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第18話

 龍明(たつあき)は刀身が木製のサーベルを恒一(つねかず)目掛けて思いっきり振り下ろす。

 恒一は龍明の威勢に気圧されながらも両腕に式を集中させ、腕を交差して防御の体勢をとり龍明の攻撃を受け止める。


(すっ、凄まじい!!)


 龍明の攻撃を受け止められず、恒一は後方に吹き飛ばされた。

 龍明の追撃を警戒し、すぐに体勢を整える恒一。

 そんな恒一を見ながら、龍明は不敵な笑みを浮かべながらゆっくり距離を詰めていく。


(最低限の受け身は取れているな。積極的に攻撃をしてこないのは…おそらく私の固有能力を警戒しているのか。)

「恒一君、僕は『式神使(しきがみつか)い』だよ。下手な警戒をせずに積極的に来てほしいな。」


 恒一の守りの姿勢がより強まる。

 勝負において情報というのはとても重要なことだ。

 故に、龍明の発言が虚偽の可能性がある。

 恒一はそれを警戒し、龍明に対しての守りの姿勢を強めたのだ。


「恒一、龍明の言ってることは本当だ。龍明の言う通り積極的に仕掛けていきなさい。」


 道場の端でその様子を見ていた空也(くうや)は恒一に声をかけた。

 それを聞いた恒一は「わかりました!」と空也に返し龍明の間合いまで一気に詰めた。


 恒一は拳に式を乗せ、龍明の腹に目掛けて殴りかかった。

 拳と木材が勢いよく衝突し、鈍い音を響かせる。

 恒一はひるまず、龍明へ追い打ちをかけていく。

 龍明は笑顔でサーベルの刀身で恒一の猛攻をしっかり受け流していった。


(このままだとあの時みたいに力尽きて負ける…、なら!)


 恒一は相も変わらず連打を続ける。

 龍明は余裕を見せながら恒一に話しかけた。


「なにを考えているのかな?恒一君。」


 龍明の声に対し、恒一は不敵な笑みを返す。

 龍明の顔色が変わった瞬間、龍明の持つサーベルに違和感が起こる。

 サーベルの刀身を、恒一が掴んだのだ。

 サーベルの刀身が木製だからできる芸当。

 恒一は掴んでいる左手に力を込めながら龍明の顔面に向かって渾身の右拳を放った。

(いける!一撃入れられる!)


 恒一の腹に衝撃が走った。

 

「しまっ!!」


 恒一は下に目線を向ける。

 そこには、恒一の腹に龍明の足が突き刺さっている光景が目に入った。

 あまりの衝撃に恒一の左手が緩んでしまう。

 龍明はその瞬間を見逃さず、サーベルを勢いよく振り恒一の左手から解放させた。

 そして間髪入れずに恒一の右わき腹、両脛、左肩に追撃を与える。

 恒一はそのまま吹き飛ばされ、床にうつ伏せになってしまった。


「考えは良かったと思うよ。でも先輩として助言してあげる。」


 龍明は目を鋭くし、恒一の目に突き刺すよう見ながら話し出す。


「武器持ち相手に『武器を持って動きを固定させる』という戦い方は辞めた方がいい。僕自身、このサーベルに依存しないようある程度の体術を取得している。君の戦術は『戦場を知らない者が考えた戦術』に過ぎない。これを対妖でやったら君は死んでいたかもしれないね。」


 恒一の背筋がじわじわと凍っていく。

 『戦場を知らない者が考えた戦術』

 自分の浅はかさを容赦なく突き付けてくる言葉。

 自分は井の中の蛙に過ぎない。


「だからこそ…。」


 恒一はゆっくりと体を起こそうとする。

 だが、龍明の追撃によって両脛が悲鳴を上げている。

 体を持ち上げようすると左肩に痛みが走る。

 まともに受け身をしなかったため、追撃の痛みはすさまじいものだ。

 それでも恒一は、呼吸を整えながら立ち上がろうとする。


「僕は…。」


 左腕で腹を抑えながら立ち上がった恒一は、その様子を見降ろしていた龍明に強烈な眼光を送った。


「ここで合格を勝ち取って!経験を積みたいんだ!」


 そう言い放つと、恒一は力が抜けたかのように左ひざをついてしまった。


(あちゃ~、やりすぎたかな。)


 龍明は心の中で独白しながらゆっくりと空也と太郎(たろう)の方へ視線を向けた。


空(何で仮免試験なのに追撃に式込めてんだこの若造は。気合入れすぎだっつーの。)

太(別にあの時追撃しなくてよかっただろ…。)


 空也と太郎の冷ややかな目に耐えられず、龍明は視線をまた恒一の方に向けた。


「ごめん…。流石にやりすぎた。組手は一旦終了ね。」


 龍明は優しく恒一に話しかける。

 その言葉を聞くと、恒一はそのまま床に倒れ込んでしまった。


「龍明さん…、無茶苦茶痛いです…。」


 恒一の言葉が龍明の耳に鋭く刺さった。

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