。

 そうだ、これは自分の実力を確かめるもの。

 変に自分を追い込まなくていい。普段通りやればいい!



◇◇◇



 恒一の前に丸太が1本置かれた。

 自分の背丈ほどの大きさだ。練習で打ち込んでいた巨石とは違う感覚になるだろう。

 龍明曰く、この丸太は龍明たち妖防衛課(あやかしぼうえいか)の人の武器に使用される特別な種だそうだ。式を流すことができる特別な種らしく、これを加工して作られた武器でしか妖に対してしっかりと損傷を与えられないという。当然妖以外に対しては普通の木刀と変わらない(式を籠めなければ)。


「では試験開始を開始します。心の準備が出来たら始めてください。」


 龍明の声と共に恒一は目を閉じ、深呼吸をゆっくりとし始める。

 内波を決めるには繊細な式操作が求められる。

 それゆえにしっかりと細部まで自分の式を意識しなければならない。


 しばらくしたのち恒一はゆっくりと目を開け、目の前の丸太をじっと見る。

 内波は相手の防御の隙間に式を流し込み、内側から爆ぜさせる技。

 丸太にある隙間を見つけなければならない。

 

「(見つけた!)」


 恒一は空也流の構えを取り、右拳に式を込める。

 

 恒一の周りが静寂に包まれる。

 遠くで見ている太郎と空也。

 庭に植えられている大木にもたれながら腕を組みその様子を見る龍明。


 恒一は静寂を破り、勢いよく丸太に拳をぶつける。

 丸太と拳が接した瞬間、接した面から勢いよく式が噴き出した。

 噴き出した式は丸太の表面を軽く削り、その残骸がぱらぱらと落ちていく。

 恒一は丸太から右拳をゆっくりと離し、構えを解く。


「失敗だな。」


 遠くで見ていた龍明は恒一に伝えた。



◇◇◇



「失敗。」


「失敗。」


「失敗。」


「失敗。」


「失敗。」


「失敗。」


「失敗。」


「失敗。次が最後ね。」


 龍明の言葉が容赦なく恒一の耳に入っていく。

 10回やって一度も成功していない。

 恒一の心音が自分でも聞き取れるほど大きく早くなっていく。

 こんなことは士官学校を合否判定が届いたとき以来だ。

 

 恒一は目を閉じ、構えを取って全身の式に意識を向けようとする。

 ドクドクドクドク…

 ダメだ、自分の心音に意識を取られてしまい集中できない。

 ドドクドドクドドクドドク…

 心音はどんどん大きく早くなっていく。

 このままではいつまで経っても内波を使うことができない。


「(今回は自分の実力を確かめるために受けるのだろ?成功にこだわって変なことをせずに普段通りやればいい。)」


 こんな結果は嫌だ。

 せめて2連続、いや1回だけでも決めなければ。

 一度も決められないのは嫌だ!!


 恒一は自分の心の中にある緊張を押しのけるかの如く右拳を放った。

 拳が勢いよく丸太に直撃する。

 恒一はそのまま、丸太の隙間に対し式を一気に流した。


 恒一の式は…隙間に入っていかなかった。

 式は隙間を覆うように広がっていき、やがて拳の衝撃と組み合わさることで一気に爆ぜる。

 爆ぜた式は丸太をこれまで以上に抉り取り、残骸を宙に舞わせた。

 恒一も衝撃に耐えられず、後方に吹き飛ばされてしまった。


「失敗。今日はお疲れ様。結果は後日送っとくよ。」


 龍明はそう恒一に伝え、空也宅に入っていった。

 

 

 


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